EMDRって怪しい感じ?
EMDRのセッションでは、クライエントにセラピストの指を目で追ってもらいながら、目を左右にキョロキョロ動かしてもらいます。このような方法で本当にトラウマが改善されるのか怪しい感じがするかもしれません。
しかし怪しいことはなく、EMDRはエビデンスの認められたPTSDに効果のある心理療法です。
EMDRは1989年にアメリカの心理学者Francine Shapiroが提唱してから今日まで、さまざまな研究がおこなわれ、治療効果は根拠のあるものと認められています。
また、世界保健機関(WHO)のホームページの「Post-traumatic stress disorder 27 May 2024」には、「PTSD の効果的な治療として最も証拠のある心理的介入は、トラウマに焦点を当てた認知行動療法と眼球運動による脱感作および再処理法 (EMDR) に基づくものです」と記載されています。
EMDRは決して怪しい療法ではなく、PTSDの治療に対しエビデンスのある世界でも認められている心理療法です。
EMDRって暴露療法?催眠療法?
暴露療法(エクスポージャー療法)とは、不安の原因になる刺激に段階的に触れることで、その刺激に馴れる(馴化する)ことにより不安を減少させる方法です。
EMDRでは、苦痛な記憶をターゲットにし、短く切りながら繰り返し記憶への暴露をおこないます。その際、眼球運動などの両側性の刺激を与えることで、過去の記憶と現在を行き来することになります。そのため暴露療法のように不安の原因になる刺激に対する馴化とは異なるメカニズムが働いていると考えられています。
EMDRは催眠療法とも違います。
EMDRのセッションでは、過去の出来事を思い出しながら目を動かすといった二重注意刺激をおこないます。過去の出来事だけではなく、現在の刺激にも意識を向ける方法なので、トランス状態に入り込むことなく覚醒状態を保ちながらセッションは進んでいきます。
しかし、EMDRの中で“安全な場所”のイメージを作ってもらうことがありますが、その場合は催眠療法の要素が含まれることもあります。
【参考文献】
WHO 世界保健機関ホームページ
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/post-traumatic-stress-disorder
(20240716参照)
e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-006.html
(20240716参照)
「こころのりんしょうa・la・carte」(2008)第27巻第2号(No.114)聖和書店.