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『桜は散り、歯車が止まる』第4話









第4話 『ふたりでよかった』










桜:「明後日、二人でお出掛けしよっ?」



さくたんはそう言った。



桜:「おーい。○○くん?聞こえてる?」



○:「う、うん。」



二人でお出掛けというワードに動揺して
彼女の問いかけに返すのを忘れていた。



桜:「二人でお出掛けしたいの。ダメかな?」



○:「ううん。ダメじゃないよ。」



断る理由はなかった。

彼女と居れるのは本当に嬉しい。

また、彼女が隠したがっていることを
知れるかもという期待があった。



桜:「よかったぁ!」



彼女が笑顔で喜んでいるのが想像できた。



○:「でも、二人でお出掛けってどこに行くの?」



想像つかなかった。


映画に行くのか、今日と同じようにただお散歩するのか
それとも軽めの旅行をするのか。


僕はデート経験もそんなにないからよく分からなかった。



桜:「うーん。映画とかカフェとか?
まあ、明日決めればいいかな〜
あ、朝早くから行きたいかも!」



彼女のテンションは上がっているように感じた。



桜:「何時くらいがいい〜?」



いや、これがテンションが上がっているのが
本当の彼女なのかもしれない。



○:「え、さくたんが集合できる時間でいいよ。
ほら、僕は寝坊とかあまりしないし。
そこそこ早起きだから。」



だから、僕は彼女に合わせるほうがいい。



桜:「え〜、何時だろ。じゃあ、10時とか?」



○:「いいよ。集合場所はどうする?」



桜:「集合場所は渋谷駅のハチ公前でいいかな。」



○:「うん。いいよ。でも、見つけられるかな。」



桜:「どういうこと?」



○:「いや、ハチ公前って人が多いし...
さくたんを見つけられるのかなぁって。」



渋谷のスクランブル交差点は人も多いし
ハチ公前は待ち合わせで使う人も多い。
人混みの中から、さくたんを見つけられる自信がなかった。



桜:「大丈夫だよ!桜が○○くんを見つけるから!」



○:「本当に?僕、見つけるのって難易度高いよ。」



派手な格好もしないし、髪も染めてない。
身長も平均的だし、量産型タイプだと思う。



桜:「○○くんを見つける自信はあるよ?
誰よりも自信あるもん。
○○くん発見選手権があったら優勝できるよ。」



彼女は真面目なトーンで言っていた。



○:「何それ(笑)」



それが少し面白くて


そんな選手権あるわけないし


と心の中でつっこんだ。



桜:「馬鹿にしてるよね!本当に自信あるんだよ?」



○:「じゃあ、バレないように
帽子とかマスクつけようかな。」



そんなに見つける自信があるのなら
こっちは見つからないようにしたくなる。



桜:「それは卑怯だよ!」



○:「冗談だよ。普通の格好でいるから。」



不審者扱いされても勘弁だ。



桜:「よかった。見つけたら、すぐに駆け寄るね?」



○:「うん。」



桜:「あ、もう24時だ。」



彼女がそう言ったため、僕も時計を確認する。



○:「本当だ。さくたんは時間大丈夫なの?」



桜:「大丈夫だよ〜。大学も冬期休暇に入ってるから。」



○:「そっか。」



彼女は大学に通っている。
ということは消えたのは乃木坂にいたということだけ。



桜:「○○くんも大学生でしょ?課題とか大丈夫?」



○:「僕は大丈夫だよ。それなりに計画的に進めてるから。」



締切に追われるのが嫌だから、計画的に僕は進めていた。


というのも数ヶ月前に追われすぎて、大変な目に遭ってしまった。



桜:「ふふっ。やっぱり、真面目だね。」



彼女は真面目と言ってくれたけど
そういう目に遭いたくないという意志から来ているだけだった。



○:「さくたんは大丈夫なの?」



桜:「んー、やばいかも。」



彼女はそう言いながら、笑っていた。



○:「大丈夫?」



桜:「何とかなる!と信じたいかなぁ。」



○:「お出掛けなんかしないほうが...」



課題やる時間にあてるほうが良くない?



