『狼くんを落としたい』 最終話
○○と美空の結婚式から2ヶ月後…
桜:「ここが玄関かな?」
和:「多分…インターホンがあるから…」
私は桜と一緒に○○の新居。夢川家の別荘に来ていた。
インターホンを押すと
○:「あっ…2人とも。」
○○が玄関口から出てきた。
桜:「玄関を探すのに10分くらいかかった(笑)」
和:「前よりも建物が明らかに大きくなっているよね。」
工事する前よりも50倍の広さになっているらしい。
猫:「にゃあ…」
○:「あっ…にゃぎ…」
私の肩に乗っていたにゃぎが○○の頭に乗り移る
和:「どんな感じになっているのか
にゃぎも興味があるみたいで(笑)」
駄々をこねたので連れてきた。
○:「そっか。いいよ。2人とも…全部案内するよ。
工事前とは大きく変わっているから。」
桜:「楽しみ〜」
和:「私のアトリエもあるよね…」
私たちは建物の中に入った。
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桜:「キッチンが広いね!!」
工事前に比べて、5倍広くなった。
和:「天才経営者になっても料理人を雇わないの?」
現在、彼の世間からのイメージは天才経営者。
○:「雇っていない。料理は息抜きだからね。
それに美空の口に合うのは僕じゃないと分からないし…」
彼は大学卒業後
父の事業の半分を引き継いだり、新たな事業を始めた。
テレビやラジオのお仕事も少しずつ減らしている。
彼はかなり稼いでいる。
私にはよく分からないけど経営手法が凄いみたい。
やっぱり、彼は天才だ。
和:「そういえば、美空は?」
美空の姿が見当たらない。
美空はいつも彼にずっとくっついているのに…
○:「美空は…」
一:「あっ…和…桜…!」
美空が近くの階段から降りてきた。
○:「ちょっと、寝ていなくていいの…?」
○○は美空の体を気遣う。
一:「大丈夫だよ。少し気分良くなったから。」
一:「それに和と桜に会うのは久しぶりだからね…!」
○:「無理しないでよ…また吐いちゃったら困るから…」
○○は美空の手を握った。
和:「もしかして…それって、つわり…?」
一:「うんっ…
一昨日、病院に行ったら…赤ちゃんがいるよって…」
美空はお腹をさする
桜:「おめでとう!男の子?女の子?」
桜は美空のお腹を眺める。
一:「まだ性別は分からないよ…
でも、女の子がいいなぁ…名前を彩に出来るし!」
まだ言っていたんだ…趣味が悪い。
○:「彩にはしないからね。」
○:「関係が深い友達と同じ名前にはしない。
呼び方に困る。」
一:「ケチ…」
美空は頬を膨らませる。
和:「でも、よかったね…赤ちゃんが出来て…」
本当によかった。
一:「うん…!頑張った甲斐があるよ…///」
美空は顔を赤くしながら、自分のお腹を撫でた。
○:「そろそろ…次の部屋に案内するよ。
ここで時間を潰していたら日が暮れてしまう。」
一:「私も案内するね!」
ということで○○の家のツアーが再開です。
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・寝室
和:「ここが寝室?」
一:「そう!ふかふかのベッドだよ!」
桜:「○○はここで寝るの?」
○:「美空と一緒に寝ているよ。
といっても、僕と一緒に寝ている時間は
3時間くらいだけど…」
彼はショートスリーパーだからね…
・お風呂
桜:「サクラの絵だ!」
バスルームの壁にはサクラの絵が描かれていた。
○:「これは瑛紗さんが描いてくれた。」
和:「私に頼まなかったんだ…」
ちょっと、悲しい…
一:「和は忙しかったから。機会があれば、何か描いて!」
・美空の部屋
和:「料理本や子育ての本ばかり…」
本棚には本がたくさんあった。
一:「○○に頼らずに出来ないといけないと思って!」
桜:「どのくらい読んだの?」
一:「え、えっと…3冊…」
和:「ほとんど読んでいないじゃん(笑)」
○:「僕は全部読んだよ。」
この人、ヤバすぎる…
・○○の部屋
和:「パソコンと机しかないね…」
彼の部屋はシンプルだった。
○:「まあ…パソコンがあれば、今の仕事は完結するから…」
桜:「本はないの?○○は本が好きなのに…」
○:「地下の書斎に本はまとめてある。」
工事前のこの別荘の地下には書斎があった。
夢川家の遺伝子を持つ者しか扉を開けられない場所。
○:「地下の書斎だけはそのままになっている。
地下には財宝もあるから扉を残しておかないとね。」
まだ、私はそこへ行ったことがない。
和:「仕事はここでしているの?」
○:「うん。美空の体調もあるから
しばらくはここでずっとやろうかなって。
怜奈さんと悠理姉に言ってある。」
彼の経営する会社には彼の知り合いがたくさん働いていた。
