『狼くんを落としたい』 第44話
○:「よく眠れた?」
一:「うん…でも、不安かも…
いよいよ、今日だって…思ったら…手が震えてきて。」
茶碗を持つ美空の手が震えていた。
一:「どうしよう…」
○:「大丈夫。」
僕は震える手に触れる。
○:「美空は過去問でも合格ラインを大きく超えていた。」
秋よりもさらに成長していた。
模試はなかったけどA判定なのは間違いなかった。
○:「不安にならないで。」
一:「うん…!」
美空は笑顔を見せる。
○:「2時間後には家を出るからね。」
一:「えっ?○○も会場までついてきてくれるの?」
○:「うん。和も駆けつけてくれるって。」
一:「ありがとう!心強い!」
○:「今はご飯を食べる。そして、リラックスする。」
一:「うん!いただきます!」
美空の手の震えはほぼ治っていた。
○○たちは部屋を出て会場である乃木大に向かっていた。
一:「寒いなぁ…」
外は雪が降っていた。
手袋をつけて、コートを羽織り
美空は万全の対策で歩いている
○:「あっ、桜と和だ。」
乃木大前の柵の前に2人が立っていた。
桜:「○○!美空!」
桜は僕たちに手を振る僕たちは2人の元に向かった。
一:「桜…和…」
和:「いよいよだね。」
一:「うん…」
美空は自信なさそうな表情だ。
和:「美空なら出来るから!自分を信じよう!」
○:「そうだよ。自分を信じる。美空なら必ず合格できる。」
一:「うん…!」
○:「もちろん。桜も合格できる。」
桜:「うん!」
○:「2人とも頑張って。僕たちは応援しているから。」
2人は必ず合格できるから。
桜:「じゃあ、行ってくるね。」
一:「○○!頑張ってくる!」
2人は乃木大内に入っていった。
○:「はぁ…2人とも合格するといいな…」
僕は白い息を吐く
和:「祈るしかないね。」
○:「そうだね。」
僕は和と2人きりになった。
○:「和は乃木芸大に受かったでしょ?」
和:「受かったよ。」
昨日、合格発表があったみたい。
余裕で合格していたみたいです。
和:「いろはも受かっていたみたい。」
○:「それはよかった。」
落ちる人が出るのが一番辛いからね…
和:「それで?この後、私と行きたい場所はどこなの?」
○:「あー…」
美空と桜が試験を受けている最中に
僕は和と行きたい場所があった。
○:「嵐噴岩の最深部だよ。」
和:「嵐噴岩は…ここから遠いよね?」
○:「うん。だから、タクシーで行こう。」
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・美空サイド
一:「(あぁ…緊張してきた…)」
手の震えが止まらない…
震える手で私は鉛筆を机に出す。
一:「(あっ…クマのキーホルダー…)」
私のペンケースには
○○とデートに行った時に貰った
キーホルダーが付いている。
懐かしいなぁ
一:「(うん…私は頑張る…)」
自分を信じて…
一:「(私ならできる…)」
あれだけやってきたのだから
一:「(よしっ…)」
決意を固めたら、自然と手の震えは止まった。
数分後に英語の試験が始まった。
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・桜サイド
桜:「(うん…私ならいける…)」
○○と出会って色々とあったけど
○○のおかげで私は成長できた。
桜:「(美空と2人で合格するんだ。)」
また楽しい日々を一緒に過ごしたい。
試験官:「始め。」
試験官の合図で英語の試験が始まった。
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・○○サイド
和:「こんなに険しい道を歩くの?」
○:「うん。最深部に行くには
ここを歩かないといけないから。」
○○と和はタクシーで嵐噴岩に着き
最深部に向かう為に岩道を歩いていた。
○:「この石板に手を触れて…」
石板に手を触れると岩が動き出す…
そして、岩のあった所に地下への階段が現れた。
僕と和は階段を歩いて、最深部に向かった。
和:「綺麗な湖…」
一年前と何も変わっていなかった。
本当に綺麗な湖が広がっていた。
龍:「太陽神…何しにきた…」
和:「ええっ…龍だ…」
龍が湖から顔を出す。
○:「好きな人が分かったことを報告しようと思って。」
和:「えっ?好きな人?出来たの?恋愛感情?」
○:「うん。恋愛感情だよ。」
龍:「そうか…それをわざわざ…
でも、どうして…和を連れてきた?」
和:「そうだよ!私は関係ないでしょ?」
