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推し以外のメンバーとお家デートをしても理性を保てるのか?






○:眠いっすなぁ...


僕は○○。特に強みもない大学生。

そろそろ、何か強みを得ないといけないと思いつつも
なかなか、行動を起こせません。

その証拠に私はソファーに寝転がりながら
ぼーっとスマホをいじり倒しています。

しかし、ある事には行動を起こせるんです!



ピンポーン...


とインターホンが鳴り



大きめの段ボールを猫の業者さんから受け取る。


僕は受け取って、すぐにハサミで封を開封する。


○:咲月...あーや...

今日、受け取ったのは生写真だ。
ランダムという凶悪なシステムである。
今回は20パック購入した。



○:もう...なんなん??


10パックを開封しても、まだ推しが出てこない。
なんなん?とずっとブツブツ言いながら
開封を進めていき、ラスト1パック...


○:き、きた...しゃくたんのヨリ!!!


念願の推しであるさくたんのヨリを獲得した。


○:はぁ...よかったぁ...



○:あっ...スリーブに入れないと...



僕は20パック分の写真をスリーブに入れて保護する。


○:てれさはこっち...アルはこっち...


フォトアルバムに整理していく。
行動力もない自分が嘘のようで
何時間も集中して、開封作業と整理を終えた。



○:はぁ.../// 可愛い...///



桜さんの写真を見て、幸せな気持ちに僕はなる。

お話し会には毎回のように行き
ブログにコメントを毎日のように残す
そのお陰もあり、名前と顔は覚えてもらったけれど



○:サイン会なぁ...



桜さんの人気は急上昇してしまい
貴重なイベントも当たりにくくなってしまった。


人気は上がるのは嬉しいけど、複雑な気持ちなんです。

僕はそんなにお金を注ぎ込めないため
札束の戦争をするイベントに縁はない。



○:諦めるしかないのか...


推しに覚えてもらうために
メイクなども適度にするようになり
資金を得るためにバイトもたくさんやっているけど


○:札束には勝てぬ...


そりゃねぇ...サインは欲しいですよ!
だって、貴重なものだもん!
特別感を味わいたいという謎の欲求があるんです


でも、それに抗わないといけないのかもしれない。
だって、資金がないんだから。



○:彼女もいないわ、強みもないわ...

推しの未来は明るいけれど、僕の未来はお先真っ暗。



○:そろそろ、真面目に考えないとなぁ...


割り切るしかないよね...



○:でも、特別感を味わってみたいなぁ...



そういう気持ちは消えなかったが
就職してから、やればいいと無理やり納得させた。


○:そろそろ、バイトの準備をしなきゃ...


髪の毛をセットして、バイト用の服装に着替える。





そして、バイト先であるカフェへ向かった。





○:ご注文はアイスコーヒーでよろしいでしょうか。


バイトは全力でやっていた。

笑顔を見せて、優しい口調で接客する。

推しが全力でやっているのだから
僕も全力でやらないといけない。


推しを常に意識しているのです。

女A:あ、あの...連絡先を


最近、こんな一言を言われるようになった。



○:すみません。連絡先は渡せないので。



正直、交換したい。僕だって、彼女が欲しいから。
でも、よく分からない人に連絡先を渡すのは怖い。


それにバイト先ではヲタクをやっている事を
明かしていないから、ヲタクをやっていると
知られると、色々と面倒なことになりそうで


・休憩中


店長:○○君のおかげで店の売上も伸びているよ。



僕がいるおかげで女性客が増えたと店長は言うが
正直、僕のおかげではないと思う。


このカフェのスイーツや飲み物が美味しいだけ。
僕はただヲタ活の資金を得るために働いている。


推しに良く見られたいからお洒落をしている。


ただ、それだけなんですけれども...
まあ、店長は僕のおかげと言って
僕の給料を上げてくれているので感謝しかない。


これでまたヲタ活資金を得られるのでね。


○:休憩終わりますね。


店長:もう良いの?


○:はい。お客さんもたくさんいるので。


再び僕は接客に戻り、淡々と業務をこなす。



○:(接客を強みにすればいいのかな...)



そんな事を考えながら、レジ打ちをしていた。


○:ありがとうございました〜。

日が暮れ始めて、少しずつお客さんも減ってきた。


○:(今日はこれ以上、人は来ないかな...)


そんな事を思っていた時...




カランコロン...




○:いらっしゃいませ。1名様でよろしいでしょうか?



?:はいっ...



帽子とマスクを深く着用した女性が入店してきた。




○:ご注文が決まりましたら、お声かけください。



女性を席は案内し、お決まりの台詞を僕は言う。




?:あの...オレンジジュースを...1つ



女性は細々とした声で注文をする。



○:かしこまりました。




僕は女性の注文通り、オレンジジュースを注ぎにいく。




○:お待たせしました。オレンジジュースです。




?:ありがとうございます...




