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「母乳は乳輪からも噴射するの知らんかったし、泣き止まぬ赤ちゃんを夫はアテレコしながら抱っこしつづけてくれた」の話 byとけいまわり

長女が産まれたばかりの時、私は何もわかってなかった。乳首の先っぽだけじゃなく、乳輪ギリギリの所からでも母乳が出るなんて知らなかったし、何なら10箇所ぐらいからピューピュー母乳が出てきて、多方面放射してくるのも知らんかった。思ってたんと違う。

新生児の初うんこが真っ黒のタールなのも知らんかったし、おむつの替え方も知らんかった。「痛くない産み方」ばっかり調べてたので、産んだ後のことはよく分からなかった。

長女が生まれた後、夕方に中々泣き止まないと、(もしや、今すぐ病院に行かねばならない病気で苦しんで泣いてるんか!?)の可能性が常に浮かんで、その圧がいつも苦しかった。何で泣いてるんかわからない。ネットで調べて、「うんうん、これは黄昏(たそがれ)泣きと言うんや・・・」と知っても、部屋が泣き声に包まれて、私は真綿で首を絞められたような窒息感を覚える。本当か・・・?本当にこれは黄昏泣きであっとるんか・・・?
私は少しずつ密閉育児の中で圧迫されていく。

夫が帰ってくると、私はもうろうとした顔で泣いている長女を抱っこして部屋をあっちへウロウロ、こっちへウロウロしていた。
夫は「僕にも抱かせて」と、長女をひょいと肩に抱いて、「悲しい…あたち、なんだか分からないけど悲ちくなっちゃったのよー…何かしらこの気持ち〜」ってアテレコして、部屋をウロウロ歩き回ってくれた。長女は中々泣き止まなかったが、長女の泣き声は夫のアテレコ越しに聞くと何だか余裕を持って聞けた。その内に長女は泣き疲れて夫の肩の上で寝た。

「あ〜眠かったわ〜」と最後のアテレコをして、夫は布団に長女をそっと置いた。長女の背中センサーが働いて、目をカッと見開いてまた泣き出した。「ははっ、失敗。難しいなー」と夫は笑った。目尻の笑いじわで顔がくしゃっとなる。また1つ夫を好きになる。こうやって、好きが積み重なっていくのだ。

子どもが泣きないときも夫は私に「泣き止まないんだけど」と子どもを渡してこなかった。子ども達が少し大きくなって「パパは嫌」というときにも、夫はいつも同じ顔をして笑っていた。「そうなんだ、でもパパはあなたたちの事が好きだよ」と。

どんなに「パパが嫌」と言われても逃げない夫。子育てを投げない夫。
「何歳までオムツのお世話ができるだろう。何歳までお風呂に一緒に入れるだろう。何歳まで髪を結わえさせてくれるだろう。いつか、子ども達は僕らの手から離れてしまうだろう。その日はきっとあっという間に来てしまうだろうね。だから、まだあなたたちが小さい内は僕にお世話をさせてねと毎日思ってるよ。もう、今日が髪を結わえる最後の日になるかもしれないから」と。


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