『狼くんを落としたい』 第17話
翌日 早朝
私たちは○○の家の前にいた。
彩:「ん…」
冨:「むにゃむにゃ…」
五:「眠い…」
菅:「なんで…こんな朝早くに…」
欠伸をしながら、眠い目をこする4人。
〇:「仕方ないでしょ。
美空が長時間遊びたいと言ったから。」
○○の家の別荘は少し離れたところにあるため
移動時間が約一時間かかる。
五:「その肝心の美空がいないけど?」
菅:「桜もいない。二人とも寝坊?」
桜と美空以外はここにいる。
〇:「10分前に美空から連絡が来た。
桜の家の車でここに向かっているって。」
和:「○○…あの車…?」
一台の車が近づいてくる。
〇:「たぶん。あの車に二人が乗っていると思う。」
そして、その車は私たちの目の前に止まった。
桜:「やっほ~♪」
一:「おはよう~!」
桜と美空がその車から降りてきた。
和:「なんで、桜の家の車に美空が乗っているの?」
一:「ほら、泊まりだから
みんなの荷物が多いでしょ?」
桜:「麻衣さんの車だけだと荷物が載らないと思って
うちの車も使うことにしたの。」
確かに全員分の荷物を載せて
全員が乗るのはかなり厳しい。
さくみく、賢いじゃん。
麻:「荷物は私の車に載せてね。」
私たちは荷物を麻衣さんの車に載せる。
一:「よっこいしょ…」
美空の荷物だけ異常に量が多い。
美空の荷物は○○の5倍の量。
減らす努力をしなさいよ
一:「じゃあ、どっちの車に乗るか
グーパーで決めよう!」
4人ずつに分かれることになった。
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麻衣さんの車内
一:「和、ズルい!」
菅:「そうだ!そうだ!」
こちらは○○、美空、咲月
そして、私の4人になった。
案の定、騒がしい。
和:「2人が○○の隣で揉めるからでしょ?」
私が間に入らないとね。
菅:「その隙に手を繋いだりするでしょ!」
しないわ!
一:「それに彩ちゃんに聞いたよ。
和はデートの権利を使って
○○と二人きりでお泊まりしたって!」
彩ちゃんのバカ!!!
なんで、言うの!
一:「○○だから、変なことは
してないと思ってあげるけど。」
菅:「○○だから、見逃してあげる!」
なんか、2人に申し訳ない…
○○が彩ちゃんにもあの事を
黙っていることを知れたから安心したけど。
○:「3人ともそろそろ着くよ。」
車は森林の中を走る
ここに小川家の別荘があるみたい。
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別荘に着き、荷物を運び入れた。
桜の家でのお泊り会と違い、全員に一部屋がある。
○○からその事を聞いた美空は
分かりやすく落ち込んでいた。
○○と一緒に寝る気だったよね。
もちろん、桜や咲月も落ち込んでいた。
私は少し落ち込みました。
○:「お風呂は大浴場のみ。」
一:「やった〜!○○!一緒にお風呂…」
おい…変態
○:「それは無理。」
一:「そこを何とか…!」
無理に決まっているだろ。
結局、私たちが先にお風呂に入り
○○が最後に入ることになった。
○○がお風呂の掃除を
してくれるそうです。
全員、荷物を部屋に運び入れて
リビングに集合しました。
麻衣さんは食材を
買うために近くのスーパーへ。
○:「で、今から課題をやるんだよね?」
そう。これはあくまでも
課題をやるための集い。
一:「ううん!私は全ての課題が
終わっているから、遊ぶだけだよ!」
………え?
