検査 ①

 造影剤を使った腹部CT検査を受けた。
 生まれてこの方、点滴というものを受けたことがない。と言えば、大体驚かれる。誰しも一度や二度は、点滴のひとつやふたつ、受けたことがあるくらい、病院には行くのかも知れない。熱を出したり、貧血を起こしたり、熱中症になったりしても、点滴は有効だから、「したことがない」と言って驚かれなかったことはなかった。
 そもそも病院に行く質ではないのである。
 現在の掛かり付けは歯科と皮膚科。鼻炎や花粉症に年中悩まされているくせに、耳鼻科には何年も行っていないし、しっかり近眼で近頃老眼の足音を感じつつある昨今でも、眼科にも同じく何年も行っていない。
 大体の不調は、市販薬と自宅療養、食い力で乗り越えてきた。しかし年々酷くなる下腹部痛に、救急搬送の選択肢も視野に入れる必要性に迫られて、数年ぶりに消化器内科を訪れたのである。
 紹介状を発行されて初めて行った総合病院は、思っていたよりも近く、ゴージャスだった。
 先ず、駐車場の多さに圧倒された。一番わかりやすかったから停めたところですら、【臨時駐車場】となっていた。常に出入りするものの、どこもかしこも車が途絶えることなくいっぱいだった。どんだけ病人おんねん…。心の中で呟く。
 時間予約で行ったが、それなりに待たされた。同じ病院から紹介状を発行されて訪れている患者さんが複数いて驚いた。皆、此処に送り込まれるのか?と主治医を疑ったが、単に連携機関というだけで、個人医院にそれだけの設備がないという話だろう。しかし待合室には、同世代がまるでいないことに、少々不安になった。
 検査着に着替えた後、待たされた衝立の内側で、腕にごろごろと物体を引っ付けている男性が座っていたので脅威した。これから私の身にも、同じことが起こる。造影剤を入れるために、「点滴を通す道を作る」らしい。注射…大嫌いなのに、嫌いだからと言って泣いて喚いても、検査はしておいた方が良いと思うから黙っていたが、自分の身体に衣料品以外のモノが合体させられるという事実を目の当たりにして、今にも逃げ出してしまいそうだった。
 点滴の針は痛かった。顔をしかめた。看護師さんに「痛いですか?」と聞かれたので、「痛いです」と素直に答えた。痛いもんは痛い。嘘などついて何になる。
 CT検査は初めてではない。しかし造影剤は初めてだった。
 前回、膝がバッキンバッキン云うので医者に罹ったら、毎週水を抜かれた。一向に良くならず、紹介状をもらってCTを撮ったら、半月板が断裂していた。数ヶ月の通院…何だったのだろう…と思った。その時の方が撮影に時間がかかったが、音がうるさいばっかりで痛くも痒くもなかった。むしろ面白かった。そのうち捥げてしまうのではないかと心配していた膝は、更に転院してリハビリを受け、今ではどっちの膝を痛めていたのか思い出せないくらい回復している。
 CTは嫌じゃないが、造影剤は嫌だと思った。点滴なんて、人生でしなくて良いのならしないに越したことはない。ぶっとい注射針をぶっ刺されて、注射器の本体もチューブも腕に貼付されて、検査が始まるまで数十分も待たなければならなかった…それが一番嫌だった。
 検査 ②は、二週間後の大腸カメラだ。麻酔するので寝ている間に終わるらしいが…麻酔って注射?それも嫌だが、前日の食事制限と、当日の絶食と、下剤尽くしが尚更恐ろしい。

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