和:「怜奈さんや悠理さんはここに出勤してくるの?」
○:「たまにだけどね。今日は来ていないよ。」
彼の知り合いの部屋も新しくしたこの建物にはある。
そういった部屋には勝手に入らないほうがいい。
○:「今日は入れる場所だけを案内するから。
さあ…次の部屋に行こう。時間がなくなる。」
・バッティングセンター
和:「どうして、この部屋を作ったの?」
明らかにいらない部屋だよね。
○:「史緒里さん、柚菜さんが欲しいと言ったから…
あと、彩もか…」
桜:「○○は使っているの?」
○:「たまに使っている。」
一:「私もたまに使っているよ!ストレス発散のためにね!」
・爬虫類がたくさんいる部屋
和:「これは誰の要望なのか分かる(笑)」
これを要望する人は一人しかいない。
○:「アル姉が飼いきれなくなった子たちを
ここで飼っている。」
桜:「餌やりが大変でしょ?」
○:「そうでもないよ。
ペットはここしか居ないから。飼いやすい。」
・トマト農場
和:「これは彩の要望だよね?」
大量のトマトが栽培されていた。
○:「うん。基本的に自動で栽培しているよ。
まだ、植えたばっかりだから収穫は少し先かな。
収穫できたら、2人にもあげるよ。」
その後も色んな部屋を周った。
ゲーム部屋や屋内プール。
ユニークな部屋がたくさんあった。
友人の要望らしい。
そりゃ、こんなに広くなるよねと思わされた。
そして、○○は最後に私用の部屋に案内してくれた。
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・アトリエ
○:「和は自由にここを使っていいよ。」
私専用のアトリエだ。
和:「絵の道具が全て揃ってある!あっ、もしかして…
数ヶ月前に何が欲しいか聞いてきたのは…」
○:「うん。ここに何が欲しいのかなと思って。
僕は絵のことが全く分からないから。」
やっぱり、優しい。
それにしても、私が欲しかったもの全部が揃っているなんて…
○:「たまにここに来て、絵でも描いてね。」
和:「もちろん!これだけの道具が部屋を使わないのは
もったいないからね!今から描こうかな。」
と言ったその時…
一:「○○…」
美空が○○に寄りかかる…
○:「大丈夫?どうしたの?」
一:「ちょっと、めまいがして…」
美空は目を抑えていた。
○:「はぁ…だから、
ゆっくり休んだほうがよかったのに…
今から寝室に連れて行くから。」
一:「うん…ありがとう…」
一:「2人ともごめんね…
せっかく、来てくれたのに…あまり話せなくて…」
桜:「ううん!また元気になったら
たくさん、話そう!」
和:「体調が安定したら、また呼んでよ!」
体調第一だからね。
一:「ありがとう…」
お腹の子と美空が無事でいるのが一番良いからね。
○:「2人ともあとは自由に部屋を周ったりしていていいから。
帰る時になったらまた連絡して?」
桜:「はーい♪」
和:「了解!」
○○は美空を支えながら、アトリエを後にした。
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和:「絵を描こう〜」
私は椅子に座り、イーゼルに画用紙を乗せる。
猫:「にゃあ…」
にゃぎは私の肩に乗る。
私とにゃぎはあの時から、ずっと一緒にいた。
そして、私は素早く絵を描く。
桜:「和は凄いよね…」
絵を描き始めて、数分後に桜は口を開いた。
和:「んー?何が?」
桜:「絵が上手くて乃木芸大を首席で卒業
歌も上手いし…運動も出来て、可愛くて
アーティストとして人気だから…」
私はSNSに絵を載せていた。
NEGAのジャケ写をデザインする事もあった。
○○が私をPRしてくれたおかげで私は活躍できている。
和:「桜のほうが凄いよ。乃木大を首席で卒業して…」
桜:「私はそれだけだもん…
特に目立ったこともしていないし…」
和:「嘘つかないで!(笑)
SNSのフォロワー数知っているよ!」
桜は週末のひと時を写真で撮って、SNSに上げていた。
それだけでフォロワー数は10万人を超えていた。
桜:「○○に比べたら…私は少ないから(笑)」
和:「顔出さないの?」
桜は可愛いから、フォロワーも増えるはず。
桜:「自分の顔を出すのがちょっと怖くて…
今は、まったりと○○の
お仕事のお手伝いをしながらSNSを更新するかな。」
和:「そっか。」
桜は○○の仕事の手伝いをしていた。
桜:「あのさ…」
桜の声のトーンが低くなった…
和:「ん?」
桜:「結婚式の直前に和が話してくれたこと…」
和:「…」
桜の一言で私の鉛筆の動きが止まる
桜:「驚いた…」
和:「うん…驚いたよね…驚かせてごめんね…」
〜〜〜〜〜〜〜〜
時は遡り…○○と美空の結婚式直前
遥:「どうしたの?