一:「○○を驚かせたくて
数日前に全て終わらせたの!」
美空…成長したね…
あんなに課題をためていたのに…
桜:「私も終わっているよ♪」
菅・五:「私も終わっているよ!」
え、みんなも……⁈
彩・冨:「私たちも終わっています。」
うそ…
まだ、私は終わっていないよ…
○:「和も終わっているの?」
和:「あと少し残っている…」
コツコツ進めていたおかげで
残りの課題の量は少なかった
でも、こんな事なら
全部やってくればよかった…
○:「僕は和の課題を手伝うから
みんなは先に遊んでいていいよ。」
一:「なんで!○○も遊ぼうよ!」
美空は○○の腕を引っ張る
○:「それは和が可哀想でしょ。
全員で遊ぶほうが楽しいと思うから。」
○○…優しい…///
ということで私は○○に
課題を手伝ってもらうことに
美空は課題を残しておけば
よかったと嘆いていた。
○○と一緒にいたいだけじゃん
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○:「ここはこれを使う。」
彼の的確なアドバイスで
私の課題はすいすい進んでいく
和:「ねぇ…あの日のこと覚えている?」
○:「あの日?」
和:「だから…その…///
私の家に○○が泊まって…した時のこと……///」
○:「セ×○スのこと?」
和:「バカ!///
なんで、ストレートに言うの!///」
○:「大丈夫だよ。みんなは外で遊んでいるから。」
皆は外でドッジビーをしている。
和:「そういう問題じゃなくて…
○○は何とも思っていないの…?」
普通は恥ずかしいと思うのに
彼はそんな素振りを一切見せない。
○:「何とも思っていないわけじゃないよ。
でも、顔に出していたら
みんなに気づかれるでしょ…?」
確かにみんなにバレていないのは
○○が普段通りに接してくれているから。
私たちがしたことがバレてしまったら
五重奏の関係は壊れてしまうだろう。
○:「それに和のことは友達だと思っているから。
何でも相談できる大切な友達。」
和:「今、私のことをフったよね?」
○:「あ…ごめん…!そういうわけじゃ…!」
彼は慌てる
和:「大丈夫だよ(笑)
私は○○の決断を受け入れるから。」
私は彼の決断に委ねる
他の4人も同じ気持ちだろう。
皆は優しいから
彼の意思を尊重する。
私たち以外の人を選んだとしても
私たちは受け入れる覚悟だ。
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無事に私の課題は終わり
今は昼食の時間
昼食はバーベキュー
一:「○○、あーん♡」
美空は○○にお肉を食べさせる
一:「どう?美味しい?」
○:「美味しいけど…
みんな、自分のを食べようよ。」
美空の後ろには
茉央、咲月、桜、奈央ちゃんが並んでいる
○○にお肉を食べさせたい列みたい
奈央ちゃんも並んでいるのが意外だけど
○:「もうお肉いらない。」
五:「なんで?好きじゃないの?」
○:「お腹いっぱい。」
5人がお肉を1枚ずつ
○○の口に運ぶのを5周もやっている
流石に満腹になるよ。
○:「だから、お下がりください。」
彼のその一言でみんなは自分の席に戻る
麻:「あ、そうそう!みんなにお知らせがあります!」
全てのお肉と野菜を焼き終えた麻衣さんが話し始めた
麻:「NEGAの5周年ライブの
チケットが手に入りました!!!」
一:「本当ですか!」
麻:「全員分のチケットがあるよ♪」
桜:「やった〜!」
麻衣さんはどこからそんなレアなものを…
4万人のキャパで倍率10倍って聞いたよ。
菅:「ライブに行ってみたかったんだ〜。」
五:「麻衣さんありがとうございます!」
和:「○○、よかったね!」
○:「…」
私は○○に話しかけるがどこか不満そう
和:「嬉しくないの?」
○:「コネを使ったチケットは嫌だ。」
コネ?あ、そっか。麻衣さんは元モデルだった。
麻:「桜ちゃんと○○がライブに落選して
落ち込んでいるのを救いたいと
彩から頼まれたんだけどなぁ。」
○:「彩…余計なことを…」
○○は彩ちゃんを睨む。
彩:「桜先輩とお兄ちゃんが
抱き合って悲しんでいるのを見たら
救いたいと思ったの!」
一:「ちょっと!桜!
抱き合っていたってどういうこと⁈」
まあ、そこに反応しますよね
桜:「それは覚えていない…
あの時は○○と二人きりでライブに行ける
機会を失ったから本当に悲しくて…」
菅:「二人きりで⁈」
桜がどんどん燃料を投下している
和:「しょうがないよ。
2人はNEGAのライブに
一緒に行こうと約束していたから。」
彼と桜がそういう会話をしているのを
4月くらいに聞いたことがある。
桜:「○○、行こうよ!5周年の貴重なライブだよ!」
○:「うっ…で、でも…コネを使ったチケットは.,.」
彼なりのプライドがあるみたい
和:「自分へのご褒美も兼ねて、有難く受け取れば?」
受験もひと段落したみたいだからね。
ここで楽しむほうが良いでしょ
○:「で、でも…」
彼はまだ折れない。
麻:「行かなかったらお見合いするよ。」
○:「行く。」
麻衣さんの一言だけで十分だったんじゃ…
とツッコミをしたくなりました。
どれだけお見合いを嫌がっているのよ。
それになんで、麻衣さんは
○○に結婚してほしいと思っているの?
