プロ野球戦力分析(巨人編)
6月19日に開幕が迫った日本プロ野球。今日は昨年度セ・リーグ優勝、東京読売ジャイアンツ(巨人)について分析する。
•投手陣の入れ替わり
功労者だった上原浩治が昨年度途中で引退。現在はYouTuberとしても活躍。また、2012年シーズンからの来日から8年間、セットアッパーやクローザーとして活躍してきたS.マシソンも日本プロ野球からの引退を表明(東京五輪のカナダ代表を目指し、その後正式に現役を退く予定)。そして、かつてソフトバンクで左の中継ぎとして活躍し、FA宣言を経て2017年シーズンから巨人に加入しながらも、3年間で目立つ成績を残せず戦力外通告を経て引退した森福允彦も忘れてはいけない。あとはR.クックがメジャーでの実績を活かせず1年で退団したことも誤算だろう。T.ヤングマン、S.アダメスも退団している。
また、先発陣から昨年15勝(4敗)、188奪三振、勝率.789で最多勝、最多奪三振、最高勝率の3冠を獲得した山口俊がポスティング制度を行使してメジャーリーグのトロント•ブルージェイズに移籍。森福と同時期に横浜DeNAからFAで入団したが、こちらも3年でチームを去っている。
今季からの主な新加入投手は、先発候補としてA.サンチェス(韓国 /SK)、中継ぎ候補としてT.ビエイラ(米 /ホワイトソックス)を獲得。また、育成契約で獲得したN.ディプラン(米 /ブルワーズ)は支配下登録を勝ち取っている。ドラフトでは2位でJR東日本の太田龍を獲得し、その他にも1位で堀田賢慎(青森山田高)、4位で井上温大(前橋商業)を獲得している。井上は左腕で、その他4人は右腕である。
•投手陣は穴が多い?
昨年度セ・リーグ優勝の巨人。チーム防御率はリーグ4位の3.77。先発陣は山口俊が抜けたが、楽天からFA宣言した美馬学の獲得に失敗(ロッテ入団)。昨年SKワイバーンズで17勝(5敗)のサンチェスを補強したものの、防御率4.89、28試合で165投球回、124奪三振と勝ち星以外の数字がパッとしないのが気になる。中継ぎ陣は上原、マシソン、森福が抜けたが、昨年と大きな変化はない。
先発ローテを昨年の実績で考えてみると、エース右腕•菅野智之(31)、昨年8勝(6敗)の右腕桜井俊貴(27)、同じく8勝(8敗)の育成出身外国人左腕C.C.メルセデス(26)、5勝(7敗)の大卒2年目左腕高橋優貴(23)まではほぼ確定。ただ、菅野は昨年腰痛に悩まされ規定投球回未到達。桜井は防御率4.32とあまり良くはない。メルセデスも22先発で120.1投球回とあまりイニングを稼げず。
残りの2枠を新外国人右腕A.サンチェス(31)、先発復帰を目指す万年左腕エース候補田口麗斗(25)、昨年日本シリーズでも登板した高卒2年目右腕戸郷翔征(20)、殻を破りたい高卒9年目左腕今村信貴(26)、サイド転向の未完の大器、鍬原拓也(24)などで争っている状況で、社会人出身ルーキー右腕太田龍(22)も評価を上げている。山口俊の穴を埋められるかが連覇への鍵だ。
救援陣は昨年途中加入で26試合1勝8S5H、防御率2.25の外国人右腕R.デラロサ(31)が今季は開幕からクローザーか。67試合4勝(3敗)16S17H、防御率2.37と台頭した左腕中川皓太(26)はセットアッパーでの起用が濃厚。クローザーの実績のある右腕澤村拓一(32)、復活した左腕高木京介(31)、ベテラン右腕大竹寛(37)、沖縄の星•右腕宮國椋丞(28)などが他の中継ぎ候補だが、救援陣の安定感には欠ける印象だ。
•野手陣の入れ替わり
