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東京都麻雀業協同組合は酷すぎるのか?~すべからく犯罪のオンレートフリー雀荘と麻雀界の未来について


①新宿歌舞伎町「麻雀ブル」摘発

始まりは2月上旬、このニュースだった。

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女流プロ常駐の人気店が賭けマージャンで摘発されたワケ 歌舞伎町で11年間9億円荒稼ぎ

いわゆる「オンレート店」の摘発。
当局が自発的に行う場合・通報や報告の結果行われる場合、様々なパターンはあるだろうが、実は全国で年間数件は耳にすることではある(実際の摘発数は当然さらに多く、実は年間数十件はあるとも聞く)。これが今回メディアで大きく報じられたのは、大手有名チェーン店であることもあるだろうが、報道機関への情報の出し方に、当局が本気で摘発するという意志表示が込められているのかもしれない。

②「オンレートフリー雀荘」はすべからく犯罪

皆さんご存じだろうが、基本的に(公営ギャンブルを除く)賭博は犯罪である。
賭博を行う側も、賭博を行う場を提供した側も、処罰の対象となっている。

  • 刑法第百八十五条「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」(単純賭博罪)

  • 刑法第百八十六条第一項「常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。」(常習賭博罪)

  • 刑法第百八十六条第二項「賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。」(賭博場開張図利罪・博徒結合図利罪)

仲間内でちょっとした「お金を賭ける」やりとり、恐らく低レートのセット麻雀ぐらいであれば、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」という(単純)賭博罪の例外として免罪される、という解釈。厳密に言えば直接的に「お金を賭ける」のはアウトで、その時の遊技代やその後の飲食代などを「娯楽に供するもの」と解釈する、というのがより正確かもしれない。

ということは、である。
「オンレートフリー雀荘」は厳密には、すべて犯罪ということになる。
現金と直結したレートを定めて賭博の場を開いている店舗側は確実に「賭博開帳図利罪」、客側も基本的には「(単純)賭博罪」である。
現金ではなくチップやカードなどのやり取りにすることで、賭博ではなくポイントと名誉を賭けていることにできるかもしれないが、それでもそのチップやカードをお金で買い、退店時に換金するところを押さえられたらアウトである。
店内ではダメならば、店外で換金するパチンコ店のような「三店方式」にすれば良いのでは?!とお思いだろうが、それもダメ。マージャン店では「遊戯の結果に応じて客に景品を提供する」ことは風営法上認められていない。

③「東京都麻雀業協同組合」「全雀連理事長」プチ炎上

さて、本題。
①の件に関して、「東京都麻雀業協同組合」「全雀連理事長」のXアカウントが少々炎上?した模様である。
詳しくは、特に直接的に批判しているこちらの「note」を引用させて頂きたい。
なお「東京都麻雀業協同組合」は「全雀連(全国麻雀業組合総連合会)」の下部組織であり、その両方の理事長が高橋常幸氏。つまりここで取りざたされている2つのアカウント、基本的に発信元はいずれも高橋氏と考えていいだろう。

競技麻雀で有名な「麻雀オクタゴン」ではなく、「麻雀オタクゴン」というアカウントなのでお間違えの無いように。

「東京都麻雀業協同組合」「全雀連理事長」のポスト及び高橋氏の「note」(一部有料)は、「過度に射幸心を煽る『特殊ルール』『店内告知』、そこへ多くの客を誘導する『麻雀プロの利用』『SNS告知』などは慎みましょう」という総論的な注意喚起が書かれており(有料部分は当局との細かいやり取りや自省を含めた麻雀界の問題点なども書かれているが、有料なので詳細は割愛)、「具体的に何がOKで何がNGなのか分からない」、ということで「仕事してない」認定するような記事になっている。