○:「和も関係あるよ。
だって…和が居なかったら
僕は桜が一度死んだ時に壊れていたから…
和に支えてもらったから僕はこうして生きている。」
○:「恋愛についてもちゃんと分かった。」
和:「○○…」
○:「それに和は龍と話したことなかったでしょ?」
和:「そうだね(笑)」
和は桜を生き返らせる時にここに来ていなかった。
いや、来られなかった。
○:「もうここには来ない気がするから…」
○:「最後に話しておきたいなと思って…」
龍:「なるほどな…」
○:「にゃぎを和の元に行かせたのはあんたでしょ?」
にゃぎはただの野良猫ではないと
一年前にサクラ公園で和が言っていた。
龍:「そうだよ。和の力を借りないと○○と桜が
このまま危ない状況になると思ったからね。」
和:「でも…私は何も出来なかった…
桜を一度死なせてしまって…○○も恋愛で悩んで…
私が一番最初に全てを知ったのに…何も出来なかった。」
○:「和、それは違うよ。さっきも言ったけど
和が居なかったら僕は何も気づかなかった。」
和:「うん…」
○:「和のおかげだよ…本当に。」
彼女には感謝しかない。
龍:「いつ好きな人に告白するんだ?」
○:「彼女が高校の卒業式を終えてからかな。」
今は受験で手がいっぱいだから…
和:「告白の台詞とかは考えたの?」
和はニヤニヤしながら僕を見る。
○:「考えていない。その場で出てくると思っているから。」
和:「意外かも…○○は念入りに考えると思っていた。」
確かに昔の自分だと徹底的に考えるだろう。
でも、今は違う。
○:「台詞は自然と溢れ出てくる。」
○:「この半年で彼女への想いは
どんどん高まっているから…
彼女とずっと一緒に居たい。
彼女と笑っていたい。彼女とキスしたい。」
和:「最後が酷いよ(笑)」
○:「しょうがないじゃん…」
○:「それだけ想いが高まっているから…」
龍:「本当に好きな人を見つけたんだな…」
○:「うんっ…見つけた。」
本当に僕は彼女のことが大好きだ。
龍:「1つ聞くが…仮に桜や和と
血が繋がっていなかったとしたら○○はどうした?」
和:「…」
○:「そんなの誰にも分からない…愚問だね…」
龍:「そうだな。」
○:「じゃあね。もう2度と
ここに来ることはないと思う。
僕は生きたいように生きるから。和、行くよ。」
和:「う、うん!」
僕たちは最深部を後にした。
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最深部を出て、再び険しい道を歩く
和:「私ね…これで良かったと思っているの。」
○:「…」
和:「だから、気にしないで。」
○:「うん…」
和:「さて…美空と桜の試験が終わるまでは
○○の部屋でゴロゴロするぞ〜!(笑)」
○:「はいはい(笑)」
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数時間後
美空と桜は試験が終わり、僕の部屋に来た。
そして、僕の部屋には和、咲月、茉央もいた。
菅:「2人ともお疲れさま!」
五:「どうだった?」
桜:「私はいつも通りだよ。」
桜はさくさく解けたみたい。
一:「やらかしたかも…
この問題はこっちが正解な気がする…」
美空はずっと問題用紙と睨めっこしていた。
和:「○○が採点してあげたら?」
○:「美空が嫌だって言うから。」
一:「○○が採点したら
合格か不合格か分かっちゃうもん…
だから、合格発表の日までは見ないで!」
和:「合格発表はいつなの?」
○:「2.17。」
和:「げっ…私の誕生日と被っている…」
○:「だから、和の誕生日を祝えるか分からないよ。」
2人のどちらかが落ちたら
お祝いする気分にならないだろうから。
和:「絶対受かってよ!私の誕生日お祝いしてよ!」
菅:「ちゃっかりしているね〜」
五:「どうせなら今からお祝いすれば?」
○:「ありだね。2人とも受験が終わったし…」
ということで急遽和の誕生日会をする事に…
※まだ誕生日を迎えていない。
一:「にゃんにゃん〜?」
和:「にゃぎ…///」
美空のテンションも戻っていた。
一:「桜もやって?」
桜:「にゃんにゃんさくっ…///」
一:「可愛い〜!!」
和:「っていうか何で猫耳がこの部屋にあるの?」
○:「美空が勉強している時にこれをつけていたから。」
和:「はぁ⁈」
一:「気分を変えるためにね?猫耳をつけて勉強していた!」
この部屋にはウサ耳もあります…
ね?美空は面白いでしょ?