桜:「ううん!楽しみがないと課題も頑張れないから!」



○:「じゃあ、今日はもう電話終わったほうが良さそうだね。」



桜:「えぇ⁈」



○:「そりゃ、そうだよ。
明日は課題にあてるんでしょ?
寝不足だと課題は頑張れないし。」



効率悪くなると思う。



桜:「もっと電話したいのに〜」



彼女は悲しそうな声を発する



○:「後から辛くなるだけだよ?
それに明後日、お出掛けをするんだから。
それまでは頑張ろうよ。」



桜:「分かった...」



○:「じゃあ、また明後日ね。」



桜:「うん!楽しみにしてる!おやすみ〜」



○:「うん。おやすみ。」



ピッ...


















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・桜サイド



桜:「○○くんとお出掛けだ...///」



彼との通話が終わり、私は布団に潜り込む。



桜:「デートだ...///」



二人きりでお出掛け。


彼はデートというワードを
一度も出さなかったけれどこれはデート。



桜:「どんな服を着ていこうかな〜」



デートは明後日だけど、今から待ちきれなかった。



桜:「いやいや、課題を少しでも終わらせないと。」



彼とのデートを楽しみに頑張らなきゃ!



桜:「おやすみにゃさい...」



私は深い眠りについた。














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瑛:「むにゃむにゃ...」



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?:「待ってるからね。支えるからね。」



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瑛:「はっ...」



瑛紗は目を覚まし、起き上がる。



瑛:「今のは...」



何かの夢を見て、私は目を覚ました。



瑛:「何だろう...」



誰かに支えてもらっていたような...



瑛:「夢?いや、でも...」



夢じゃないような気がする。


夢とは違う何かがあるような。


何か大切なことを忘れているような。


そんな気がした。



瑛:「今、何時だろ...」



私はスマホで時計を確認する。



瑛:「8時...えっ⁈ やばっ!」



今日の仕事の集合時間は9時。



瑛:「アラームはつけたはずだったけど...」



昨日は疲れてたから、お風呂を済ませて、早めに寝た...。


あ、アラームつけ忘れてたかも...


昨日はすぐに寝ちゃったから...


あり得る...



瑛:「いや、後悔しても遅い。早く準備しないと!」



私は速攻で準備して、仕事へと向かった。















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・和サイド




和:「ぱん、遅くない?」



お仕事の集合時間が近づいていたのだが瑛紗が来ていない。



菅:「確かに。寝坊とか?」



一:「昨日、疲れてるっぽかったからね。」



和:「え、そうなの?」



菅:「うん。和が帰った後から...」



和:「私が帰った後...?」



ガチャ...



瑛:「セーフ...」



楽屋の扉が開き、息を切らした瑛紗が入ってきた。



和:「おはよう。寝坊?」



瑛:「うん。アラームをつけるのを忘れちゃって。」



そう言うと、彼女は荷物を自分の席に置く。



和:「大丈夫?昨日、疲れてるって咲月に聞いたんだけど。」



私がいなくなった後のことは分からない。



瑛:「あ、うん...。大丈夫だよ。
早く収録の準備しないとね。
今日は私が歌う番だから。」



でも、今も瑛紗はどこか疲れているように思えた。















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・瑛紗サイド




瑛:「...」



今日はスタ誕の収録。


私はこの為に全力でボイトレやレッスンを積んできた。


でも、何だろう。


昨日から積んできた感じがしない。


何かが欠けているような気がする。


練習を積んできたはずなのに何かを失っているような。


一昨日まではそんなことは無かった。


でも、昨日、和がカラオケで
Be togetherをやってから何かがおかしい。



瑛:「〜♪」



私は自分の歌う曲を歌いながら、必死にその何かを探していた。














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瑛:「...」



自分の番が終わり、今は収録の休憩時間。


私はひな壇に座り、ぼーっとしていた。



瑛:「(あの記憶は...)」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




?:「テンションを上げることに
慣れていなかったので苦労しました」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



瑛:「(何だろう...)」



確かにスタ誕の記憶だった。


夢にしてはあまりにも鮮明すぎる。



瑛:「(あれは...)」



ぼーっと、スタジオの照明を眺めていると





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








?「えー?私、...ちゃんにしか
不思議ちゃんって言われたことないんだけど。」







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



瑛:「⁈」



また別の映像が脳内に降ってきた。



瑛:「(何これ...)」



顔ははっきりと分からないでも、思い出したい。



大切な何かだと思うから。



瑛:「(この顔を思い出したい...)」






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




?「てれさがいて、よかった。」




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瑛:「はぁ...はぁ...」



何これ...誰なの...あなたは...


