見出し画像

『狼くんを落としたい』 第11話



定期試験 一週間前 放課後の教室

私たち、五重奏は○○君と一緒に勉強をしている。

菅:「数学が分からない…。」

五:「地理もヤバいよ。」

和:「全教科分かんない…。」

私たち三人は苦戦中

本当に今回のテストはヤバいです

その一方で…

桜:「この問題ってこの公式を使えばいいよね?」

〇:「そうだよ。」

桜は彼に分からないところを尋ねている。



幼い頃に交流していた影響だろうか
彼と親密な関係を構築している。

そして、桜と同等レベルに
親密な関係の人物が急に現れた。

一:「○○君、この問題できたよ♪」

〇:「美空は確実に成長しているね。」

そう。美空である。

彼と付き合ってはいないが
デートでかなり親密な関係になった。



私は彼女にそのデートで
撮った写真を見せてもらったが
○○君は見たこともない笑顔をしていた。

美空のデートプランが相当うまくいったのだろう。

私は美空のことが怖くなりました。

狼くんを落とす寸前まで追いつめているからね。

〇:「井上さん、菅原さん、五百城さんも
分からないところがあったら、いつでも聞いてね。」

彼は優しいから、私たちに気を遣ってくれる。


でも、なかなか聞くことが出来ない。

だって……

桜:「○○君、ここの問題について…」

一:「授業用ノート見せて♡」



この二人が彼を包囲しているから。
彼と親密でない私が疑問点を聞くのは申し訳ない。

そう思ってしまい
私は試験勉強が上手くいっていない。

同じ問題で何分も考えてしまう。

このままだと、私は赤点…

〇:「二人ともちょっと待って。」

和:「ここはこの公式…?うーん…。」

もう、本当に分かりません…

〇:「井上さん?」

彼が私の肩をポンポンと叩いてきた。

○:「さっきから同じところで止まっているよね?」

和:「うん……。」



〇:「美空、桜さん。今は井上さんに教えるから
分からないところはまた後で。」

彼は私の隣に椅子を移動する。

〇:「どこが分からないの?」

彼は近距離で話しかけてくる

和:「この問題というか…この単元が分からない…。」

〇:「じゃあ、基本的なところから教えるね。」

彼は丁寧に教えてくれた。
彼のおかげで疑問点がスーッと消えていった。

和:「ありがとう。」

〇:「分からないところがあったら
いつでも、聞いてね。」

菅:「○○君、私も分からないところがある!」

彼は咲月に呼ばれて、再び椅子を移動させる。

一:「○○君の教え方は分かりやすいでしょ?」

和:「うん。先生よりも遥かに上だと思う。」

本当に分かりやすかった。
彼のいい匂いも理解するためのスパイスになっている。

一:「私は今回の試験範囲を全部教えてもらったの
♪」

和:「でも、それは○○君の邪魔になるよね?」

今回の試験範囲は割と広い。
全てを教えるのには限界があると思う。

一:「○○君が“定期試験の勉強は
全て終わっているから、いつでも聞いてね“
と言っていたから大丈夫だよ!」

定期試験の勉強を全て終わっている⁈
まだ、定期試験まで一週間もあるのに?

ヤバすぎるでしょ。

一:「あ、和にも送ったほうがいいかな。」

美空はスマホを取り出す。

一:「○○君!和にパワポ送ってもいい?」

〇:「あー、うん。全員に送っていいよ。」

パワポ?

数秒後、美空から
五重奏のグループにファイルが送られてきた。

和:「何これ⁈」

菅:「すごい。」

五:「全部の範囲がまとまっている…。」

そのファイルには今回の試験の
全科目の解説がびっしり書かれていた。

それもすべてが分かりやすい。

和:「いつの間にこんなのを作ったの?」

〇:「美空から全問題について質問があったから
いちいち、説明するのも
面倒だと思ってまとめてみた。」

バケモノすぎます。
何で、こんな人がこの学校にいるの?

うちの学校にいるのは本当にもったいない気がする。

一:「このパワポのおかげで
今回は赤点を回避出来そう!」

五:「和は赤点を必ず回避しないとね。」

桜:「委員長が赤点で文化祭の
準備に参加できないのはさすがにね…。」

私の学校では定期試験の二週間後に文化祭がある。
赤点を取ってしまうと放課後に補修が入ってしまい
文化祭の準備に参加できなくなってしまう。

菅:「ちょっと、印象が悪いよね。」

〇:「ちょっとっていうか…かなり悪いよね。」

全員で私を追い込んでくるのですが…

でも、本当に赤点はダメ。

三年になってしまうと
文化祭の展示はやらないため
二年である今年がラストチャンス。

それに参加できないのは命を失うのに等しい。

私は青春を満喫したいのだ!!!