一:「和もノリノリでにゃんにゃんやってくれるよね?」
和:「そんな事ないよ…///」
菅:「意外とノリノリかもね?」
五:「文化祭の準備の時もそうだったよね。」
一:「和は意外とこういうのが好きだから!
○○も和にたくさんやらせよう!」
和:「よく喋るなぁ!お前は!」
○:「ししっ(笑)いや〜、何をやらせようかな〜(笑)」
和:「○○も美空の悪事に乗らないで!」
桜:「ふふふ(笑)」
勉強のことを全く考えない時間は久しぶりだった。
みんなと喋るのは本当に楽しい。
そして…その中心にいつもいるのは彼女…
彼女のおかげで僕は笑っていられる
僕は彼女のことが本当に好きだ。
そして、2.17
乃木大の合格発表日がやってきた。
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・○○の部屋
彩:「あと3分後だよね?」
○:「うん。」
あと3分後に試験の結果が出る。
和:「美空さ〜ん、起きていますか〜?」
桜:「美空、大丈夫?」
一:「不安だよ…」
美空はネガティブになっている。今日の朝からこんな状態。
○:「大丈夫だから。」
一:「うん…」
ちなみに咲月たちはお仕事のため、この場にはいない。
○:「あと2分…」
一:「○○が私の結果を見てよ…」
美空がスマホを渡してくるが
○:「嫌だ。自分で最初に見なきゃ。」
僕はスマホをすぐに彼女に返す。
一:「うん…」
○:「大丈夫だから。美空は合格しているから。」
僕は美空の手をギュッと握った。
そして、1分前
一:「25243…」
美空は受験票を見ている。
桜:「24173…」
桜も受験番号を確認していた。
和:「10時!時間になったよ!」
2人は和の声を聞いて
結果を確認するページにアクセスした。
彩:「こっちもドキドキしてきた〜」
○:「アクセスできた?結果はどうだった?」
僕は2人に尋ねた。
桜:「受かっていた!!」
桜は合格していた。
でも…美空は…
一:「おかしいな…アクセスできない…25423…」
スマホと睨めっこしていた。
一:「なんで…アクセスできないの…?」
和:「25423じゃなくて、25243でしょ?」
和は美空の受験票を確認する。
一:「…あ、そうだった(笑)」
おっちょこちょいだな…
和:「間違えずに入力しなよ?」
一:「うん!25324!」
○:「いや、違うから!25243!」
何回間違えるの?この子は。
一:「2…5…」
美空は慎重に番号を入力している。
○:「243ね。」
一:「うん…2…4…3…
あとは自分の電話番号を入れて…アクセス…!」
アクセスした数秒後に
一:「あっ…」
美空は止まっていたが
一:「う、うぅ…」
美空はすぐに泣き出してしまう
和:「結果は…?」
彩:「ダメでしたか…?」
一:「うわぁーん…」
完全に泣いている。号泣状態。
桜:「落ちちゃったのかな…?」
桜は心配そうに美空を見つめる。
○:「うーん…美空、スマホ見せて…」
一:「うんっ…」
美空からスマホを借りて僕は画面を見た…
そして、そこには…
○:「合格って書いてあるけど…」
合格の2文字がはっきりと表示されていた。
桜:「えっ⁈」
和:「本当だ…」
彩:「合格だ…」
3人も美空のスマホを確認する。