結婚式の直前に私たちを呼び出して。」
悠:「それにこの面子って…」
ア:「夢川家の…」
○:「うん。」
桜:「でも、どうして…和もここにいるの?」
和:「…」
○:「はい。この暗号。」
No.3 『I-N_NT-Rvr_nly-yngr-Sstr_Ⅱ.ST_B』
○○は暗号の載った写真を4人に見せた。
○:「みんな、暗号の解き方は覚えているよね?」
悠:「待って…和ちゃん…誕生日と血液型は…?」
和:「誕生日は2.17。血液型はB型です。」
桜:「あっ…!!!」
ア:「えっ…嘘でしょ…」
遥:「最後の遺伝子って…」
4人は気づいた。
○:「意味不明なアルファベットは母音を入れると完成する。
NOT-River。Only younger Sister。そして、I-Nは…」
和:「私の名前を表す。」
Inoue Nagi
遥:「本当なの⁈」
悠:「たしかに暗号通りだけど…」
ア:「どうして、今、そのことを…」
桜:「○○はいつから知っていたの…?」
4人は動揺していた。
○:「それを含めて、今から話す。」
○:「僕が高2の2.17。和に言われたんだ。
“○○が結婚するまでは私がにゃぎに言われたことは
誰にも話さない”って。だから、今から話す。」
和:「うん…」
○:「僕は桜を生き返らせるために
夢川家の別荘にいた時に全ての暗号を解いた…」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
高2の2.17 早朝 サクラ公園
○:「それより…和に聞きたいことがあって…」
和:「どうしたの…?」
○:「和は夢川家の秘密をどこまで知っていたの?」
○○は真剣な眼差しで私を見つめてきた。
和:「…」
○:「暗号も解けたよ…」
○○はNO.3の暗号を私に見せてきた。
和:「…」
話すかどうか迷っていたとき…
猫:「和…話してもいいよ…」
私の肩に乗っていたにゃぎが許可してくれた。
和:「うん…」
○:「やっぱり…和だったんだね…」
和:「そうだよ…私も夢川家の遺伝子を持っている。
私の本当の父親は夢川☆☆。動物の声も聞こえるし…
桜が倒れている映像も見た。」
○:「じゃあ…和は僕の…」
和:「私の本名は夢川和。
そうだよ…○○の妹。血の繋がった実の妹。」
○:「でも、いつから知っていたの?」
和:「○○と遥香さんが再会した翌日の早朝。
○○が寝るために帰って、私がこの公園で
一人になったことがあったでしょ?」
○:「うん…あった…アル姉と初めてちゃんと話した日…」
和:「その時ににゃぎが私の前に現れたの。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
和:「でも、かわいいから、何でもいいかな…」
私は猫ちゃんを撫でる
猫:「にゃあ…」
和:「ふふっ…///」
癒されます!!