私は○○君の作った解説を見ながら
定期試験に向けて、必死に勉強した。



____________________________




定期試験終了から三日後

一:「和~!定期試験の結果が返ってくるね!」



この学校では全科目が一斉に返却される。
ここで文化祭の準備に参加できるのかが決まる。

○○君と集まって自己採点をして
赤点のラインは回避できていた。

でも、何があるか分からない。

秋:「今から試験の結果を返却していくね。」

真夏先生が出席番号順に返却していく。

五:「よかった…。」

一:「よし!」

茉央と美空は無事に回避できたみたい。
そして、私の番。

秋:「和。ちょっと話があるの。」

和:「……え?」



もしかして、私はやらかしました?



________________________________



昼休み

菅:「和の顔が本当に面白かった(笑)」

五:「すっごい、涙目だった(笑)」

一:「大・爆・笑!」

桜:「真夏先生が呼んでも
和は全然反応しなかったよね(笑)」

和:「弄らないでよ…。
私は本当に焦ったの…。」

無事に赤点は回避出来ました。

”そして、文化祭の準備に必要なものを
今日の放課後に買ってきてほしい”
と真夏先生に頼まれました。

先生も言うタイミングが本当に意地悪です。

桜:「今年の展示は何をやるの?」

和:「喫茶店。」

この前に決めたのにさくたんはもう忘れたの?

一:「メイド服を着ようかな?」

美空は人差し指を口に当てる。

菅:「完全に浮くけど、大丈夫?」

私は絶対に着ません。

一:「○○君に見せるの!」

多分、彼以外の男子が集まってくる気がするよ。

五:「でも、○○君は文化祭の当日はいないと思うよ。」

一:「え?」

桜:「去年は準備だけ全力で参加して
当日はずっと図書室にいたから。」

普通の人は準備をやりたくないと思うけど。

一:「じゃあ、準備の時にメイド服を…。」

それはもっとおかしいです。

というか、喫茶店に必要なものは何だろう?
放課後までにある程度決めておかなければ…。



____________________________________




放課後

和:「何を買えばいいの?」

〇:「画用紙はたくさん欲しいね。」

○○君と買い出しに行くことになりました。

彼は今年も準備に全力を注ぎ
当日は図書室で読書をするらしい。

和:「○○君は文化祭を
一緒に回ろうとか誘われないの?」



文化祭デートは乙女の憧れのはず。

〇:「誘われたけど、全力で断った。」

和:「美空とデートに行ったのに
文化祭だとできないの?」

あんなに楽しそうな写真だったのに。
完全にカップルに見えたよ?

〇:「流石に校内は勘弁。目立つから。」

○○君はイケメンランキングで首位だからね。
和:「そういえば、何で
文化祭の名称が夢川祭なのか知っている?」

文化祭の名称がどうしても気になっていた。

〇:「夢川という人が学校の土地を
保有していたかららしいよ。」

和:「へ~」

〇:「真夏先生に聞いたことだから
嘘を言っているのかもしれないけど。」

先生を虚言癖と思っているの?

____________________________________

私たちはお店につきました。

〇:「色画用紙は……あった。」

彼はカゴに必要なものを入れていく。

和:「あとはガムテープが必要かな。」

店内を回っていると…

彩:「あれ?お兄ちゃん?」

冨:「にゃぎ先輩も!デートですか?」



彩・奈央ペアがいました。

〇:「文化祭の買い出しだよ。デートじゃないから。」

彩:「私たちと同じだ。」

彩ちゃんたちも文化祭の
買い出しを頼まれたみたい。

和:「二人のクラスは何をするの?」

この二人は同じクラス。

彩:「私たちはメイド喫茶になりました。最悪です。」

めっちゃ、不機嫌そう。

和:「私たちも遊びに行こうかな?(笑)」

彩:「絶対にやめてください!」

彩ちゃんは私を本気で睨む。
顔が怖いです。

和:「冗談だから(笑)」

彩:「お兄ちゃんも来ないでよ。」

〇:「僕はずっと図書室にいるから、興味ない。」

彩:「そういえば、そうだったね。
でも、今年はそうはいかないみたいよ。」

和:「どういうこと?」

彩:「お母さんが文化祭に来るみたいだから。」

〇:「は……?」

彼の顔が真っ青になっていく。

彩:「さっき、メールが来た。
[帰国して文化祭を楽しむよ~!]ってね。」

彩ちゃんはメールを私たちに見せる。

〇:「文化祭の日に帰国とか
ふざけんなよ。あのババア。」

彼の言葉遣いが急に悪くなる。

母親のことが嫌いなの?