一:「頑張ってきてよかったぁ…」
美空は涙をボロボロ流している。
和:「紛らわしいの!!」
本当にそれです。完全に落ちたのかなと思った。
泣くタイミングが完全に落ちた時なのよ。
一:「ごめーん(涙) 嬉しくて…これは嬉し泣き(涙)」
桜:「涙を拭いたほうが…」
彩:「ティッシュ!」
彩は美空にティッシュを渡すが…
彩:「ちょっと!バカ!」
一:「ふきふき…」
美空は彩の服の袖を使って、涙を拭いた。
彩:「まあ…今日は許す…
美空先輩が受かったから…これは必要経費…」
一:「うぅ…受からないと思っていた…」
美空の涙は拭いても、どんどん溢れ出てくる。
○:「美空が合格出来て、本当に良かった。」
一:「○○…!!」
美空は僕の胸に顔をうずめる
一:「ありがと…本当にありがとう…」
美空の涙で僕の服が濡れていく。
でも、そんな事は気にしない。
僕も嬉しかった。彼女を支えることができてよかった。
○:「これからも一緒に居られるね。」
一:「うん…!!!あっ、お母さんや咲月たちに
合格したことを連絡しなきゃ!」
美空はスマホを持って、母親に電話をかける。
一:「あっ、お母さん!受かったよ!」
○:「はぁ…」
ホッとして肩の力が抜けた。
和:「自分が合格した時より嬉しそうだね。」
○:「えっ?そうかな?」
彩:「喜びを隠しきれていないよ?」
確かに嬉しいけど…そんなに分かりやすい…?
桜:「好きでしょ…?美空のこと…」
桜が僕に耳打ちしてきた。
○:「うんっ…」
桜:「いつ…告白するの…?」
○:「高校の卒業式の日の夜に
ある場所で告白しようと思っている。」
彩:「ある場所?どこどこ?」
○:「言うわけないでしょ。」
言ったら確実に尾行される。
和:「本当に頑張ってね。
美空は○○の気持ちに気づいていないから。
あの子は○○に好かれると一ミリも思っていない。」
よかった…
和:「あんなに好きで
○○にアピールしまくっていたのに
今は、だいぶ遠慮している。」
和:「好きな理由とかをちゃんと伝えなよ。」
○:「分かっている。」
今なら美空のことを好きな理由も全て説明出来る。
一:「咲月〜!受かったよ!
うん!桜も受かった!
○○と一緒にキャンパスライフを楽しめる!
○○と友達で居られるよ!」
○:「…」
友達か…
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時は進み…3月上旬
一:「いや〜卒業式でたくさん泣いちゃった〜」
桜:「真夏先生が一番泣いていたよね(笑)」
和:「本当にそれ!(笑)」
私たちは卒業式後に○○の部屋に来ていた。
○:「卒業式か…いいなぁ…」
一:「そっか…○○は卒業式なかったもんね…」
飛び級で乃木大に合格した彼は卒業式がない。
和:「私、真夏先生から○○の卒業証書もらっているよ?」
○:「えっ?本当に?」
和:「うん。真夏先生が作ったの。○○にあげたいって。」
和は○○に卒業証書を渡す。
○:「今度、真夏先生にも挨拶しに行かないと…
かなり…迷惑かけたから…」
真夏先生のおかげで私と彼は同じクラスになれた…
私もお礼を言わないと…
○:「あっ…そろそろ行かなきゃ…
ごめん。夜には戻ってくるから。」
彼は番組の収録があるみたい。
流石、人気者!