私は左手で頭を抑え、必死に思い出そうとした。


思い出そうとすると胸が苦しかった。



和:「ぱん、どうしたの?」



和が私の横に来たのが分かったけれど



瑛:「はぁ...はぁ...」



和に返事することができず



バタン...



瑛:「...」



和:「瑛紗!!!」



私は倒れ込み、意識を失った。
















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翌日






・○○サイド



○:「(寒っ...)」



午前10時、僕は渋谷のハチ公前にいた。


今日はさくたんとのお出かけの約束。


昨日は彼女との約束が楽しみでずっとぼーっとしていた。



○:「(もうそろそろかな...)」



とスマホの時計を見ながら、待っていると



?:「わっ...!」



と可愛らしい声が聞こえ



○:「⁈」



僕の腰に誰かの手が触れた。


僕は振り向き、声の主を確認する。




















桜:「おはよ〜」



確認する前から分かっていた。


この可愛らしい声は彼女だろうって。



○:「おはよ。」



桜:「ごめんね?待ったよね?」



彼女はお洒落な服を身に纏う。


ブログで見ていた通りの上品な服装だった。



○:「ううん。大丈夫だよ。」



本当は10分ほど待ったけど
彼女に謝らせるのは違うから、大丈夫と言った。


集合時間よりも早めに来るのは僕の癖だし
本当は集合時間ぴったりに来るのがいい。


学校でよく言われるような
5分前行動はお出かけには不要だ。



○:「今日は映画とカフェで合ってるよね?」



昨夜、彼女からメールが来た。



10時30分からの恋愛映画を観た後に
カフェでゆったり食事をしたいと。



桜:「そうだよ〜。夜遅くにメール送ってごめんね。」



昨日、彼女からメールが来たのは22時。



○:「大丈夫。それまで、課題をやってたんでしょ?」



課題があると彼女は言っていた。



桜:「うん。課題は半分くらいしか終わらなかったけどね。」



彼女は苦笑いしながら、舌をぺろっと出す。



○:「一旦、今日は課題のことを忘れて、
また明日以降、課題を頑張らないとね?」



今日はお出かけ。彼女はそれを楽しみに昨日を頑張った。


今日は一旦、リフレッシュをするべきだと思う。



桜:「うん!」



僕たちは映画館へと歩き始めた。


僕たちの姿は周りからどう見えているのかな。


カップルに見えているのかななんて想像をした。


想像していることをさくたんに
気づかれないように僕は彼女の横を歩いていた。














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・瑛紗サイド



瑛:「はぁ...」



私はベッドで布団にくるまっている。


昨日、意識を失った後、
マネージャーさんに連れられて、病院に行った。


病院に着いた時、私は高熱だったらしく
点滴を打ったり、薬を処方された。


その後、家に帰り、昨日の夜からずっと布団の中にいた。



瑛:「思い出せなかった...。」



人は頭をフル回転させると
熱が出ることもたまにあるみたいだから
この熱の原因は間違いなく、思い出そうとした事。



瑛:「私が変な感じになったのは一昨日から...」



和がBe togetherを歌った後から。
あの後から私はぼーっとすることが増えた。



瑛:「あれ?確か...」



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和:「瑛紗、桜を知っているよね?」


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数日前に和が川﨑桜という名前を言っていた。


私たちの同期と言っていた。みんなに聞きまくっていた。



瑛:「待って...和が言っていることって...本当のこと...?」



和以外のみんなはその子を知らないと言っていた。


でも、和が本当のことを言っているとしたら
私たちはとんでもないことをしている...