まず言っておきたいのは、この「note」では低レートならば「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」の免罪規定でセーフ、賭博罪は被害者がいないからそもそも自己責任内ならばセーフでは?という論調のようだが、それは完全な誤り。刑罰というのは「被害」の存在が必要条件ではないのは言うまでもないだろう。万引きしても奪った品を完全に元通りに返せば刑罰を受けなくて済むのか?というのはあまりに極端な例だが、例えば前述の「マージャン店では遊戯の結果に応じて客に景品を提供してはいけない」も、もちろん景品の提供には被害者はいないが罰せられるのは理解頂けるだろう(賭博を含め、強いて言えば被害者は「公序良俗」、或いは「勤労意識がある国民、ひいては日本社会全体」と言うことはできる)。

その上で、フリー雀荘はそもそも知らない同士の客が「千点○○円」と現金に直結した「レート」を規定されて、明確に現金のやり取りをするのだから、賭博であるのは明らか。強いて言えば全員の支払額の合計がゲーム代を超えなければ「一時の娯楽に供するもの=ゲーム代」のワリカンの度合いを決めている、という主張が通るかもしれないが、そんな設定のお店はほぼ皆無だろう。
そしてお店側の賭博開帳図利罪に関しては免罪規定もないのだから、なおさら。つまり②の繰り返しになるが、どんなに健全な雰囲気で手軽なレートであっても、基本的に「オンレートフリー雀荘はすべて法を犯している」のである。

④「すべてが法を犯している」業界での注意喚起の難しさ

もはや答えは出てしまったが、具体的に何がOKで何がNGか、完全な回答を書いてしまえば、「オンレートフリー雀荘はすべて廃業あるいはノーレートへ転換すべき」なのだ。でも今すぐそんなことできないでしょ?できないなかで、めちゃくちゃ頑張って当局とやり取りして「こういう方向で目立つと摘発対象になりやすいよ」の基準を探って、ギリギリの発信をしているのだ。

個人的には、それこそ「女流プロを呼んで集客するお店=ガチよりエンジョイ勢もそれなりに多く、賭博一色の雰囲気とは真逆」だと思うのだが、そもそも厳密にはオールアウトなのだからそういう演繹的な評価は関係ない。結果的に摘発されたお店から目立っているポイントを帰納的に抽出して、こういう特徴を持ったお店が摘発されたからこの要素が賭博罪と関連付けされやすい、つまりこういう点に注意すれば摘発されにくいんですね、という一応の言質を取ってくれた、というのが実情に近い表現だろう。

麻雀業協同組合の加盟店はやはり「オンレートフリー雀荘」が多い。わざわざ加盟料を払って組合員になるメリットを考えると、店内でトラブルが起こった場合や今回のように業界全体がピンチの状況になった場合、組合員には情報が届く、或いは相談すれば答えてくれる、ということが第一に挙げられる。つまりは客とのトラブルの意味でも法的な規制の意味でも、オンレートフリー雀荘がこの組合に入るメリットは最も大きいのだ。
そんな組合の加盟店に向けて発信するには、高橋氏のような内容になるのが、およそ考え得る最良の着地点ではないだろうか。

⑤麻雀界を取り巻く状況は日本社会の典型的な「図式」

「すべてが法を犯している」なんて、なんという酷い業界だ、と思うかもしないが、日本ではこういう業界は他にもある。
パチンコ店こそなぜかこれをクリアして「適法」エリアに行ってしまった?ようではあるが、例えばソープランドは実質全店「売春防止法」違反だろう。もちろん客も犯罪者である。しかしソープランドに行く際に、「今日予約した新人はどんな子かな?地雷だったら嫌だな」とか思う人はいても、「俺は今から売春防止法を犯して、金を払ってセックスするという犯罪をしに行く、捕まらないか不安だ」と思う人はいないのではないか。
そんな大げさな話以前に、人も車も通っていない深夜の赤信号をスタスタ渡る人や、歩行者天国に自転車を乗り入れる人に、道交法違反で検挙されるリスクを毎回憂う気持ちなんてほとんどないだろう。仕事と関係ない友人と行った食事の領収書を仕事の経費で処理した人が、脱税で逮捕されるリスクにずっと震えているということもまずないだろう。

