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『桜は散り、歯車が止まる』第9話





第9話 『私たちの思い込み』





翌日




○:「じゃあ、昨日の夜に話した通りに...。
桜はテレポーテーションで帰ってきて?
僕は普通に帰ってきて、和ちゃんたちがいるか確認する。」



桜:「分かった...。○○も気をつけてね...。」



僕たちは講義があったため、今日はほぼ外に出る。

??さんの電話の通りなら、今日、和ちゃんは来るはず。



○:「うん。あとは作戦通りに。」



桜:「うん...じゃあ、また...夜ね...」



僕たちはテレポーテーションして、大学へ向かった。





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・和サイド




一:「ねぇ?ずっといる気?」



姫:「ただの不審者じゃん。」



私たちは○○さんと桜が出てきたと
美空が言っていたマンションの前にいた。



ア:「このマンションの隣にカフェがあるから
1人は外で待ってて、あと3人はカフェにいれば良くない?
交代で見張るほうがいいと思うんだけど。」



和:「じゃあ、そうしよっか。
まずは私が30分くらいここにいるから
みんなはカフェでのんびりしててね?」




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和:「はぁ...」



私はマンションの入口をずっと見ていた。



和:「(○○さんに聞かなきゃ...)」



どうして、桜と一緒にいることを黙っていたのか。

私たちは協力関係のはずなのに何で話してくれなかったのか。

聞きたいことがたくさんあった。



和:「そろそろ...30分だ。美空と代わらないと。」



私は美空に連絡をして、カフェへと戻った。





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・○○サイド



△:「もうすぐ試験だけど勉強進んでるか?」



○:「一応ね?」



大学の講義の合間に僕は友人の△△と話をしていた。



△:「そういや、○○って彼女できた?」



○:「出来たけど...何で知ってるの?」



△△には桜と付き合ったことを話してなかった。

△△は乃木坂46の川﨑桜を覚えてないため
普通に彼女が出来たと思っていそう。



△:「この前、○○のことが好きな女子に聞かれたんだよ。
可愛い女の子と手を繋いで歩いてるところを見たけど
彼女出来たの?って。」



○:「ちょっと待って。僕のことが好きな女子って?」



△:「前にも言ったかもしれないけど
○○は普通にモテてるぞ?
ただ、お前が静かだったり、一人でいるから
話しかけられないだけだよ。」



○:「は、はぁ...」



全く気づかなかったがどうでもいい。

僕は桜の彼氏で婚約者だ。

これ以上、モテる必要はどこにもない。



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・和サイド



ア:「本当にさくが現れるのかな?」



一:「さあ?」



和:「絶対現れるよ。」



今は姫奈が見張り番のため、
私たちは飲み物を注文していた。

ちゃんとお店の人にも長時間いる許可は得ている。



和:「○○さんが現れたら、桜のことを聞けばいいから。」



どちらかが現れればいい。




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・桜サイド



桜:「はぁ...」



講義が終わり、私はテレポートで家に戻った。



桜:「あっ...アルノだ...」



カーテンを開け、通りを見ると、
アルノがスマホを触りながら立っていた。



桜:「??さんの言う通り、
私に会いに来ようとしてるんだ...」



みんなは勘違いしてると思うし
○○の言う通り、私が話さないと永遠に会おうとする。



桜:「勇気を出さなきゃ...」



私の想いと願いを叶えるために.........



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・○○サイド



○:「お肉と人参と...」



講義が終わり、僕は食材を買いにスーパーに来た。



○:「あとは醤油とついでにお菓子と...」



と商品を詰めていると...