大切な何かを忘れている。



瑛:「私が思い出したいこととその子は関係している...?」



突然降ってきた映像の子は名前も顔も分からない。


でも、私が思い出したいことと何か関係があるんじゃないか。


そんな予感がした。



瑛:「和を呼ぼう...」



このモヤモヤを解決したかったから
私は部屋に来てほしいと和にメールを送った。




















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桜:「ポップコーンペアセットください!
飲み物はジンジャーエールで!」



○:「僕はファンタメロンで。」



映画館に着き、チケットを発券した後
僕たちは売店でポップコーンとドリンクを購入した。


普段、僕は映画を鑑賞する際は何も食べない。


お金が無駄だと思ってしまうし、
映画に集中出来なくなりそうだからだ。


しかし、彼女がここに来る途中に
食べようと言ってきたため、僕はその提案に乗った。


店員から僕はポップコーンを受け取る。


Lサイズのポップコーンの量は多かったため
僕が彼女の代わりにトレイを持つことにした。


僕たちは券を係員の人に見せ、
恋愛映画が放映されるスクリーン1番に向かった。












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桜:「この席、見やすいね!」



僕たちがとった席はちょうど真ん中の席。


首を痛めることもなく、快適に映画を観られる場所だ。



桜:「ポップコーンも美味しいし!」



僕たちが買ったのはキャラメル味のポップコーン。



桜:「○○くんも食べなよ?桜だけじゃ食べきれないよ。」



彼女に促され、僕もポップコーンを口にする。


ポップコーンを食べ、どんな内容かな〜とか
上映前に流れる予告映像を観て
この映画面白そう〜と軽い雑談をしながら
僕たちは上映を始まるのを待った。



桜:「映画終わったら、感想話そうね?」



彼女は耳元で甘く囁き、スクリーンのほうに顔を向けた。



○:「(ちゃんと観なきゃ...)」



感想を話そうと言われたら、ちゃんと観ないといけない。


そんな気持ちが働いて、僕は彼女とのお出掛けというのを一旦、忘れて、映画に集中することにした。


上映が開始されると彼女は
こちらを見ることなく、スクリーンに没我していた。


序盤の10分はあまり集中出来ずに
彼女の横顔をチラ見していたが
徐々に僕もスクリーンへと集中していった。













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・和サイド



和:「体調は大丈夫?熱は下がった?」



瑛紗に呼ばれて、私は瑛紗の部屋に足を踏み入れた。



瑛:「大丈夫。熱はうん...もう下がったよ。」



和:「よかった。昨日は心配したよ。
スタ誕の収録の合間にいきなり倒れるんだもん。」



そのおかげで収録は少しストップして
収録が終わる時間も普段よりも遅かった。



瑛:「ごめん。」



和:「ううん。体調が良くなったのならよかった。」



数日後には紅白歌合戦がある。
だから、何事もなくてよかった。



和:「それより、何で私を部屋に呼んだの?」



瑛紗から送られてきた文章には
『部屋に来てほしい。
なぎに聞きたいことがある』と書かれていた。



瑛:「川﨑桜って...前に和が言っていたでしょ...?」



和:「えっ...⁈」



なんで、瑛紗から桜の名前?
あの時は知らないと言っていたのに。



瑛:「私、何かを忘れている気がするの...お願い...教えて...?」



瑛紗は涙目になっていた。



和:「...」



その涙を見て、私は決めた。


瑛紗に桜のことを話すことを。









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・瑛紗サイド



瑛:「私、何かを忘れている気がするの...お願い...教えて...?」



私は和に頼んだ。


このモヤモヤを解決してほしいと。



和:「桜はね...甘えん坊なの。」



和は私の横に座り、話し始めた。



瑛:「甘えん坊...」



和:「用もないのにみんなの名前を呼んだりしてね?
私の一個上だけど歳下みたいで
5期生の中でも可愛いに特化していたの。」



ということは私の一個下...



和:「その可愛さを武器に
この前のスタ誕ライブでBe togetherを歌ったの。」



瑛:「Be together...スタ誕ライブってこの前の?」



和:「そうだよ。神戸公演でね。みんなは忘れていたけど。」



だから、Be togetherを歌ったんだ。


それもあのカラオケでの和は
いつもより可愛さを意識していた。


その桜って子を意識していたのか...