猫:「和…話を聞いてほしい…」
和:「……………………え?」
突然、猫が喋った。
辺りには人が誰もいなかったからすぐに分かった。
猫:「僕の声は君にしか聞こえない。
いや、夢川家の遺伝子を持つ者しか聞こえない。」
和:「どういうこと…夢川家って…○○の本当の苗字…
それに私が聞こえているってことは…」
猫:「君は夢川☆☆の遺した遺伝子の1つ。
○○の実の妹だよ。」
和:「ちょっと待って…私の両親は…?」
猫の言っていることが理解できなかった。
猫:「母親は和のお母さん。父親は夢川☆☆。」
和:「えっ…それって…不倫…」
猫:「不倫じゃない。
和のお母さんは☆☆に頼まれて、君の遺伝子を受け取った。
和のお母さんと☆☆は幼馴染だった。」
和:「…」
猫:「今から話すことは本当の事だ。」
そこで私は知った。
悠理さんが遥香さんと双子ということ
夢川家の全ての秘密も伝説も
夢川☆☆が遺伝子を残したこと
そして、その遺伝子が誰なのかも…
全て知った。
和:「嘘でしょ…桜と○○は血が繋がっているの…??」
猫:「うん。」
和:「じゃあ…2人は結婚…
麻衣さんがくっつけようとした計画は…」
猫:「失敗だよ。○○は友達を作れたけど
今のままだと、全てが崩れる可能性がある…」
和:「そんな…どうすればいいの…?
2人に伝えてはいけないの…?」
猫:「ダメだ。○○が暗号を解かないと。」
猫:「○○が自分で気づかないと意味がない。
だから、和…
○○の相談相手になって○○が恋愛について…
桜のことに気づく手伝いをしてあげてほしい。」
和:「うん…分かった…」
猫:「この事を君に話すつもりはなかった。」
猫:「でも…○○の相談相手…
友達として接する君を見て話すことを龍は決めた。」
和:「本当は私が苦しむ立場だったよね…
私は○○が好きすぎて…○○を押し倒して…
私と彼は一度…体を重ねた…」
猫:「うん。正直どうなるかなと思った。」
猫:「君と○○が付き合う可能性も十分あった。
○○は君のことを綺麗な人とたまに見惚れていたから…
○○に気づかせてあげてほしい。」
猫:「○○のそばで見守ってあげてほしい。
○○が彼女を作るまで…
そして、○○が結婚するまでは…」
その日から私は○○と桜を見守っていた。
○○が桜以外の誰かと結婚するまで
全ての秘密を隠すことにした。
○○と桜の結婚に関する話を
他の人がしている時、複雑な気持ちだった。
幸せそうにしている2人を見て私は辛かった。
現実を知ってしまったらどうなるのか本当に不安だった。
そして、その不安は的中した…
和:「頭が痛い…」
12.25 私は激しい頭痛に襲われた…
和:「⁈」
桜が倒れている映像を鳥からの視覚共有で見てしまった。
和:「にゃぎ…何…今の…桜…血を吐いて…」
猫:「桜が先に暗号を解いてしまった…
結婚出来ないことを知って…彼女は…」
和:「行かなきゃ…」
まだ助かるかもしれない。
私は全速力で走り、桜の家に向かった。
桜の母親に確認させると
桜は血を吐いて、自分の部屋に倒れていた。
EP35
和:「私もタクシーで病院に向かうから!
早くしてよ!○○!」
桜が救急車で運ばれた直後、私は○○に電話した。
和:「ふぅ…どうしよう…
桜がもしも…亡くなっていたら…」
猫:「前に話したでしょ?生き返らせる手段を…」
猫:「○○たちも知っている。
ただ、それを思い出せるかどうか…
そして、桜が生き返った時…
○○は彼女を何と説得するのか…
それが出来ないと生き返らせても意味がない…」
和:「うん…そうだよね…
桜は○○と結婚出来ない悲しみから
今回の行動に出てしまった…」
和:「結婚以外の部分に
目を向けなかったから…愛は人を狂わす…
大切な友達は周りにいるのに…」
猫:「○○も桜と同じ行動に出るかもしれない…その時は…」
和:「分かっている…相談相手…友達…
そして、実の妹である私が○○を助ける。」
そして、○○は
桜と同じ行動をしようとした。
Ep.36
・テラス
○:「離して!」
和:「離せるわけないでしょ!」
私は○○に抱きついていた。
○:「僕は桜の元に行くんだよ…!!