SNSもフォロワー100万人超え!
○:「冷蔵庫に食べ物入っているから
好きに食べていいよ。でも、夜の分は残しておいてね。」
一:「は〜い!」
彼は部屋を後にした。
一:「何を食べようかな〜」
私は冷蔵庫を開ける
和:「あとで咲月たちも来るんだよね?」
一:「撮影が終わったら来ると言っていたよ!
夕方くらいにはここに来るって!」
今日は私たちの高校卒業記念でパーティーをする。
一:「彩はもうすぐここに来るみたいだよ!
たくさん、愛でてあげる!」
和:「嫌がるでしょ?(笑)」
一:「最近は嫌がっていないかも!」
ピンポーン…
インターホンが鳴り
桜:「あっ、彩だ。」
桜が玄関の扉を開ける。
彩:「ケーキを買ってきました〜♪」
彩はリビングに来て、袋を見せる。
一:「ナイス!彩!」
私は彩の体を抱きしめる。
彩:「いや〜!!」
彩は私の手を剥がそうとする
和:「嫌がっているじゃん(笑)」
一:「そんな事ないよね?彩?」
私は彩の目を見て尋ねた。
彩:「そんな事…ある…でも、少しだけ…嫌かも…」
一:「ほら!嫌がっていない!」
桜:「少しは嫌がっているよ(笑)」
一:「ほんの少しでしょ?ね?彩?」
彩:「30%くらい嫌だ…」
一:「30%..少しじゃない!」
だいぶ嫌がっていた…
和:「はい…離れる…」
和が彩から私を剥がす。
一:「悲しい…」
彩:「でも、手を繋ぐだけならいいよ…」
一:「素直じゃないな〜///」
私は彩と手を繋いだ。
彩:「…///」
彩は照れながら私の手を握る。
かわいい〜!!!
桜:「今から彩が持ってきたケーキを食べようよ!」
和:「私が切りまーす♪」
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・○○サイド
遥:「○○と共演出来るなんて…嬉しい…♪」
楽屋で姉が僕を抱きしめてきた。
○:「苦しいし…そんなに絡むことはないから…」
悠:「そうだよ?今日はただVTRを観る番組。」
悠理姉も同じ楽屋です。
遥:「でも、嬉しいもん…///」
遥:「今日、収録終わったら、一緒にご飯食べに行こうよ!」
○:「ごめん。無理。」
遥:「あっ…高校卒業記念の
パーティーがあるんだった…私も参加したいなぁ…」
○:「パーティーに参加するのは
構わないけど…僕は収録後に
やらなきゃいけない事があるから…」
遥:「やらなきゃいけないこと?」
悠:「何かあるの?」
○:「今日、告白するつもり…」
遥:「そっか…!大事な用事だね…!成功を願っているよ!」
悠:「頑張ってね!」
○:「うんっ…」
僕は胸の高鳴りを抑えながら、収録に臨んだ。
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・美空サイド
夕方になり、咲月、茉央、奈央が遊びにきた。
菅:「乃木大に受かって、2人は何をするの?」
一:「何をしようかな…?」
桜:「私は悠理姉と一緒に過ごすかな。
悠理姉は優しいし…だから、悠理姉の部屋に住むと思う!」
桜:「このホテルは乃木大から近いからね♪」
五:「美空もここのホテルに住むの?
ほら!美空の部屋も一応あるでしょ?和の部屋もあるよね!」
和:「あるよ。
でも、私はここに引っ越すかどうか迷っている。
美空はどうするの?」
一:「私は…」
このホテルに住みたい…
この部屋にいたい…○○と一緒に過ごしたいけど…
一:「そっか…この部屋から引っ越さないといけない…」
迷惑だよね…受験も終わったし…
私は居候の身だから…
冨:「この部屋に住み続ける選択はないんですか?」
一:「無理だよ…彼女でもないのに…私は○○の友達だよ?
