健康診断に行った
現在、何処の団体にも所属していない身であるため、職場の健康診断というものは受けられない。一昨年の春、就業のために受けて以来、ほぼ二年、自分の身体の中身について、目を向けずにいた。一年前には乳がん検診のみ受診したが、基礎検診というものに行かなかったのは、就職が決まれば、いずれにせよ受けなければならなくなると踏んだからだ。結果、決まらないまま一年以上が経ち、月末には無料で受診できる期間が終了するとあって、相変わらず仕事が決まる気配はないものの、受けておかねば損だと思って腰を上げたのだった。
何度か受診経験のある総合病院である。毎回何かあるので、本来なら病院を変えたいところだが、近隣に目的の項目を網羅出来るところがない。実際、一軒あるが、こちらも団栗の背比べ並みにヤブと名高い地元の総合病院である。どちらに行ってもめちゃめちゃ待たされるうえ、何か起こって苛々するなら、未だ、何度か行った場所の方がマシだと思った。
基礎検診というものが、あまりに簡易的だとわかったことから、今回は肺と大腸のがん検診も追加することにした。いずれも無料で、希望さえ出せば受けられる。基礎検診だと、身長、体重、血圧、検尿、血液検査だけ。X線も基礎項目だと思っていたのに、前回受診した際、項目外だと知って、何だかとてもつまらなかった。就業するならX線は、基礎項目に当て嵌まるからだ。無暗に被爆する必要はないと思うが、年に一度は受けておいた方が安心な気がする。肺がん検診がX線だとわかったから希望したようなものだった。
最初は順調だった。血液検査の結果が出るのに一時間ほどかかるから、今日聞いて帰るか後日再診するかという希望も、早い段階に問われた。前回、他の患者が誰ひとりいなくなったロビーで、休診時間になった後も延々と待たされた記憶があった。その時は、検査結果は郵送可能と言っていたのに、実際はそうではなかったせいで待ち続けたのだ。今回は出来るタイプのスタッフに当たった…そう思えた。血圧は自分で測り、身長・体重と腹囲は測ってもらう。暫く待たされて採血し、検尿へと移行した。その後、何処でどうするのか指示がなかったため、ロビーで待ち続けたのだが、一時間経っても動きがない。外で済ませたい用事もあったので、一旦出られるか聞こうと看護師に問い合わせたら、内診の順番待ちに入っていたらしく、更に30分以上待たなくてはならなくなった。
この間にレントゲン…撮れないのだろうか?と思った。外での用事も、半分は終わらせられる…そう思った。
やっと呼ばれた内診で、血液検査の結果を受け取った。若い内科医が酷いくしゃみをする。花粉症…仲間だと思った。
コレステロール値を示す3項目が、とんでもなく高かった。理由は何となくわかる。無職だから、身体を動かす時間が大きく減少している。犬の散歩も時間だけはかかるのに徐行状態だし、稽古場の賃貸料をケチっているせいで、レッスンも休んでいる。それなのに、毎日お茶の時間には贅沢にもスイーツを欠かさない。食事は野菜中心だからむしろ健康的なはず。なので原因は一目瞭然だ。割引券の期限が近付いていたから、今日はこの後、ドーナツを買って帰るつもりだ。明後日からは田舎に行くので、長時間ドライブの疲れを癒すためにチョコレートは欠かせない。コレステロール対策は、田舎から帰るまでは無理せずにいよう。「ダイエットは明日から」なんて言いながら、なかなか実行に移せない女子の話は目にも耳にもよくするが、まさにそんな状態に、自分がなっているのだという自覚はしっかり持った。
大腸がん検診の便潜血検査についての説明を受け、レントゲンへと移動する。いずれも呼ばれるまで数十分待たされる。検査の説明なんて、採血の時にしてくれたら良かったのではないか?と思った。場所も、対応の看護師も、同じだったからだ。色々無駄が過ぎる。院内に患者が溢れているわけでもなかったから、暇さゆえに作業を引き延ばしているのではないかと疑った。
呼ばれてレントゲン台の前に立つ。ガラス製の機械は、真ん中に大きくヒビが入っていた。なんという病院か…。それで撮影するのだから、検査には支障ないのかも知れないが、何が起こってそうなったのかも謎だし、そんなことになっている医療検査機器を、取り替えることなく使用し続けているのも謎だった。
カルテを会計に出した後、またもや待たされた。無料検診だから会計の必要はないはずだ。待てと言われて聞き間違えたのかと思った。そういや来た時も、約一年前に受けたエコー検査の結果を手渡された。前回は郵送されてきたはずの検査結果だ。受け取っていないことすら忘れていたが、郵送することを、忘れていたのではないかと不信感が芽生えた。
検便を取って、再び来なければならない。多分、旅明けだ。あぁ…めんどくさ。
結局、午前診の3時間を、がっつり院内で過ごした。疲れるわけである。
此処へ来る手前に、もう一軒総合病院がある。規模は同じくらいだが、見た目は似ても似つかないくらい綺麗だ。待っている間、検診に対応している病院を示した冊子を見ていた。何故そっちに行かなかったのだろう…と、自分を疑ったからだが、此処へ通うようになるきっかけになった、乳がん検診に対応していなかったからだとわかった。基礎検診も肺がんも大腸がんも、そこでは受けることが出来るが、乳がんは×である。年に一度はエコー検査を受けるよう仰せつかっている身としては、そこが選択の大きな分かれ目だったようだ。
これ以上、診察券を増やすつもりがない。病院なんて滅多に行かないからだ。一方で、色々と掛かりつけがあれば、何かあった時に便利かも知れない。そうも思う。但し、今現在、コレステロール値と花粉症、慢性蕁麻疹以外、大きな不調がこの身に起こっていないせいで、診察券を無駄に増やすという選択肢が優先されずにいる。何かあって、綺麗な方の病院にお世話になることがあった時に、ちゃんと考えようと思った。