桜は僕と結婚するために天国に行った…
だから、僕も…!!」
和:「桜と同じことをしちゃダメ!!」
必死だった。○○に友達の大切さを気づいてほしかった。
○○も同じようになってほしくなかった。
止めたかった。助けたかった。
和:「○○…気づいた…??」
○:「うん…ありがとう…和。」
○○は友達の大切さに気づいてくれた。
○:「桜に伝えたかった…僕がもっと伝えればよかった…」
彼は生き返らせる手段がある事を忘れていた。
だから、私は…
和:「伝えればいいじゃん…」
さらに手助けをした。
○:「どうやって…あっ…」
○○は何かを思い出したようでテラスを急いで出ようとした。
和:「どこに行くの?」
○:「桜の病室。和…本当にありがとう。
和が相談相手で本当に良かった…」
和:「なんか、よく分からないけど…よかった…!」
○○は気づいてくれた…
○:「また、明日ね…」
和:「うん!また明日!」
よかった…
和:「ふぅ…よかった…」
私は一息つき、ベンチに腰掛けた…
和:「ヤバっ!トイレを済ませて
早く駐車場に行かないと…」
私もテラスを出ようとした…
鳥:「ありがとう…」
和:「ううん…気にしないで…」
鳥たちに返事を返した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
和:「これが私のやってきた事…」
○:「そうだったんだ…」
和:「ごめんね…ずっと隠していて…」
○:「ううん…和が居なかったら
僕はあのまま見失っていた…
僕が結婚するまでは誰にもこの事は話さないよ。
でも、正直…恋人は作りたくない…
だから、一生話さない気がする…」
和:「そっか…」
やっぱり、そうだよね…ああいう事があったら…
誰だってそうなる…
和:「大学に行っても…頑張ってね
友達の大切さを忘れないでね…」
○:「うん…忘れない。」
そして、○○が帰ろうとした時、私は呼び止めた。
和:「恋人を作ってもいいと思うよ…」
たとえ、結婚をしなくても…付き合えば
何か分かるかもしれないから…
○:「考えておく…でも、恋は正直したくないな…」
和:「そっか…相談があれば…私はいつでも乗るからね!」
○:「ありがとう。和。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それから、色々あったけど…
彼は美空という最愛の人を見つけた。
桜:「本当に驚いた…
和が夢川家の遺伝子という事も…
○○が最初に体を重ねた相手という事も…」
和:「幻滅した?○○の初めては桜じゃなかったんだよ?」
桜:「しないよ…」
桜:「付き合っていた時に
聞いていたら幻滅しただろうけど…今はそんな事ないよ…」
和:「そっか…」
桜は本当に優しいね…
桜:「ねぇ、美空と○○がお似合いと
結婚式の時に言っていたけど和の本音なの…?」
和:「…」
桜:「運命はとっくの昔に
受け入れたと言っていたけど和の本音なの…⁈」
桜は私の肩を揺らす。
にゃぎはそれを見て、私から少し離れる
和:「…嫌だったよ。」
和:「○○のことが大好きだった…
彼の全てを私のものにしたかった…!!!
誰にも負けたくなかった…!!」
受け入れられるわけがなかった。
恋をしたのにその相手が恋しちゃいけない相手だった。
和:「私が苦しんでいることを
○○に気づいてほしくなかった…
彼を苦しめることになるから…」
桜:「和…」
和:「だから…私は○○に内緒で
こういう絵をずっと描いてきた…」
私は桜にスケッチブックを見せた。
和:「絵は想像だから…何でもあり…
現実であり得なくても…自分の願望を再現できる…」
私は○○と結婚したであろう
絶対に叶うことのない世界線を絵に描いていた。
仲良く夫婦として過ごした世界線を…
妄想をずっと描いていた。
桜:「和…辛かったよね…」
桜は涙を流しながら、私を抱きしめる。
和:「辛かったよ…何もかも…
でも、○○と人生を共にする人が
美空で良かった…美空なら安心できる…」
和:「美空は優しくて真面目な子で頑張り屋さんで…
本当に良い子…それに美空は○○を
ずっと追いかけていたから…これで良かったの…」
美空の恋が叶って、本当によかった。
私はみんなを助ける立場…委員長だから…
和:「ごめんね…暗くして…」
桜:「ううん…」
和:「今から、美空と○○が
一緒に映る絵を描くよ。2人の幸せを祈って…
2人が笑顔で過ごせる人生を歩めるように…」
私は絵を描いた。
太陽が輝く青空の下…サクラの木の下で
○○と美空が笑顔で笑いながら
手を繋いで座っている絵を…
_________________________
2時間後…
夢川家 玄関
和:「はいっ。」
○:「これは…?」
帰る直前、私は先ほど描いた絵を渡した。
和:「○○と美空の幸せを祈って…描いてみた。」
○:「ありがとう…
和:「美空にも後で見せてあげてね。」
○:「もちろん…美空も喜ぶと思う。」
美空は体調を崩してしまい、今は寝室で眠っている。
桜:「美空の体調が安定したら、また遊びに来るから!」
○:「遊びに来るって…
その前に僕の会社の仕事は?