和:「○○君と彩ちゃんのお母さんって
ものすごい美人だよね?」

桜の家で写真を見た。本当に美人。
普通の人からすれば、非常に羨ましい。

彩:「私は大丈夫ですけど
お兄ちゃんにはスキンシップが激しくて。」

〇:「未だに一緒にお風呂に入ろうとか言ってくる。」

彼は相当嫌っている様子。
小川家は一緒にお風呂に入るのが慣習なのかな?

〇:「井上さん、もしも僕のお母さんが来たら
僕は委員会の仕事でいないと伝えておいて。」

嘘を言うのはよくないけど
○○君の頼みなら…私はちゃんとしないと。

勉強ではかなりお世話になったから。

彩:「私はどうなっても知らないからね。」

彩ちゃんは腕を組んで、そっぽを向く。

〇:「絶対、あのババアから逃げてやる。」


____________________________________



とある場所

〜♪ (着信音)

?:「もしもし。」

麻:「あ、私だよ。」



?:「麻衣さん。どうしましたか?」

麻:「今度、○○と彩の高校の
文化祭に行くために帰国するの。」

?:「文化祭ですか。」

麻:「もし、よかったら…あなたも来る?」

?:「是非。私も行きたいです。」

麻:「オッケー。じゃあ、また今度ね。」

?:「はい。失礼します。」

ツーツー…

?:「文化祭か…羨ましい。」

彼の写真を収めたい。

??は○○の写真を見ていた。


___________________________



文化祭前日

私たちは準備に大忙し。

当日までに間に合うのか非常に不安ですが
○○君が全力で準備をしてくれるので

多分、間に合うと思っています。

和:「頑張っているね!」



○:「明日はたくさん休めるからね。」

この人は完全に休む気です。

一:「○○君!明日のシフトで
これを着ようと思うの!」



美空が持ってきたのは、メイド服。
なんで、本当に用意しているの。

○:「それはちょっと辞めたほうが…」

私もそう思う。
メイド喫茶はこのクラスじゃないし。

一:「○○君はメイド服好きじゃないの?」

○:「好きとか嫌いとかじゃなくて。
かわいい格好をしていると客に何をされるか…」

去年も五重奏は客に絡まれました。
割と大変でした。
連絡先を何度も聞かれましたが
私たちは全て断りました。

一:「私のことを心配してくれているの?
本当に優しいね…///」

ちょろすぎるよ。

:「せっかく、持ってきたのだから
着替えて、準備してみたら?」

なぜか、○○君が美空のメイド姿を望んでいる。

和:「え?何を言っているの?」

○○君は美空のことが好きなの?

一:「くぅちゃん、準備してきます!」

美空はメイド服を持って更衣室に向かった。

和:「○○君、何でわざわざ…」

○:「面白いでしょ。」

頭のいい人の考えはよく分かりません…

〇:「美空がせっかく用意したのだから
ちゃんと見てあげないとね。」

和:「優しいね。」

私だったら、絶対に見ないよ。

〇:「優しいというか
アイドルのコスプレ姿を見たいのと同じ感覚かも。」

とりあえず、見てみようということかな?

和:「前から気になっていたんだけど
なんで、○○君はアイドルを好きになったの?」

きっかけはまだ聞いたことがなかった。

〇:「母親に無理矢理ライブに連れていかれたから。」

和:「お母さんの影響なの?」

〇:「うん。そこでさくちゃんに一目惚れ。」

和:「なるほどね。」

〇:「そのライブは近い席だったから
さくちゃんにレスをたくさんもらって
一目惚れしてしまった。」

そうだったんだ。
○○君のお母さんもアイドルが好きなのかな?