僕の携帯電話が鳴った。



○:「桜?どうしたの?」



電話の主は愛しの彼女だ。



桜:「○○。マンションの近くにアルノがいた。
他のメンバーも周りにいるっぽい。
??さんが隣のカフェを確認したら
なぎ、姫奈、美空が座っていたって。」



彼女の声が震えており、怯えていた。



○:「そうか...じゃあ、今から家に帰る。
あとは作戦通りに。??さんにもそう伝えて?」



桜:「うん...分かった...」



僕は携帯電話をポケットに入れ、
お会計を済ませて、スーパーを後にした。



○:「(さて...ここからが勝負...)」







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・??サイド



?:「(はぁ...)」



私は桜ちゃんの彼氏である○○くんの作戦に乗り
今は二人が住むマンションの近くで
和ちゃんたちを見張っていた。



もちろん、彼女たちに気づかれないように
帽子、メガネ、マスクをつけている。



?:「(桜ちゃんの想いと願いを潰されてたまるか...)」



私は首から下げたペンダントに触れ、決意を固めた。






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・和サイド



姫:「もう6時間も居るんだよ?」



ア:「そろそろ終わりにしようよ。」



一:「和...今日はもう終わって、明日にしたほうが...」



流石にカフェの滞在時間が長すぎたため
一旦、全員外に出て、木陰にいた。



和:「そうだよね...」



気配がここまで何もないと今日はもう...
また明日にしようかなと諦めようとしていたその時



ア:「ちょっと、和。あっちから歩いてくる人って。」



アルノが私の肩を叩き、
私たちの数メートル先を見るように促す。



○:「...」



和:「○○さんだ...」



探し求めていた人物だったため、人違いするわけがない。



一:「行こ!」



姫:「うんっ。」



私たちは急いで、○○さんに話しかけに行った。




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・○○サイド



○:「...」



僕はスーパーで買った食料を持って、帰り道を歩いていた。

そろそろ、マンションの入り口に着くところ。

入り口の階段を上がり、中に入ろうとしたその時...

複数人の足音が聞こえてきた。



○:「...」



僕はその足音が聞こえる方向を向き、立ち止まる。



和:「お久しぶりです...!○○さん...お話があります...!」



そこには僕の協力関係だった人がいた。




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・和サイド



○:「僕に何の用ですか?
わざわざ、他のメンバーを引き連れて。」



彼は足を止め、私たちのほうに視線を向ける。



和:「桜のことですよ。」



一:「しらばっくれるつもりですか?」



ア:「焼肉店で桜と一緒に居ましたよね?」



姫:「明らかに桜と親密そうな関係でしたけど。」



○:「さあ...?何のことだか...さっぱり...」



彼は首を傾げ、知らない素ぶりを見せる。



和:「この写真はどう説明するんですか!」



私は瑛紗が撮った写真を彼に見せた。



和:「桜と一緒に居ますよね。
それにあなたは私の電話を拒否している。
私たちは協力関係のはずです。
桜が乃木坂にいる世界を取り戻すための。
なのに桜と一緒にいることを黙っている。
どういうことか説明してもらえますか?」



一:「桜は今どこにいるんですか。」



ア:「桜はここにいるんですよね?」



姫:「早く会わせてください。」



私たちは彼を問い詰める。

本当はこんな事やりたくなかったけど、
桜と一緒にいるのは明らかで
彼が桜について知っている唯一の人物だから。



○:「って言ってるけど...どうする?桜。」



和・一・ア・姫:「えっ?」




?:「会いたくない。」



和:「そ、その声...桜の...」



私たちの近くから桜の声が聞こえた。



一:「で、でも...どこから...」



辺りを見渡しても桜は居ない。



○:「ここだよ。」



彼は私たちにスマホの画面を見せる。

そこには川﨑桜と表示されており、
今の会話が全部桜に聞こえていたとすぐに察した。



和:「桜!私たちの声が聞こえてるんだよね!」



私は彼の携帯に話しかける。



桜:「聞こえてるよ。その声はなぎだよね。」



和:「ねぇ!乃木坂からあなたの名前が消えてるの知ってるよね!」



桜:「消えてないよ。これが普通だよ。」



和:「普通って...」



この世界はおかしいのに普通じゃないのに
彼女は平然とこの世界は普通と言っている。



一:「桜?本心を話してよ。
無理してるんでしょ?この男に脅されて。」



桜:「えっ?」



一:「この男から逃げ出したいけど
何か弱みを握られている。違う?」



桜:「いい加減なことを言わないで。」



桜の声が先ほどよりも低くなったような気がした。



一:「本当はこの世界を戻したいのに
この男が戻せないように仕組んでる!
本当はこの男と付き合ってても楽しくないのに
無理矢理、笑顔で...」



と美空が○○さんのことを酷く言うと











桜:「辞めて!!!」



と桜の声が電話と...



