僕は、僕だ(part3)
軍病院に入院していた僕だけど、撃たれたお尻のケガは数ヶ月もすればなおってしまった。
病院にはいくつかの娯楽があった。
テレビとかボードゲームとかね。
あとは卓球台があったんだ。
するとピンポンをプレイしていた人が声をかけてくれた。
「一緒にやってみるかい?
ひとつアドバイスをしてやるよ。
ピンポンでは絶対に小さなボールから目を離しちゃいけない。
絶対に目を離さないことだ」
僕は彼のいうとおりにボールから目を離さずにラケットを振ってみた。
すると僕にしっくりきたんだ。
簡単にボールを打つことができた。
一定のリズムでラケットをふって、小さなボールを相手に返す。
ピンポンが入院生活でのライフワークになった。
なにせ時間はいくらでもあったからね。
毎日ピンポンができてうれしかったんだ。
どれくらい嬉しかったかというと、ラケットを握ったまま寝ちゃうくらい嬉しかったんだよ。
ピンポンに夢中になっているとどんどん上達していった。
いつの間にかラケット1つじゃ物足りなくなって、両手にラケットをもって壁打ちをするようになった。
そのほうがなんだか楽しくてね。
そうすると他のみんなが珍しがっていつもギャラリーがつくようになった。
僕がただピンポンをやっているのをみるのが、みんなにはおもしろいみたいだ。
ダン中尉も見に来てくれた。
なんだかそれはすごくうれしかったな。
でもダン中尉は悩んでいた。
隣のベッドにいたダン中尉はよく夜中にうなされていたんだ。
ある夜、ダン中尉は僕にこう言った。
「人間には運命がある。
わかるか?
俺はあの戦場で部下と一緒に名誉の戦死を遂げるはずだったんだ
それなのに助かっちまった
両足をなくして。
これからどうやって生きればいい?
お前に俺の気持ちがわかるか?
俺の運命はこうなるはずじゃなかったんだよ」
そういってダン中尉は僕の胸で泣いた。
僕ははじめて強い人の涙をみた。
数日後、ダン中尉と僕は帰国することになった。
なんでも大統領から名誉勲章がもらえるらしい。
僕は、なんだか少し誇らしい気持ちになったんだ。
続く