仕事でここに来るでしょ?」
桜:「遊びと仕事では気持ちが違うの!」
○:「そっか(笑)
じゃあ、美空の体調が安定したらまた連絡するね…
まあ、僕が連絡する前に美空が和と桜に鬼電しそうだけど…」
和:「あり得る…」
あの子、友達を呼びたがる人だから…
桜:「じゃあ、そろそろ帰るね!今日はありがとう!」
○:「うん。こちらこそ。
和もありがとね。久しぶりに会えてよかった。」
和:「…」
和は俯いていた。
○:「和、どうしたの…?」
桜:「和…?」
和:「○○…いや…」
和:「お兄ちゃん!美空のことを幸せにしてあげてね!
美空が幸せじゃなかったら…
美空に笑顔がなくなったら…妹の私が許さないから!!」
○:「…」
桜:「和…」
和:「はぁ…はぁ…」
これが最初で最後…あなたの事をお兄ちゃんと呼ぶのは…
私の本音だよ…美空が幸せじゃなかったら許さないから…
○:「和…ありがとう…」
彼は私をギュッと抱きしめる。
○:「ごめんね…辛かったよね…
今までずっと隠していて…和が一番辛かったよね…」
彼は涙を流しながら、抱きしめてくれた。
彼は気づいていた…私が苦しんでいる事を…
和:「大丈夫…私は平気だよ…
○○が幸せになって…○○が笑顔になってくれればいい…
それが私の幸せだから…美空を幸せにしてあげて…」
これは本心だよ…○○が笑顔になれば、私も幸せ…
だから、大丈夫だよ…気にしなくていいよ…
○:「もちろん…幸せにする…」
○:「和が信頼できる人でよかった…
友達…相談相手…家族…いや…妹でよかった…」
和:「私も…○○が親友…お兄ちゃんでよかった…」
私と○○は数秒間想いを共有し合うようにハグをした。
和:「じゃあ、帰るね。約束だからね!
美空を幸せにすること!」
○:「うん。約束。」
私と彼は指切りげんまんをした。
和:「じゃあね!○○!」
桜:「また今度ね!」
_________________________
私と桜は○○の家を後にして、帰り道を歩いていた。
猫:「にゃあ…」
にゃぎは眠たそうに私の肩に乗っていた。
和:「いや〜!吹っ切れた!」
私の想いを伝えることはできた。
桜:「よかった…さっきよりも表情が明るい。」
和:「これだけ言って美空を幸せにしなかったら
本当にただじゃおかない(笑)」
桜:「だね!(笑) それより…和はこれからどうするの?」
和:「これから?」
桜:「○○のそばで働くの?
だって、私を含めて○○の家族はみんな
○○の近くで働いているでしょ?」
和:「うーん…私は一人旅する!」
桜:「一人旅?」
和:「色んな景色を絵で描きたいの!」
和:「何か成長出来る気がするから!」
桜:「そっか!楽しみにしているね!和の成長した姿を!」
和:「楽しみにしていて!あっ、にゃぎも一緒に旅だからね。」
猫:「やったっ…」
にゃぎは私の肩で飛び跳ねて喜んでいた。
和:「でも、本当に美空は凄いなぁ…有言実行しすぎ…
高1の時からずっと言っていたもん…」
彼女はずっと言っていた。
桜:「何を言っていたの?」
和:「そっか…高1の時、
私や美空と同じクラスじゃなかった桜は知らないのかな?」
桜:「んー?知らないかも…
いや、知っているかも…どっちだろ?」
和:「美空はずっとこう言っていたの。
いや、桜も知っているかも。美空の口癖だったから。
美空は○○を好きになった時から、ずっと言っていたから。」
和:「『狼くんを落としたい』って。」
『狼くんを落としたい』Fin
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