○:「えっ...桜...」



和・一・姫・ア:「桜⁈」



私たちの背後から聞こえた。



桜:「○○のことを悪く言ったら許さないから...。」



桜は電話を切り、私たちの目の前に立っていた。



○:「桜!家に居てもいいって...
電話だけでいいって言ったでしょ?」



和:「(家に居てもいい?どういうこと?)」



桜が住んでいるのはこのマンションで
桜は入り口から出て来ずに私たちの背後にいた。

いつの間にここに来たの?

別の入り口は無いはずだし...一体どうやって...



桜:「○○のことを悪く言うなんて許せない。
それに...直接言わないとみんなに信じてもらえないと思った。」



桜の表情は私たちと普段過ごしている時と違って
笑顔ではなく、堅い表情で私たちの目の前にいる。



姫:「桜...」



桜:「せっかく、みんなの記憶を無くせたのに
どうして、なぎは戻しちゃうのかな?」



和:「えっ...」



一:「みんなの記憶を無くせたって...」



桜:「私が全部やったんだよ。
自分の存在を乃木坂から消して
みんなの記憶を無くした。」



和:「な、なんで、そんな事を...!!!」



それにどうやってやったのよ...
こんな非現実なことを...



桜:「あなたたちに理由を話すわけない。」



姫:「桜は乃木坂から消えた世界が良いと思ってるの⁈」



桜:「うん。だからね?もう二度と桜に関わらないで。」



桜は私たちの横を通り過ぎ、○○さんの横に立つ。



ア:「ちょっと待ってよ。
私たちが過ごしてきた時間は⁈
5期生は11人だよ⁈」



桜:「5期生は10人だよ。何度も言わせないで。」



和:「もう一度考えてよ!あなたは...」



あなたは私たちの大切な仲間...と伝えようとしたが

















桜:「しつこい!!!!!」



桜は声を上げ、私の言葉を遮る。



和:「えっ...」



初めて聞く彼女の声に私たちは黙ってしまう。



桜:「これ以上、私に関わるのなら...
あなたたちの存在そのものをこの世から消すから。」



ア:「そ、存在そのものって...
乃木坂に居た記録だけじゃなく...
生きた記録も桜が乃木坂から消えたみたいになくなるってこと?」




桜:「そうだよ。あなたたちは誰も知らない存在になる。
そうはなりたくなかったら、これ以上、桜に関わらないで。」



彼女の目は本気だった。

冗談で言っているように思えないし
現に桜が消えているから、
これも実現できるのだろうと想像がつく。

私たちは何も言えなかった。



桜:「行こう。○○。テレポーテーションしよう。」



○:「うん...」



○○さんは桜の腕にくっつく。



和:「待って...!桜!もう一度、話を...」



桜:「...」



彼女は私の話を聞こうとせず、私たちの方も見なかった。

そして、光が桜と○○さんを包み込み、二人は消えた。



姫:「テレポーテーション...本当にしたの...?」



ア:「あり得ない...こんなの映画とかの世界だけなのに...」



一:「桜が急に現れたのも瞬間移動ってこと...?」



みんなは桜が消えた事に動揺していたが



和:「そんなのどうでもいいよ...」



私はどうでもよかった。



和:「桜が私たちを拒否した...
桜は乃木坂から消える事を自ら選んだ...
私たちは桜が何かに巻き込まれて、困ってると思ってたのに...」


みんなの脳内に桜が現れたのも
桜が助けてほしいと言っていたからだと思ってたのに



和:「全て私たちの思い込みだった...」



何もかも思い込んでいたんだ。



一:「和...」



和:「どうすればいいのよ...!!!!!」




私たちは桜のことを何も知らなかったんだ...



