僕は、僕だ(part4)
外国での戦争に行っていた僕は、久しぶりにアメリカに帰ってきた。
といってもアラバマの田舎じゃなくてワシントンだ。
僕はこれから大統領と会うんだからね。
それに大統領から直接、勲章をもらえるらしい。
このことを母さんに言ったらすごく喜んでくれたんだ。
僕も母さんの声を聞いて元気が出たよ。
そして、いよいよ当日。
僕の他にも何人かの兵士が勲章をもらうみたいだ。
テレビもいっぱいきている。
あとから聞いたなんだけど、アメリカはますますこの戦争にお金を注ぎ込みたいみたいだったんだ。
だから、活躍した兵士に勲章を与えて、それをテレビで全国に流す。
そして国民みんなの意見をコントロールしようとしていたみたいなんだ。
僕は難しいことはよくわからないけど、戦争には反対だ。
僕は銃の訓練はたくさんやったし、銃の解体は一番はやかった。
けれど、僕は一度も戦争で銃を撃ったことはなかった。
僕は、仲間を助けたことで勲章を受け取ったんだ。
僕の隊がゲリラ攻撃を受けたとき、僕はたくさんの仲間を遠くの小川まで担いで運んだ。
何人も担いで、走って運んだ。
バッパもダン中尉も運んだ。
バッパは死んじゃったけど、ダン中尉は生きている。
だから、今回の勲章は嬉しかったんだ。
大統領がついに目の前に現れた。
テレビで見たことのある顔だ。
そんなことを思っていたら、大統領から意外な言葉をかけられた。
「君は銃で撃たれたのかね?」
「はい!お尻を撃たれました!
「おお、そいつは痛そうだ」
「チクッと、痛かったです!」
「一度見てみたいものだな。はっはっはっ」
僕は一瞬迷った。
けれども軍隊では上官の命令は絶対だった。
それに相手は大統領だ。
「イエッサー」
僕はお尻の傷だけを大統領に見せた。
「こりゃまいったな」
大統領はかぶりをふって、その場を去っていった。
苦笑いと一緒にね。
もちろんこの映像は全国に流れていたけど、まあどうでもいいさ。
受勲式が終わってからはママはホテルに戻って休んでいた。
せっかく来たワシントンだ。
僕は観光に乗り出した。
するとたくさんのヒッピーの人たちが集まっているのを見かけた。
なにかのツアーみたいだ。
僕は興味本位で覗いてみると、知らない人に声をかけられた。
「君、列から出ないで。ついてきてください。」
どうやら僕はツアー客と間違われたらしい。
続く