一:「あー!彩ちゃん!
私の肉をとらないで!!」
彩:「美味しい〜」
賑やかな昼食になった。
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○:「美空、少し左。」
一:「ここ?」
私たちは昼食後にスイカ割りを始めた。
2人ずつに分かれて
最初に割ったペアがスイカを食べられる。
ペアの組み合わせは
奈央&茉央、彩&桜、和&咲月、美空&○○
○:「振り下ろしていいよ。」
美空は棒を振り下ろすが…
菅:「はい。外れ。」
五:「○○の指示は完璧だったのに。」
なぜ、追い討ちをかける
一:「○○、ごめん(涙)」
○:「ちょっと、泣かないでよ(笑)」
結局、その勝負は彩&桜が勝った
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外も暑くなってきたので
屋内に戻りトランプで遊ぶことに。
○:「じーっ…」
○○は咲月の顔をじーっと見つめる。
菅:「…」
ババ抜きで○○と咲月が
最後まで残っている
冨:「咲月先輩の顔が真っ赤だ。」
一:「ちょっと!なに照れているの!」
桜:「ポーカーフェイス!!!」
菅:「ずっと見つめられたら
照れるに決まっているでしょ!///」
○○は30秒くらい咲月の顔を見つめていた。
○:「はい。揃った。」
菅:「あ…」
○○はただ本気で勝ちにいっていただけだった。
和:「次は何する?」
私はトランプをケースにしまう。
一:「神経衰弱やりたい!」
今、ケースにしまったばかりなんだけど。
○:「僕が勝っちゃうけどいいの?」
○○の記憶力は非常に良い
普通にやったら○○が勝つと思う。
一:「いや、私が勝つから!」
無理でしょ
彩:「お兄ちゃんとタイマンでやれば良くないですか?」
五:「それはいいね。」
確かに面白そう。
一:「○○、いい?」
○:「もちろん。ボコボコにするから。」
いや、怖っ…
私はトランプを並べる。
菅:「どっちが勝つと思う?」
和:「○○が勝つと思う人は手を挙げて。」
全員の手が挙がりました。
一:「ねぇ…(涙)」
くぅちゃんよ。これが現実だ。
冨:「美空先輩が可哀想なので
私は美空先輩に入れます。」
一:「奈央ちゃん、ありがとう…!」
ほぼ情けですよね。
冨:「その代わりに美空先輩が勝ったら
私にアイスを46個買ってください。」
対価が異常だよ。
まさか、それが目的?
一:「も、もちろん!私、頑張るから!」
美空の笑顔が若干引きつっている。
一:「じゃあ、じゃんけんで先後を決めよう♪」
○○と美空はじゃんけんをする。
〇:「僕が先攻でいい?」
○○がじゃんけんに勝った。
一:「いざ、勝負……」
そして、結果は……
一:「やった~!」
まさかの美空が勝ちました。接戦でした。
彩:「ちょっと、お兄ちゃん!」
桜:「何をしているの⁈」
2人は怒っている。
〇:「あんなに見つめられたら
集中できない……。」
美空は○○が選んでいるときに
彼の顔をじーっと見つめていた。
たまにウインクもしていたし……
場外戦術がひどかった。
一:「奈央ちゃんの応援のおかげだよ!」
冨:「ですね!ということでアイス46個!」
一:「え…………」
美空の顔が一気に青ざめていく。
冨:「神経衰弱をする前に約束しましたよね?」
私たちもすっかり忘れていた。
菅:「奈央ちゃんの応援のおかげだからね。」
五:「ファンには対価を払わないと。」
この二人も圧をかける。
一:「46個って……。いくらになるの……。」
美空は頭を抱える。
冨:「もちろん、ハーゲンです♪」
和:「ハーゲンは一個約300円だよ。」
300×46は約14000円だよね?