数分後・・・

_______________________________


一:「じゃーん!!」

美空はメイド服に着替えました。

モブA:「破壊力がヤバい。」

モブB:「鼻血出そう…。」

モブたちは興奮しているようです。
確かにかわいいけれども。

〇:「似合っているよ。」

彼は冷静に褒める。

一:「本当⁈今後はメイド服を制服にしようかな?」

ダメに決まっているだろ。

五:「美空、その恰好は何⁈」

菅:「なんで、今⁈」

桜:「メイド服を着ているの⁈」

三人がゴミ捨てから戻ってきました。

一:「○○君が私のメイド服を見たいと言ったから!」

若干、違うけど。

桜:「○○君ってそういう趣味があったんだ…」

桜は蔑むような目で見る

〇:「違うよ。美空がせっかく用意したから
もったいないなと思って。」

五:「その左手に持っている袋は何?」

茉央は美空の左手を指す。

一:「これ?予備のメイド服♪」

予備だと・・・

和・桜・菅・五:「………」

私たち四人の背筋が凍る。

一:「着ないのはもったいないよね~」

美空は悪い笑みを浮かべる

一気にヤバい状況になってしまった。

一:「○○君に決めてもらおうかな♪」

〇:「うーん……迷う…」

あなたも真剣に考えないで!

五:「メイド姿が貴重な人がいいのかも。」



茉央は私をチラ見して言ってくる

なんで、私を見るの?

菅:「そうだね。普段は
真面目なポジションの人のほうが。」



咲月もなんで私を見るの?

桜:「この機会しかないと思うよ♪」



三人とも私をチラ見しながら
○○君に助言をしています。

なんで⁈

〇:「チラッ…」

彼も私をチラ見してくる。

桜とかのほうがいいと思うよ
桜のほうが可愛いのは似合うから!

私は心の中で願ったが

〇:「じゃあ、委員長で。」

彼は無慈悲でした。

和:「ちょっと!!!○○君!!」

一:「決定~♪」

最悪すぎる!!!
私は本当に着たくなかったのに!

一:「和ちゃん、一緒にお着替えしようね~。」

桜:「○○君が決めたからね~。」

五:「○○君のご指名は羨ましい~。」

菅:「私も選ばれたかったな~。」

絶対、私を嵌めたよね⁈

和:「本当に最悪……」

メイド服は裸を見せるのと同じくらい嫌だ…

私はみんなに連行された。


________________________________________

数分後・・・

和:「恥ずかしい…///」

メイド服に着替えました。
穴があったら入りたい。

顔から火が出そう…///

〇:「かわいいね。」

彼に可愛いと言われるのはなんだか嬉しい。

一:「私にはかわいいと言ってくれなかったのに。」

美空は拗ねる。

○:「美空ももちろんかわいいよ。」

一:「ありがと♡」

菅:「せっかく、メイド姿になったから
和は必殺技をやれば?」

和:「あれは必殺技じゃない!!」

あれは前におふざけでやったやつ。

〇:「必殺技って何?」

彼が興味を示してしまった。

一:「めっちゃ、可愛いよ。」

菅:「絶対、見たほうがいい。」

五:「体中に電撃が走るよ。」

桜:「アイドル級の可愛さだよ♪」

4人は私を売ろうとしています。
完全に私を晒し者にする気ですよね。

○:「へー。」

彼は物欲しそうな目で私を見る。

そんなに私を見つめないで…

和:「分かったよ…やるから…///」

ここまで来たら、やるしかない…。

和:「ふぅ……」

これは○○君の要望…
彼を満足させればいい…この一回に集中する…

私は全力で必殺技を発動した。

和:「にゃんにゃんにゃぎ🐈」



○:「かわいい……。」

彼の感想はその一言だけ。

和:「……///」

なぜか、恥ずかしさよりも嬉しさのほうが勝ちました。

必殺技を発動した直後に
○○君以外のクラスの男子全員が
鼻血を出したみたいです。

鼻血を誘発するつもりではなかったのに…

こうして、文化祭の準備は無事に終わりました。


____________________________________



同時刻…とある場所

山:「起きて。そろそろ収録。」



美月は遥香の体をゆする。

遥:「ん……」

遥香は眠い目をこする。

久:「疲れがたまっているの?」



遥:「川を渡る夢を見ていた(笑)」

遥香はあくびをしながら笑う。

山:「相当疲れているね。」

美月は三途の川を想像している。

遥:「それより、さくとあやめはどこ?」



遥香が仮眠をしていた部屋には
先ほどまで、さくらとあやめがいた。

山:「二人なら、さっき外で話していたけど…」

ガチャ…(扉の開閉音)

久:「あ、戻ってきたよ。」

遠:「やっと、起きたんだ(笑)」

遥:「おはよう(笑)」

筒:「かっきー、さっき寝言を言っていたよ(笑)」

遥:「え、変なことは言っていなかったよね?///」

遥香の頬は急に真っ赤に染まる

遠:「教えない(笑)」

筒:「内緒(笑)」

二人は顔を見合わせながら、笑う。

遥:「ねぇ!///」


【第12話に続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?