長年捕手として、晩年は一塁手や代打の切り札として勝負強さを見せていた阿部慎之助が昨年限りで引退。二軍監督に就任した。また、元メジャーリーガーC.ビヤヌエバ(日本ハム移籍)、育成出身のJ.マルティネス、中日で本塁打王の経験のあるA.ゲレーロが退団。投手陣と同様、外国人の人員整理がされた形となっている。
今季からの新加入野手は外野手のG.パーラ(米 /ナショナルズ)。左投げ左打ちで、かつてはゴールドグラブ賞を2回受賞、通算1466試合で1312安打を放っている名打者だが、もう33歳。球団は長打に期待している為、どう転ぶか見もの。また、育成契約で獲得した外野手のI.モタは支配下契約を勝ち取ったが、まだまだ荒削りなプレーが目立っている。ドラフトでは高校生を3人獲得。内野手の菊田拡和(常総学院高)を3位、ヤクルト1位の奥川恭伸とバッテリーを組んでいた捕手の山瀬慎之助(星稜高)を5位、外野手の伊藤海斗(酒田南高)を6位で獲得している。
•野手陣は底上げが鍵
チーム打率.257はリーグ2位、本塁打数183本はリーグトップ、得点663もリーグトップ。盗塁83はリーグ2位と、走攻共に強力。犠打は84でリーグ4位タイだが、攻撃的野球で覇権を取った。失策数は72でリーグ3位と守備力もまずまず。
2000本安打まであと116本で昨年40本塁打94打点、打率.312、173安打でMVPの坂本勇人(32)、打率.265ながら31本塁打94打点の若き主砲岡本和真(24)、打率.292、156安打、27本塁打89打点12盗塁の優勝請負人丸佳浩(31)が全試合出場。ベテラン亀井善行(38)も131試合で打率.284、13本塁打55打点と勝負強さは健在。この4人は今季も変わらず驚異だ。
ただ、それ以外の野手陣は少し物足りない。正捕手小林誠司(31)は盗塁阻止率.419はリーグトップも打撃が世界にしか通用しない。打撃面で期待されている捕手登録の大城卓三(27)も昨年は109試合に出場しながら6本塁打30打点と寂しい数字。正二塁手も固定出来ておらず、外野手も丸以外は固定されていないのでどうなるか。パーラの活躍次第では下位打線が寂しいことになるかもしれない。
•今季期待の若手選手
投手:高田萌生(22)
今季高卒4年目。創志学園高時代の投球が印象的で、荒削りながら球威のある球を投げていたのを覚えている。
昨年は一軍で2試合登板も防御率5.40でブレイク出来ず。二軍ではローテーションの一角として投げている為、直球以外の勝負球を身に付けることが出来れば一気にブレイクも。宮本和知一軍投手コーチも期待を寄せている為、飛躍なるか。
先発で起用するのがベターだが、個人的には闘志あふれる投球で中継ぎとして奮闘する姿を見てみたい。
野手:岸田行倫(24)
報徳学園高時代に甲子園出場、大阪ガスでは都市対抗準優勝の経験もある3年目の捕手。小林、炭谷、大城と捕手陣はいるが、FA移籍2年目の炭谷は33歳ながら捕手としてのパフォーマンスは今一つ。大城も一塁手としての起用が増えそうである為、まずは二番手の座を掴みたいところ。小林次第では正捕手もあり得るので、一軍定着を果たしたい。
•連覇への条件
投手陣は先発も中継ぎも左腕が鍵。特に中継ぎは中川の負担を減らす投手が現れるか。先発も、菅野以外は実績が少ない為、若手の台頭が望まれる。
野手陣はまずは一番打者の定着を。そして正二塁手が誕生するかが一番の鍵。少し昔の話だが、二塁手で仁志敏久がいた時代を懐かしむ巨人ファンも多いのではないだろうか。絶対的な正二塁手の誕生が待たれる。
ただ、今季も優勝候補の筆頭であることに間違いはないだろう。