一:「無理!無理!!!」
彩:「奈央ちゃんとの約束を破るんですね。」
一:「だって、そんなに私……
お金を持っていないもん……。」
美空は今にも泣きだしそう。
っていうか、泣いている。
〇:「はぁ……僕がお金出すから。」
○○は財布から一万円札と五千円札を
一枚ずつ出して奈央ちゃんに渡す。
冨:「○○さんありがとうございます♪」
一:「○○…ありがとう(涙)」
〇:「その代わり、夜に
僕の部屋へ忍び込むのは辞めてよ。」
一:「え………うん!」
なんだ、今の間は?
今、○○が言わなかったら
絶対、忍び込む気だったよね?
________________________
夕食を食べ終えて、お風呂も済ませた。
和、茉央、彩、奈央が先に入り
今は美空、桜、咲月がお風呂中。
和:「○○はどこですか?」
そろそろ、○○がお風呂に入る番。
麻:「川のそばにいるって。」
和:「私、呼んできますね。」
五:「私も行く!」
私と茉央は別荘近くの川に向かう。
五:「こっちの方角で合っているよね?」
和:「うん。麻衣さんはこの道を
まっすぐ進めばいいと言っていたから。」
懐中電灯を持ち、暗い道を進んでいく。
五:「怖くない?」
和:「う、うん…何かが出そうな……」
普通に肝試しみたいになっている……
と心配をしていたが
無事に川にたどり着くことが出来た。
〇:「あれ?二人ともどうしたの?」
○○が川のそばにある岩に座っていた。
和:「もうすぐ、みんなが
お風呂に入り終わるから呼びに来たの。」
〇:「もう、そんな時間か……。」
五:「ねぇ、○○。そのお墓は?」
彼の目の前にはお墓があった。
〇:「これ?僕の本当の両親の墓。」
夢川と石に印されていた。
和:「でも、なんで
○○の両親のお墓がここに?」
〇:「だって、あの別荘は夢川家のものだから。」
彼の両親が亡くなった後に
あの別荘は小川家のものになったらしい。
〇:「麻衣さん曰はく、そのうち
僕のものになるみたいだけど。」
五:「○○のお母さんは優しかったよね。」
和:「茉央は幼稚園の頃に
○○のお母さんと話したことあるの?」
茉央は○○と幼稚園の頃に一緒だった。
五:「一回だけね。幼稚園の参観会の時に。」
〇:「お母さんが幼稚園の行事に
出たのはその一回だけだった。」
○○の母親は病で
外出することも制限されていた。
○:「夢川七瀬。麻衣さんと
同時期にモデルをやっていた。」
〇:「母親のおかげかもね。
かっこいいと持て囃されるのは。」
彼は立ち上がる。
五:「ねぇ……○○。お墓には
両親の名前しかないけど…。」
お姉さんも亡くなっているはずだけど
名前は2つしか記されていない。
〇:「麻衣さんが許可してくれなかった。」
和:「なんで?」
〇:「さあね……
僕は姉の名前を忘れているから
自分で書くことはできないけど…。」
彼はそう言うと、別荘に戻っていった。
五:「おかしいよね。
○○のお姉さんも夢川家の人なのに。」
確かにおかしい。
仮に遺体が見つからなくても
お墓に名前を書くことはできるはず。
まさか……
和:「茉央………
私、恐ろしいこと考えちゃった…。」
五:「和、私も……」
彼の過去の話ではお姉さんの
葬儀に参加したことは聞いていない。
ただ、麻衣さんから
お姉さんの死を聞いただけ。
ということは……
和・五:「○○のお姉さんは生きている…?」
でも、なんで…そんなことをする必要があるの?