和:「桜はBe togetherをやる時に
テンションを上げるのに苦労していたと言っていた。」



瑛:「えっ...?」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



?:「テンションを上げることに
慣れていなかったので苦労しました」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



私の脳内に降ってきた映像だ。


和が言っていることと全く同じだった。



瑛:「ねぇ!テンションを上げるのに
苦労したって言っていたのはスタ誕のスタジオ?」



和:「うん。そうだけど。」



瑛:「じゃあ、伊藤さんがイェーイって
言って後ろから出てきてって...」



あの後に脳内に降ってきたものもそのスタ誕の収録?



和:「それは桜に言っていたことだよ!
え、なんで、それを覚えているの⁈」



和は目を見開き、驚いていた。



瑛:「分からない...Be togetherを聴いてから...」



あの後から突然、降ってきたんだ。


そのBe togetherに関係すると思われる映像や他の映像も...



瑛:「ねぇ。その桜って子の写真を見せて!」



その子の写真を見れば、何かが分かる気がする。


全てが分かる気がする。



和:「はいっ。これが桜の写真だよ。
私と一緒に載っているものだけどね。」



和はスマホの写真フォルダを開き
その桜という子の写真を見せてくれた。



瑛:「これが...桜...ちゃん...」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



?「えー?私、桜ちゃんにしか
不思議ちゃんって言われたことないんだけど。」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



瑛:「うっ...!」



昨日、倒れる直前に降ってきた映像が再び脳内を支配する。



和:「瑛紗!大丈夫⁈」



和は私の背中をさすり、スマホを私から取ろうとするが



瑛:「大丈夫だから...!」



私はそれを拒否して、桜ちゃんの画像を見る。



和:「瑛紗...」



瑛:「ねぇ、和?
その桜ちゃんは私のモノマネをしていた?」



あれは私のモノマネだと思う。


あの映像の声も少しだけ聞こえてきた。


私の声に似ていた。



和:「していたよ。結構似てた。」



やっぱり...



瑛:「ねぇ!和!私とその桜ちゃんはどんな関係だった⁈
単なる同期じゃないよね⁈」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


?:「てれさがいて、よかった。」

?:「待ってるからね。支えるからね。」


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あの映像もその桜ちゃんの言葉だとしたら
私と桜ちゃんは特別な関係があったはず。



和:「瑛紗と桜は絶望の一秒前の
MV撮影を一緒に見学していた。
桜は学業の関係で発表が遅れたの。」



瑛:「絶望の一秒前...」



絶望の一秒前というワードを聞いたその瞬間
私の脳内にとある映像が流れた。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






瑛:「はぁ...うらやましい...
みんなと一緒にMV撮影したかった...」



私は発表が遅くなる関係で
絶望の一秒前の撮影に参加できなかった。





?:「だよね...」



瑛:「参加したかったよ...」



悔しかった。みんなに遅れていたから。


みんなはキラキラした姿でダンスパートを踊っていた。


しかし、私はただ座ってみているだけだった。


その現実に涙が止まらなかった。



?:「でも、一人じゃなくてよかった。」



瑛:「えっ...?」



?:「てれさが居なかったら
私は何もできずにもっと辛い気持ちだった。」



瑛:「桜ちゃん...私もそうだよ。
桜ちゃんがいてよかった!」



私は思わず、隣の子と手を繋ぐ。



?:「私もだよ。」



























桜:「てれさがいてよかった!」



彼女の顔と笑顔が私の脳内にはっきりと浮かんだ。



瑛:「お互いこれから頑張ろうね!」



桜:「うん!」



私たちはお互い励ましあったんだ。


ふたりでよかったって





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





瑛:「さくたん...」



先ほどの映像が脳内を駆け巡り
私の目から一粒の涙が流れる。



和:「瑛紗?」




和は心配そうに私の肩に手を乗せる。



瑛:「さくたんさん...しゅわしゅわ...」



和:「瑛紗、それは桜の!
もしかして...桜のことを思い出したの⁈」



和は私の目を覗き込み、私の肩を揺らした。



瑛:「うん...思い出したよ...全部思い出した...」



何もかも思い出した。思い出した瞬間、
私の目からは大粒の涙がいくつも溢れた。



瑛:「なんで...忘れていたんだろ...
あんなに大切な人だったのに...
さくたんは優しくて、ずっと支えてくれる人なのに...」



私が発表遅れるって決まった帰り道に
待ってるからね、支えるからねと言ってくれたのに



和:「瑛紗...」



瑛:「川﨑桜は乃木坂46の5期生じゃん!!
5期生は10人じゃない!それなのに...
私は何でこんなにも重要なことを...
ごめん...さくたん...ごめん...和...」



こんなにも重要なことを忘れるなんて...私は...私は...