○:ごゆっくりお過ごしください。




と引き下がろうとしたが




?:あの...コンセントはありますか...?




○:コンセントですか?すみません。
座席には備え付けていないんです...




?:そうですか...困ったなぁ...



女性は何か困っていた。





○:コンセントが必要なんですか?



?:スマホの充電をしたくて...


私、モバイルバッテリーを家に忘れてしまって...


女性は夜もお仕事があるらしく


スマホがないと致命的というのが

女性の慌てている様子で伝わってきたから


○:私のモバイルバッテリーで良ければ、貸しましょうか?


と提案した。


?:良いんですか?



○:はい。お客様を助けるのが私の役目ですので。

笑顔で僕は対応する。
困っている人を助けたいと思ってしまうのが僕の性格。



下心は0.1%だけあったけれども



?:ありがとうございます...///



○:少々お待ちください。



バックヤードに戻り
鞄から充電器を取り出して
再び、女性の元へ戻った。




○:どうぞ。機種は同じだと思いますので。



?:本当にありがとうございます...///




○:返しに来る際はここで何か注文してくださいね?(笑)




?:はいっ(笑)




女性は数分で店を後にした。




僕の勤務時間も終わって、帰路につく。






○:パンを買っておかないと。



自炊が出来ないため近くのスーパーで
惣菜とパンを購入し、僕は家に帰った。





そして、先ほどスーパーで購入したものを
食べながら、MVを観ることにした。






○:しゃくたん...///





一方、その頃...





和:ん〜




私はモバイルバッテリーを使いながら
スマホで音楽を聴いていた。

一:あれ?今日は充電器持っているの?



同期の美空が話しかけてきた。


和:カフェの店員さんに貸してもらったの。

一:なるほど...なるほど...


和:だから、今度返しにいかないと。


返しに行った時にカフェで注文すると
若くてカッコいい店員さんに約束したし


一:気をつけなよ?



和:何を?


一:和はグループの中でも人気だから...



和:大丈夫だよ。マスクもつけている。



変装もバッチリだった。
店員さんと近距離で話したけど
気づいている様子はなかった。


一:なら良いんだけど...



私はまだまだ人気もないからね...


桜:和〜写真撮ろう〜





和:いいよ〜





桜に誘われ、ツーショットを撮る。




桜:美空〜写真撮ろう〜




一:オッケ〜



美空は桜に誘われて、私から離れる。

和:(普通にかっこよかったよね...///)


カフェで話した店員さんの顔を思い出す。
普通にかっこよくて、笑顔が素敵で
優しい口調で少しだけ気になっていた。


和:(あれ...?何か入っている...)



充電器の袋の中に何か入っていた。



和:はぁ⁈




中に入っていたものを見て、思わず声が出てしまった。



桜:どうしたの?

一:急に大声出しているけど何かあった?




和:ううん!なんでもない!


和:迷惑メールを見て、驚いただけ...




声を出してしまった理由を即興で作った。


一:大袈裟だなぁ(笑)



和:ごめん(笑)


瑛:そろそろ、撮影始まるよ〜





私は先ほど見たものを頭の片隅に
無理やり押し込んで、撮影をこなした。







撮影を終えた私は自分の家に帰った。




和:この生写真...





充電器の袋に入っていたものを改めて確認する。




和:どうして、桜の生写真が...



同じメンバーである桜の生写真が入っていた。




これを見て、私は思わず声を出してしまった。



和:あの人は私たちのファンなの...?



WEB限定の写真だから、そこそこのガチファンな気がする



和:私が行っていたのは気づかなかったのかな...




桜よりも人気はあるはずなのに
ファンなのにあの人は私に気づかなかった。





和:桜のファン...



私の気になっていた人を
他の人に取られたようで複雑な気持ちだった。




和:イケメン店員...




私はカフェの口コミを確認した。

彼は人気者みたいで彼に会うために
カフェに通う人もいるらしい。



そんな人が桜のファン...
彼が桜のお話し会に通っていたら
桜はかっこいい彼のことを覚えているはず。

桜はカフェによく行くから
彼の働くカフェにいつか行ってしまったら
彼と良い関係になってしまうだろう



それが何故か許せなかった。取られたくなかった。


私が彼と良い関係になってみたかった。


彼に一目惚れをしてしまったから。


誰にも取られたくなかった。


和:よしっ...やろう...




私は口コミから彼の勤務時間を確認して
ある作戦を決行することにした。






彼を桜ではなく私に引きずり込む作戦を...






・数日後





○:ありがとうございました〜




僕はいつも通り、バイトをこなす。



今日は一段と気合いが入っていた。



今日はさくたんのブログの日で
明日はさくたんとのお話し会があるからだ。




話す内容はまだ決めていない。



帰ってから決めようと思っていた。



○:(あと数分でバイトも終わる...)