隠す意味が分からない。
私たちは別荘に戻り、麻衣さんに聞くことにした。
________________________
麻衣さんの部屋
麻:「あなた達にお墓の近くに
行かせなきゃよかった。」
彩:「でも、よく気づきましたね。」
この部屋には
麻衣さん、彩ちゃん、茉央、私の4人だけ。
和:「○○の実の姉は
生きているということでいいですか?」
麻:「うん。生きているよ。」
和:「なんで、それを○○に…」
五:「そうですよ!生きていると知ったら
○○も安心するじゃないですか!」
○○は姉のことを溺愛していた。
麻:「そんなに単純なことじゃないの。」
一体何が……
麻:「あなたたちに話せるのはここまで。
この話は他の人には内緒にしてね。
もちろん、○○にも。」
麻衣さんはそう言うと、部屋から出て行った。
彩:「ちなみにお二人もお兄ちゃんの
実の姉を見たことがありますよ。」
和・五:「え……?」
彩:「この別荘にいる人
全員が知っている人です。」
私たち全員が知っているの?
和:「ちょっと、待って!
彩ちゃんは○○君のお姉さんが
誰か知っているの?」
彩:「はい。直接、会って話しました。
でも、運命は残酷ですよね。」
彩:「まさか、実の姉が
自分の好きなアイドルグループにいるなんて…」
和:「え……?」
NEGAにいるということ?
彩:「でも、真実を聞くと
お兄ちゃんは悲しんでしまうから…」
彩ちゃんの目から涙が零れる
彩:「お願いだから…
今はお兄ちゃんに何も話さないでください…」
彩ちゃんは嗚咽しながら
私たちに訴えた。
私と茉央はその姿を見て
絶対に内緒にしなければならないと思った。
私たちは○○のことが大好きだから
彼を傷つけることはしたくなかった…
______________________________________
翌日 早朝
私は瑛紗さんと絵を描くために
早起きしていた習慣により目が覚めてしまった。
〇:「和、早いね。」
リビングに行くと彼はテレビを観ていた。
和:「毎朝、早起きしていた癖で目が覚めちゃったの(笑)」
〇:「そっか(笑)」
和:「何見ているの?」
〇:「NEGAの特集だって。
5周年ライブがもうすぐだから。」
その情報番組にはさくちゃん、かっきー
美月、しーちゃんが出演していた。
〇:「そういえば、握手会はどうだったの?」
彼に感想を話すと約束していたのに
すっかり忘れてしまっていた。
和:「可愛かったし、楽しかったよ!」
昨日、彩ちゃんから聞いたこともあり
NEGAのことを少し話しづらい。
〇:「よかった。」
和:「ライブも楽しみだね。」
〇:「本当は自分で当てたかったけど(笑)」
彼は笑いながら話す。
和:「今から外で絵を描いてもいい?
この時間に起きると、どうしても
絵を描きたくなって(笑)」
〇:「いいけど…このリビングの
窓から見える位置で描いてね。」
和:「了解!
朝食の時間になったら呼んでね!」
____________________________
NEGAの特集も終わったから
僕はテレビを消して窓の外で絵を描く和を見つめる。
〇:「はぁ……」
ここ最近は勉強ばかりしていたこともあり
休むことに上手く対応できない。
その為、ため息をついてしまう。
〇:「ふぅ…」
心を落ち着かせるために
いったん深呼吸をして手を上に伸ばす。
?:「…」
〇:「え……?」
背後から誰かが僕の首に手をかけて抱きしめてきた。
〇:「桜…?」
香水の匂いで桜だとすぐに分かった。
桜:「前よりも和と仲良くなっているね…」
桜が耳元で囁く。
桜:「デートで仲良くなったの…?」
僕は彼女の問いかけに頷く。
桜:「私もデートしたい…」
〇:「え…?」
桜:「取り残されているような気がするの…
だから、私もデートしたい……。」
普段のおっとりとした声ではなく
大人びていて、消え入りそうな声。
〇:「分かった…。」
断る気もなかった。
いや、みんなとデートするうちに
桜ともデートをしてみたいと
心のどこかで思っていたのかもしれない。
桜:「ありがとう…///
NEGAの5周年ライブの次の日の
15:00に私の家に来て…///」
桜はそう言い残し、リビングを後にした。
僕は朝食の時間まで
窓の外にいる和を見つめていたが
桜の香水の匂いと首の感触が
ずっと、残っていた。
みんなで鬼ごっこをしている時も
みんなで水遊びをしている時も
別荘で2日目を過ごしている時は
香水の匂いと感触がずっと残ったままだった。
そして、別荘から帰る車内でも
その匂いと感触が消えることはなかった。
【第18話に続く】
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