最低な...



和:「大丈夫だよ。思い出してくれてよかった。」



和は私を温かく抱きしめてくれた。



瑛:「ごめん...本当にごめん...」



その温かさに私は身を委ねるんだ。



和:「今、桜がどこにいるのかも分からない。
なんで、乃木坂46から消えているのかも。
なんで、みんなが記憶を無くしたのかも分からない。
だから、桜を探すのを協力してほしい。
瑛紗、お願いできるかな?」



和から言われなくても分かっている。


そんな協力してと言われなくても
自分から言うつもりだった。



瑛:「当たり前でしょ...当たり前じゃん...
桜は私たちの仲間だから...!!!」



協力するに決まってる!


桜は私たちの仲間だから!


こんな状況で世界が回ってたまるもんか...!


桜がいない世界なんかもう嫌だ!



この瞬間、私はとても大切な記憶を取り戻した。












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・○○サイド



桜:「恋人の記憶を忘れるなんて...
なんか、悲しい映画だったね...」



○:「うん...幸せな映画かと思ったら...」



映画を見終わった僕たちは近くのカフェに足を運び
フレンチトーストを食べながら、映画の感想を話していた。



桜:「やだなぁ...私だったら...記憶をなくすなんて...」



彼女は悲しそうな目をしながら、トーストを口にする。


映画を見終わってからずっとこんな感じだった。


彼女はここへ来る道で言っていた。


私は感情移入しやすいタイプで重たい映画を観ると
ずっと引きずってしまうって。



○:「僕もかな...」



でも、彼女の言うことが引っかかっていた。


映画の状況とは違うけれども
メンバーはさくたんの記憶を忘れている。


もしも、さくたんの記憶を思い出したら
どんな風になってしまうのか。


そこが気がかりだった。



桜:「映画の話ばかりしちゃうと
暗くなっちゃうから、話題を変えよう〜」



○:「そうだね。」



そこから、映画の話は全くしなかった。


ファッションの話とか普段の生活の話とか
他愛もない会話をし続けたんだ。


その間、僕は彼女がいない乃木坂のことを一切考えず
ただ、彼女との会話を楽しんでいた。


彼女と過ごす時間はあっという間で
席も混まなかったため、カフェに5時間も滞在していた。






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桜:「はぁ〜。長く話しちゃったね。」



僕たちは駅までの道を歩く。


辺りはすっかり暗くなり、街灯の光が道路を照らしていた。



○:「帰りは大丈夫?近くまで送っていく?」



暗い道では不審者が出る可能性がある。
僕が守ってあげる必要があると思っていたが


桜:「大丈夫だよ?桜は一人で帰れるから。」


と彼女は言ったので同じ駅で別れることになった。




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駅に着き、僕たちは改札に入った。



桜:「○○くん、今日は楽しかったよ。」



○:「こちらこそ。今日はありがとう。」



僕たちの家は逆方向だったため、ここで別れる。



○:「じゃあ、課題頑張ってね。」



彼女は課題がまだ残っていると言っていた。



桜:「その事なんだけど...○○くんに頼みたいことが...」



彼女ははにかみながら、俯き、ぼそっと言った。



○:「頼みたいこと?」







桜:「桜と一緒に課題をやってほしいの...」



彼女は僕の目を見て、頼んできた。



○:「えっ?一緒に課題?でも、学部も大学も違うよ?」



一緒に課題なんて、さくたんと学部も違うのに
どうやってやればいいのか分からなかった。



桜:「そ、そういうことじゃなくて...
その...同じ時間に課題をやると効率いいかなって...」



ようやく彼女の意図を理解した。
高校や中学時代は一緒に集まって課題をやる人たちがいた。
そんな風に僕と課題をやりたいということだろう。