残りも頑張ろうと思って、気合いを入れ直したところ





カランコロン...




和: ...



○:いらっしゃいませ〜。
1名様でよろしいでしょうか?




帽子とマスクを着用した女性が入店してきた。


和:はいっ...///



女性を席に案内した。


○:ご注文が決まりましたらお声掛けください。



和:オレンジジュースで...


○:かしこまりました。


僕は淡々と業務をこなしていく。


いや、頭の中は桜さんでいっぱいだった。



○:お待たせしました。



○:ごゆっくりお過ごしください...




と引き下がろうとしたが



和:あの...この前はありがとうございました。




女性がモバイルバッテリーを見せてきた。



○:あっ、この前の⁈



この前、僕の充電器を貸した女性だった。



和:本当に助かりました。ありがとうございます。



○:いえいえ...



桜さんのことを考えすぎて、貸したことを完全に忘れていた...



○:あれ?モバイルバッテリーを入れていた袋は...


女性は充電器だけ渡してきた。



和:どうぞ...袋です



○:ありがとうございます。



女性から袋を受け取り、充電器を袋に入れた。



和:それと袋の中にこれが入っていたんですけど...



○:えっ⁈



女性は桜さんの生写真を見せてきた。



○:あっ...



そういえば、先週のライブに行った時に
袋に入れっぱなしにしていたんだった。



和:この子のことが好きなんですか?



○:えぇ...まぁ...



ヲタクをやっている事はバレたくなかったのに!
と思いながらも素直に答えた。


○:すみません...見苦しいものを袋に入れていて...


和:いえいえ...大丈夫ですよ...!
○○さんのことがよく知れましたので...



○:本当にお恥ずかしい限りです...(笑)


彼女も居ない上にヲタクをやっているのは恥ずかしいです。



穴にあったら入りたい...




和:私たちのファンなんだって知れて
本当に良かったので大丈夫ですよ...///



○:えっ?私たち?


どういう事ですかい??



和:まだ気づかないんですか...?


気づかない...?メンバーってこと...?




僕の脳内が混乱し始めた。




和:にゃんにゃん...にゃぎっ...



女性はマスクを外して、強烈な一言を放った。


○:えっ...和ちゃん...⁈



嘘やん...桜さんより人気...
次世代のセンター候補なのに...


なんで、気づかなかったんだ...



和:はいっ...///




○:(か、かわいい...)


いやいや、違う...


○:マスクをつけてください...



人気者の貴方がここにいると集まってきちゃうでしょうが!


和:桜が推しなのに気づかなかったんですね(笑)


和はマスクをつけて、○○に話しかける。



和:ちょっと、がっかりしました...


○:い、いや、、、すみません...


ファンとして失格な気がする...

和:まあ、良いですけど...
桜しか見ていないんだなって思いました(笑)




○:は、はぁ...


マジで申し訳ないです


和:それでモバイルバッテリーの
お礼をしたいんですけど...


○:お礼なんかいらないですよ。



和ちゃんと話せるだけでお礼として十分過ぎます。


和:いや、私がお礼をしたいんです...!!
本当に助けられたので...!


彼女は涙目になりかけていた




○:じ、じゃあ...お言葉に甘えて



大人しくお礼を受け取ることにした。


和:ふふっ.../// お礼をしたいので
あとで私の家に来てくださいね?





○:はっ?





な、何を言っているの?私のお家?




和:私の連絡先です。
バイトが終わったら追加してください。
家の位置をお教えしますので。約束ですよ?



和はメモを○○に渡す。

○: ...



○○は無言でその場に佇んでいた。



和:ごちそうさまでした。




コップはいつの間にか空になっていた。



和:お会計お願いします♪


○:は、はいっ...



僕は和ちゃんのお会計をする。




○:50円のお釣りです...



お釣りとレシートを彼女に渡す。




和:ふふっ.../// 待っていますね...///

彼女はそう言い残して、去っていった。







店長:○○君。終わりの時間だよ。


○:あっ...はいっ...




ちょうど、僕の勤務時間が終わったため、
私服に着替えた後、僕も家に帰った。
頭の中は和ちゃんのことでいっぱいだった。









○:追加するべきか...



僕は家のソファーに座って、葛藤する。
本当に追加していいものなのか。
ファンとしてどうあるべきか...



○:追加するか...




お礼がしたいと言っているのに断るのはなんか違う。
僕は彼女の連絡先を追加した。



"○○です"と送り、3秒後に返信が来た。


○:ここが私のお家です...



位置情報を彼女は送ってきた。



○:最低限の格好はしていかないと...