こうして見ると、日本では原則論をめちゃくちゃ潔癖に厳密にしておいて、運用や解釈で緩める、という図式ばかりが溢れているのだ。
現状に沿った規則にしておけば取り締まる方も取り締まられる方も楽なのに、こういう「図式」を作っているのは、その方が時勢に合わせて締め付けたり緩めたりの調整ができるというメリットもあるが、結局その調整をする当局や時の権力者に大きな利権が発生する、というデメリットの方が極めて大きくなっているのではないか。
都市伝説として、とある大きな警察署のすぐ裏にある有名な高レート雀荘は、めちゃくちゃ多額の接待費を割いている、という話を聞いたことはあるし(あくまでも噂レベル、その噂は違うという方の話も聞いたことがある)、この真偽はともかく、こんな噂がまことしやかに語られること自体良くない。結局、運用や解釈で左右される現状はいろんな意味で弊害を生んでいる、というのは間違いなさそうだ。

ここまで考えると、業界団体が政治家を巻き込んでロビー活動をもっとしっかり行って、原則論(賭博罪や賭博開帳図利罪に関する法律)自体を変える、というところまで辿り着いていないのが「足りていない」とする意見はあって良いと思う。そういう意味に於いては、私自身の意見も、「麻雀オタクゴン」氏の意見と通ずるものはある。
ただ実際は、一般社団法人全国麻雀段位審査会の役員名簿に「名誉総裁:小宮山洋子」「最高顧問:鈴木宗男」とあるように、かなり頑張って政界にも食い込んだうえで、そこに踏み込むのは難しいというのも付け加えておきたい。
そこまでやってこその業界団体だとも思うが、なんせ日本はこういう「図式」で権力階層や公的機関の権力を肥大させる構造で社会ができているのだ。ことは麻雀だけに収まらないレベルの「難しさ」である。

⑥麻雀界の明日はどっちだ

先日、ありがたくも超豪華な麻雀大会に参加させていただき、その打ち上げの流れで著名人雀豪と著名人麻雀プロ2人とセットをすることになった際に、まさにノーレートで行ったのだが、その際の面子の若手プロ(にして著名人)の方が、「人生で一度もお金を賭けて麻雀したことがない」と仰っていた。
麻雀界、クリーンを謳う競技麻雀プロ界でも「オンレート麻雀と完全に手を切ることは不可能」という説もあるが(下記の福地誠氏のnote参照=一部有料)、今後はこういうナチュラルにクリーンな人たちが業界を引っ張って行くようになるのではないだろうか。

実際不況どころか本格的貧困社会となってしまったこの国での趣味や余暇の過ごし方を考えた場合、「参加するための費用が計算できる」のは極めて重要で、「参加すれば最悪いくら負けるか分からない」麻雀であるよりも、「ゲーム代・参加費用を用意すれば参加できる」麻雀であった方が、裾野自体も拡がるはずだ。まあ確かに、時間は掛かるし、非合法オンレートも根強く残るとは思うけど。

そして競技プロ側のスタンスはもちろんだが、マージャン店経営側からしても、もはやこんなリスクは負えないという時代は近付いて来ているのではないか。
当局からの摘発以外の様々なリスクもあり、何よりもオンレートフリー雀荘には労働力が集まらないのではないか。従来ならば「麻雀が好きだから」「プロに憧れて」メンバーになった若者が、働き始めて初めて「この業界はすべて法律違反なんだ」と気付く、というような流れすらあり得たが、これからはすべて事前に情報開示して納得づくで働く時代になって行くだろう。そうなると反社会的な人材しか集まらないようなリスクが高まり、まともな経営者が手を出せない業種になって行く。
そもそもオンレートフリー雀荘は「ゲーム代以上に儲けたい」人をターゲットとしているので、どんなに物価が上がってもゲーム代が上げづらく、意外と儲からない業態。そのうえこんなリスクは到底負えない。

そういう意味で、「まともな人が経営する手頃なレートのオンレートフリー雀荘」は、本当に驚くほどのペースでなくなって行く可能性もありそうだ。

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