○:「それは別に構わないけれど...」



断る理由も特にないし、推しの頼みだ。
快く引き受けるべきだと思う。



○:「でも、どこでやるの?あと、日にちとか...」


一緒に課題をやるということはカフェ?
いや、カフェだと長時間滞在できないし、図書館?
と考えていたが、彼女は僕の想定を超える提案をしてきた。












桜:「○○くんの家でやりたいなぁ...なんて。」



彼女は頬を赤らめ、はっきりと僕の家でしたいと口にした。



○:「ほ、僕の家...⁈」



流石にその選択をされるとは思っていなかったから
思わず、声が上擦ってしまった。



桜:「ダメかな...?」



彼女は涙を目に浮かべて、首を傾げる。



○:「ダメじゃないけど...なんで...僕の家?」


他にも選択肢はあるだろうに僕の家って。


それにさくたんは女性だ。


男である僕の家に来たいと言うなんて
僕がそういう事をする気がないからいいものの
何も考えていないのかな?と思っていたりした。



桜:「○○くんの生活が気になって...
あと、勉強の環境とかを知りたいなぁって...」



そういうことか。


先ほどのカフェで基本的に僕は家で勉強していると話した。


僕の家に物はあまりないと言ったり
さくたんに家の話を聞かれたため、色々と話した。



○:「そういうことなら。うん。いいよ。」



僕の家は学生寮でもなく、人を自由に呼べる環境だった。
だから、快く引き受けた。



桜:「本当に⁈ ありがと!!!」



彼女は笑顔で僕の手を両手で握る。



○:「ちなみに課題を一緒にやるのはいつにする?」



3日後とか1週間後とかかなと想像していたのだが



桜:「明日がいいの。」



彼女は翌日と言った。



○:「えっ⁈ 明日⁈ 」



桜:「うん...急なお願いで本当に申し訳ないんだけど...
明日がいいの...ほら、課題も早めに終わらせたいから...」



○:「うん。いいよ。何時に来る?集合場所とかは。」



彼女は僕の家の正確な場所を知らない。


その為、どこかで待ち合わせすることになると思っていたが



桜:「○○くんの家の前に直接行くよ!」



彼女はさらに僕の想定を超えてきた。



○:「え?僕の家のことは知ってるの?」



僕の家の情報を伝えたことはない。



桜:「ううん。知らない。
だから、後で位置情報を送ってほしいなって...」



○:「うん。分かった。今夜、送るよ。
僕が住んでいるマンションの外観とか目印とか。」



さくたんが道に迷わないように
なるべく正確な情報を伝えなければならない。



桜:「本当にありがと!
あ、もうすぐ、電車の時間だ...
明日のことはまた夜、メールで連絡するね!」



○:「分かった。僕の家の情報とかも送るよ。
気をつけて、帰ってね?」



桜:「うん!○○くんのほうこそ!
今日は本当にありがとう!楽しかったよ!」



彼女は僕に手を振り、2番線のホームへと向かった。


僕は彼女の姿が見えなくなるまで手を振った。


僕もまた電車の時間が近づいていたため
自宅の最寄り駅へと向かう電車が発車するホームへ向かった。







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帰宅後、僕は自分の部屋の掃除をしていた。


明日は推しが来る。


綿ぼこり一つも残してはいけないと思ったから
必死に掃除機をかけたり、雑巾掛けをしていた。



○:「ふぅ...元々物が少なくてよかったぁ...」



僕は彼女のグッズをあまり買っていなかった。
部屋にあるのはタオル、ペンライト、キーホルダー3つ。
そして、壁に掛かったポスターだけ。
生写真も少ししかなかったため、片付けは楽だった。


棚に軽く戻すだけで済み、掃除は1時間ほどで終わった。



○:「疲れたぁ...」



掃除も終わり、お風呂に入ろうかなと思っていると
ブブッ...ブブッ...と僕の携帯が鳴り始めた。



○:「誰?」


掃除をするため、机の片隅に置いてあった携帯を確認すると


○:「和ちゃん...?」


発信元は乃木坂46の井上和だった。


ピッ...