それに…○○にはいつか彼女が出来るだろうし…
その時に女友達と一緒に住んでいると知られたら…」
○○は悪く言われると思う…
一:「あれ…?○○からメールだ…」
○○からメールがきた。
菅:「なんて?」
一:「19:00に亜楼所に来てって…
最初のデートの時に座ったベンチに
座って待っているって…美空と2人きりで話したいって…」
何だろう…2人きりで話したいって…
一:「追い出されるのかな…」
和:「19:00ってあと1時間くらいだよ?
もうここを出ないと間に合わないと思うよ?」
桜:「電車の時間もあるから。」
このホテルの最寄駅から
亜楼所までは約20分かかる。
一:「何の話だろう…私、なんかやらかしちゃったかな…?」
私は急いで部屋を出た。
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・和サイド
美空が部屋を後にした。
和:「なんで、あの子は鈍感なの?」
追い出されるわけなくない?
菅:「本当にそれ(笑)」
五:「美空は意外と恋愛初心者だからね〜」
冨:「どう考えても告白の流れなのに。」
桜:「みんな、言い過ぎだよ(笑)」
彩:「いやいや!鈍感すぎる!」
和:「まあ…無理もないかも…
美空は周りの可愛い子を引き立てようと頑張るから
自分の可愛さに全然気づいていない。」
美空も可愛いのに。
菅:「それに加えて…○○はダントツでモテるからね。
収録とかでスタジオに行くと○○君かっこいいよね〜と
他の出演者の人が言っている。」
五:「連絡先欲しい〜と言っている人もたくさんいたよ。」
彩:「お兄ちゃんは連絡先あげるんですか?」
五:「仕事の関係上あげているみたいだけど
変に絡まれたくないから
○○は返信のスピードを遅らせているみたい。」
桜:「へぇ〜、そうなんだ。」
私たちと連絡を取る時は早めに返信が来るのに…
菅:「デートの誘いはずっと断っているけど
9月の頭くらいからかな?断る理由が変わったの。」
和:「理由が変わった?」
菅:「前は恋愛をしたくないと言っていたけど、
9月の頭からは早く家に
帰らなきゃいけないから無理と言っていたみたいだよ。」
和:「それって美空に勉強を
教えないといけないからだよね?」
菅:「そうだと思う。」
五:「○○は美空の事が本当に好きだよ。」
冨:「○○さんはどういう風に告白するんだろう…」
桜:「シンプルに好きです!とか?」
彩:「気になるな〜」
和:「祈ろう…○○と美空が幸せになるように。」
私たちは心の中で祈った。
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・美空サイド
一:「ここら辺だったよね…?」
○○が指定した場所の近くに来た。
辺りは真っ暗。街灯の光が目立っていた。
一:「あっ…」
○:「…」
視線の先に○○がいた。
○:「美空…」
○○も私の姿に気づいた。
一:「2人きりで話したいって何…?
わざわざ、亜楼所に呼んで…」
私は○○の隣に腰をかける。
○:「懐かしいよね…
僕と美空はここで初めてデートをした…」
彼は夜景を見ながら呟いた。
一:「うん…懐かしい…」
本当に懐かしい。
あのデートの計画を立てるのに私は何日もかけた。
唯一、計画外だったのはあの船で私が泣いてしまったこと。
○:「船に乗っていた時に
美空が泣きながら悩みを話してくれた。
だから、僕は美空を手伝おうと思った。」
泣くつもりなんてなかった。
楽しいデートにするつもりだった。
でも、それが良かったのかな。
本心で話せたから彼とこんなに距離を縮めることができた。
彼と友達になれた。
そして、乃木大に合格することができた。
○:「美空が合格して本当に良かった。」
彼は微笑みながら私を見つめてきた。
○:「ねぇ…あの観覧車に乗ろう?」
彼はライトアップされた観覧車を指す。
一:「うん…!」
そして、私と彼は観覧車に乗った。
初めてのデートでも乗ったあの観覧車に……
【第45話に続く】