新しい服をクローゼットから取り出し
身だしなみをガチガチに整えて
僕は彼女の家に向かった。







和:ここに座ってください♪








僕は彼女の家に入った。




セキュリティーもちゃんとしており
明らかに家賃が高めな部屋だった。





和:飲み物用意しますね?






○:あ、ありがとうございます...



彼女は冷蔵庫に向かう。






○:...



心臓の鼓動がどんどん速まっている。
部屋を眺めたいけど
変態みたいで引かれそうだから
僕はスマホを触ることにした。


○:(明日のお話し会の内容を考えないと...)




理性を保とうと僕は頑張っていた。



和:○○さん?リンゴジュースで大丈夫ですか?



○:はい。大丈夫です。


スマホを見ながら、僕は返事をする。
アプリのメモ帳に明日のお話し会で話す内容をメモしていた。




○:(えっと...番組の内容でいいかな...)



和:桜と何を話すかメモしているんですか?



○:そうなんですよ...明日はお話し...って、えっ⁈






和ちゃんが僕のスマホを真横から覗き込む。





和:本当に桜が好きなんですね。




和ちゃんは微笑み、コップにジュースを注ぐ。




和:どうぞ。それと作り置きしてあった料理です。





僕の目の前にあるテーブルにはお皿とコップ。


和:私の手料理です!はいっ...あーん...







彼女はお肉を箸で掴み、僕の口へ運ぼうとする。



○:ちょっと...自分で食べられますから...!




僕は彼女から避けようとする。




和:お礼を受け取ってくれると言っていたのに...


悲しそうな表情をする彼女...




○:え、えっと...






どうすればいいんだ。これは。
ここで拒否したら、彼女を悲しませてしまう。
脳内で素早く結論を出した僕は



○:分かりましたよ...





大人しく、あーんを受け取ることにした。



和:あーん...///



○:モグモグ...美味しい...




和:良かった...///



ずっと惣菜とパンで済ませていたため
人の温もりを感じた気がした。




和:まだ食べます?



お箸でじゃがいもを掴み、上目遣いで尋ねる彼女。




○:は、はい...




ブーブー...




○:あっ...通知が...




僕は携帯の通知を確認する。



○:そうだ...今日はさくたんのブログじゃん...




すっかり失念していた。
僕は推しのブログを読み進める。



○:ふむふむ...



じっくりと読んでいたところ




○:えっ?何するんですか⁈




彼女は僕のスマホを奪い取った。




和:私の家なのに桜ばかり...




彼女は涙を流していた。



和:どうして...?私がいるのに...
私、○○さんに一目惚れしたのに...



○:ひ、一目惚れ...?




和:○○さんの笑顔が素敵でキュンとして...
一目惚れをしてしまって...
桜よりも私に目を向けてほしかったから
お家デートに誘ったのに...



○:和ちゃん...




和:ねぇ...○○さん...?





彼女はギュッと僕の手を握る





和:私じゃダメですか?



○: ...







和:○○さんとお付き合いしたいです...



涙で彼女の目は赤くなっていた。





和:お付き合いしていただけるのなら
私にハグしてください...







○: ...





気づいた時には僕は彼女を抱きしめていた...




和:オッケーということですね...?




○:ぼ、僕でよければ...


なぜだろう...
理性がとっくに無くなっているのか
拒否する気も起きなかった。



和:ふふっ/// 嬉しいです...///



○:うん...//





和:○○さん、大好きですっ...///






僕たちはしばらくの間、抱き合っていた。




・1ヶ月後



桜:ねぇねぇ、和?



番組収録後の楽屋で桜が話しかけてきた。


和:どうしたの?


桜:桜のお話し会にいつも来てくれるファンの人が
急に来なくなっちゃったんだけど...どうしたんだろう...?




ブログにも全然コメントしてくれなくて...


和:忙しいんじゃないの?
ほら、お仕事とか学業とか...




桜:そうだよね...忙しいかもしれないよね...
はぁ...ファンの人が離れていくのはやだな...
また来てくれないかな...




桜はしゅんと落ち込んでいた。




和: ...




そして、その日の夜




・和の部屋



和:桜のブログにコメントしてないの?




○:最近はしてないかも。5日に1回とか?


彼と私の作った手料理を食べながら話す。



和:お話し会は?



○:うーん...和と話すほうが楽しいから...///



彼は頬を赤くする。





和:良かった...///



○:ねぇ、、、和?




和:んー?



○:好きっ...///




和:私もだよ?○○...///



私たちは肩が触れ合うほどの距離で愛を伝え合う。


和:だーいすき...///



・桜サイド


桜:○○君...なんで...コメントをしてくれなくなったのかな...


桜はブログのコメント欄を見ていた。



桜:桜が何かしちゃったかな...?
はぁ...離れていってほしくないのに...(泣)



桜は一人涙を流していた。


桜:どうすればいいのかな...




To be continued...


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