○:「もしもし?」


彼女から電話ということは
何かあったのか?と思い、電話に出た。






和:「もしもし。お久しぶりです。」



電話越しに落ち着きのある声が聞こえてきた。


○:「和さんから電話ということは何かありました?」


和:「ええ。伝えたいことがあったので掛けました。
安心してください。今、私は自分の部屋にいるので
この会話は誰にも聞かれていません。」


わざわざ言わなくても、容易に想像がつくのに
彼女は丁寧に現在の状況を伝えてきてくれた。



○:「で、伝えたいこととは?」



和:「メンバーの瑛紗が
さくたんのことを思い出しました。」


彼女は嬉しそうに報告してきた。


○:「えっ⁈ 本当ですか⁈」


こんなにも早く、思い出すなんて、驚いた。
最低でも一週間はかかると思っていた。



和:「はい!最初は諦めていたんですけど
○○さんの私にしかできないという言葉を思い出して
みんなを信じて、やったら、上手くいきました...!」



彼女は本当に嬉しそうだった。


○:「良かったです...流石、和さん...」


僕も嬉しかった。さくたんのことを思い出す人が増えて。
5期生にさくたんの記憶は絶対残っているという
僕の読みは正しかった。



和:「○○さんが私の背中を押してくれたおかげです!
この調子で5期生メンバーの記憶を戻していって
いつか、桜を探せるように頑張ります!」



彼女の最後の言葉を聞いて



○:「あっ...そ、そうですか...」



僕は返事に詰まった。
だって、僕はさくたんの場所も連絡先も知っているから。


和:「どうかされましたか?」



○:「い、いえ...何でもないです。
この調子でみんなの記憶を戻していってくださいね。」



でも、この事を話せなかった。



和:「はい!あ、電話を切りますね。
もうすぐ、紅白でバタバタしているので...。
夜遅くに電話をかけて、すみません。」



現在は大晦日数日前。
乃木坂46は紅白歌合戦の出場が決まっている。
そして、齋藤飛鳥のラストステージだ。



○:「いえ、大丈夫です。
わざわざ、報告してくださりありがとうございます。
紅白、頑張ってくださいね?」



和:「はい!おやすみなさい!」



○:「おやすみなさい。」



僕は電話を切り、スマホを充電器の上に置く。



○:「はぁ...」



さくたんのことはいつ話そう...

先ほどの電話で和ちゃんに話すことができなかった。



○:「いや...僕がさくたんの真実に
辿り着くまでは待つしかないか...」


現状、彼女は僕に信頼を置いてくれている。
ここでさくたんを変に刺激してしまうと
僕から離れていってしまいそうで怖かった。


○:「しばらくは様子見で...
彼女との生活を普通に楽しむか...」



乃木坂のことは触れずに純粋に彼女と向き合う。
彼女との生活を普通に楽しむ。
それがベストなのかなと判断した。



○:「今日は風呂入って、もう寝よう...」



掃除も終わったため、僕は風呂に入り
今日一日の疲れをゆっくりと癒した。



浴室から上がり、スマホを確認すると
さくたんからメールが届き、
明日の10時に行くと連絡が来た。


僕は自分の家の位置情報と了解というスタンプを送った。






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・桜サイド



桜:「ふふっ...」



○○くんが自分の家の位置情報を
送ってきたメールを確認して、私は布団の中に潜り込む。



桜:「今日は楽しかったなぁ。」



彼とのデートは本当に楽しかった。


今まで過ごしたどんな時間よりも楽しくて


辛いことを何もかも忘れられた。


桜:「○○くんとふたりでよかった...///」



やっぱり、私は彼のことが...



桜:「ふふっ.../// 明日も楽しみだなぁ...///」



私は小学生が遠足に行く気分で眠りについた。







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・美空サイド



一:「むにゃむにゃ...」



美空は自室のベッドで深い眠りについていた。



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?:「みーきゅん...」



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一:「へっ...?」



美空は何かを見て、一瞬、目を覚ましたが...



一:「夢か...むにゃむにゃ...」



再び、深い眠りについた。





第4話『ふたりでよかった』Fin


【第5話へ続く】



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