ア:「和、早く帰ろ?ここにいると迷惑になる。」



姫:「通行人にも不思議に思われてるし...」



この時間になると仕事帰りの人たちが多くなっていた。

マンションの入口で泣いている私を
怪しんでいる人たちがほとんどだろう。



一:「和...帰るよ...」



美空は和の体を支える。



和:「桜...」



帰り道も私の涙が枯れることはなく
私は彼女の名前をずっと呼んでいた。




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・??サイド



?:「うん。撮れたよ。
これで私が和ちゃんたちに警告すればいいんだよね?」



私は和ちゃんたちから離れ、電話をしている。



○:「はい。そうすれば、大人しくなると思うので...。」



電話の相手は○○くん。桜ちゃんの協力者で彼氏。



?:「分かった。ありがとね?本当に。
桜ちゃんに協力してくれて。」



○:「いえ。こちらこそ。
僕の提案を聞いていただき、ありがとうございました。
失礼します。」



?:「ふぅ...」



彼との電話が終わり、私はスマホをカバンにしまう。



?:「(桜ちゃんはみんなに迷惑かけたくないから
悩みを一人で抱え込んでいたんだよ...?
同期には言えない悩みもたくさんある。
分かってるかな...。井上和ちゃん。)」







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・○○サイド



僕たちはテレポーテーションをして、家に帰った。
入口から普通に入ればよかったけど
僕たちが瞬間移動の術を持っている事を見せたかったから
あえて、テレポーテーションをした。



○:「桜、晩ごはんにする?」



食材を冷蔵庫に入れ、時間も時間だったため
夕食にするかどうか桜に尋ねると



桜:「○○...」




桜は僕の名前を呼び、僕にくっついてきた。



○:「どうしたの...?」



彼女の様子が少しおかしかったから
僕は彼女の頭を撫でて、彼女を落ち着かせようとした。



桜:「みんなを消したくないよ...」



と彼女は本音を吐いた。



○:「分かってるよ。
だから、??さんにも協力してもらってる。」



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数日前



家に帰った後、僕は桜に一つの提案をした。
それはメンバーに桜自身が話すということ。



桜:「えっ...みんなに話す?」



○:「うん。このままだと桜は助けようとしてくる。
助けないでとかこの状況を桜が望んでいることを
みんなに話して、これ以上探すのを辞めてもらうしかない。」



桜:「でも...みんなの前で話せる自信がないよ...」



○:「電話でもいいから。」



桜:「で、電話...」




彼女は僕の提案を聞いても不安そうだった。



桜:「それにそれだけでなぎたちが諦めるとは...」



○:「だから、??さんにも協力してもらう。」



桜:「??さんに?」



○:「うん。だから、後で??さんに会わせてほしい。
あの惑星の時計の前で。もちろん、桜同伴でね?」




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桜:「みんなを消すなんて桜にはできない...
みんなには普通に過ごしてほしい...。」



○:「大丈夫だよ。もう来ないと思うから。
あとは普通に生活しよう?何も気にせずに。」







桜:「うん...」





僕はその夜、彼女の手をずっと握っていた。





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・和サイド



私たちは桜の家から離れ、帰り道を歩く。




一:「和。桜が本心であんな事を言ってると思ってるの?」



和:「どういうこと...?」



一:「私の目からは桜は苦しんでいるように見えた。
本当は私たちのことを消したいと思っていなくて
ただ、何かに苦しんでいて...私たちを巻き込みたくなかったから、ああいうことを言った。」




和:「何かって何よ...○○さんがまた悪さしてるって言いたいの?」



美空はずっと○○さんが悪だと思っていた。



一:「ううん。桜が得体の知れない何かと戦っているように見えたの。」



和:「得体の知れない何か...」



姫:「私たちが知らない桜の悩みとか?」




ア:「何だろ...桜が戦ってる悩みって...」



私たちは考えたが



和:「分かんない...。」



何も分からなかった。

私は帰った後も自室で考えていたが何も分からなかった。






第9話 『私たちの思い込み』 Fin




【第10話に続く】

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