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プラセボ探偵 光永理香

3  平成の米騒動

 今年、日本は冷害だったらしい。
なにやら2〜3年前にどっかで噴火した火山の影響らしい。
何でそうなるかわからないが天候が悪くお米が著しく不作だそうだ。
なんと!お米が足りないという事らしい。
このままでは備蓄してあった米も底をつくと言う事らしい。
白いご飯が大好きな私にとっては一大事だ。

 そこで政府は外国からお米を輸入するらしい。
中国やタイ、アメリカのお米がどんな物かも俄然興味が有るところだ。
だから高騰した国内米を並んで買うよりあまんじて海外からの異文化コミュニケーションを楽しもうと考えていた。
 私のレストランではタイ米を上手くつかい、グリーンカレーやジャンバラヤ何かを提供している。

 いざ海外のお米が届いてみると、細くて長い「インディカ米」と呼ばれるタイ米が多かった。
そもそも日本人のクチに合う米は日本人しか作っていなく世界には国内米のような米は少なかったらしい。

 しかしタイだけは備蓄していたタイ米をすべて日本に輸出してくれた。なのに毛嫌いする日本人が多くタイ米を「インディカ米」と言う呼び名で差別して揶揄する代名詞になっていた。
 輸出したタイではタイ米が国内で高騰して貧困層に行き渡らず餓死する人が出ていたにもかかわらず、日本人はそれを食べず破棄したり家畜のエサにした。それでも結局大量に売れ残ってしまった。

 これはひとつ私がガツンと言ってやらねばならないと思い込み、早番が終わった後「農林水産省」を訪れた。
 受付でお米が不足している問題でタイ米の扱いが酷すぎるので大臣に一言言いたいと伝えると
「でわ、こちらにお書き下さい」と紙を渡された。
「いや!私は直接物申したいんだけど」
受付嬢は「大臣は大変多忙です。個別の案件には対応出来かねます」とそっけない。
 確かにいきなり来て大臣に会わせろというのは無理があるな。「では末端の職員でも良いから話を聞いてもらいたい」と諦めないで言った。
仕事が出来る女を自負している受付嬢は咄嗟にとある部署に内線をつないだ。

 しばらくしてとある部署からひとりの男が降りて来た。ネクタイを緩め上着は前をはだけて右手は髪を掻き上げ左手はポケットに突っ込んでいた。
あまりやる気は感じ無かったがコイツしかいないなら仕方ないと自分を納得させた。

 名刺も出さずこの男はロビーのソファにどっかり座った。私の前に居るこの男は目も合わせず言った。
「あんたも米が欲しいんだろ、こんな所来たって米は無いよ」「行列に並んで割高の米を買えよ」
 私はあまりの低レベルの物言いに唖然とした。
「私は日本人のタイ米への偏見を見直して欲しくて意見を聞いて欲しかっただけよ」「国内産の米にこだわりは無いわ」
男は呆れた顔をして聞いて来た。
「じぁあんたはどうしたいんだよ」
私はココとぞばかりに言い放った。

「タイ料理のブームを巻き起こしたいの!」

つづく(3/52毎週日曜日20:00更新)

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