【SCP-3980】個人的SCP考察【盲者の手引く盲者】

注意、この記事にSCP-3980の答えはありません。
私が証明できない仮説を並べて、どのくらいの説得力が持たせられるかを考えているだけの文章となります。
それでもよろしければ、どうぞご覧ください。

SCP-3980
メタタイトル:Blind Lead the Blind
翻訳メタタイトル:盲者の手引く盲者
著者:Shaggydredlocks様
翻訳者:Red_Selppa様
本家URL:http://scp-wiki.wikidot.com/scp-3980
日本語訳URL:http://scp-jp.wikidot.com/scp-3980
CC-BY-SA 3.0

この記事を読まれる可能性のある方は、まず、3980について読んで「なんとなくわかったけどそれでも意味わかんない!」となった方ばかりだと思う為、ある程度知られている3980についての共通認識への言及は最低限にさせて頂きます。
それでも述べておくなら、「生者は死者と、死者は生者と認識されてしまう認識災害」と、一言でまとめられるでしょうか。

まず、メタタイトルの「blind leading the blind」は「知識がない人が、同様に無知な人を指導すること①」となります。この記事がまさにそうですね。
即ち、この3980の正体について語る者は、実際は3980について分かっていないと言う事になるのだと思われます。
つまり、3980の特徴について元ロック基地の“生存者”が述べている情報は、当てにできません。
しかしながら、SCP-3980記事の本文中から引用させていただくと、

・SCP-3980は自己複製している(ボンド研究員)。または自律行動を行っている (セキュリティ責任者マテウス)。または外部エントロピー性を有している可能性がある (ウォルターズ博士)
・SCP-3980実例の数は最低で5 (ピーターソン博士)、最大で10000 (オード兵卒) である。
・SCP-3980には伝染性があり、人から人へと感染する (ボンド研究員)
・SCP-3980は時空間異常である (クウェスト研究員)
・SCP-3980が活性状態に入るには自発的な人間の操作者/宿主 (D-774)、あるいは協力者 (D-209) が必要である
・SCP-3980の存在は純粋に形而上的なものであり、潜在的な情報災害性を有する −− SCP-3980の完全な認識はその人物の死を引き起こす (キム管理官)
・SCP-3980は物理的に収容不可能である。これはその大きさが100ピコメートル以下 (ナラップ指揮官) あるいは16億キロメートル (ラファエット博士) であるためである。

となります。
これを整理してみると、

画像1

といった感じです。
前述の通り、でたらめな情報が並んでいるように見えますが、その中でボンド研究員とキム管理官の情報は正確であるように思えます。
ボンド研究員についてはこの部分でしか出てこない事から、これ以上の事は分かりませんが、キム管理官についてはこの後のインタビューでも登場する為、ここでの情報が正確な点が気になります。
そのため、次はそのインタビューに焦点を当てていきます。

SCP-3980の発見の発端のなった事件が2000/2/14に起こったのに対し、“新たな情報を入手した”と主張するキム管理官のインタビューが行われたのは2014/8/1の為、その間、実に14年半近くも時が流れています。
そして、インタビューに連れてこられたキム管理官は、我々の目線から見れば確実に死体であり、更には何らかのやり取りの後に、インタビュアーを異常な状態に変えてしまいます。
「SCP-3980の異常性によりキム管理官は既に死んでいたのを、周囲の人間からは生きているように見られていた」という点は、共通認識であると思いますが、問題は「キム管理官はいつ死んだのか」になると思います。
人の死体というのは、管理状態によってどの程度原形を留めているかがまちまちなのですが、本文中でハエが飛んでいるという点を考えてみましょう。
ハエがいるということは、ウジが湧いていると言う事です。
参考文献による死体現象によれば、「ウジの蚕食が加わると死体は急速に崩壊し、早ければ成人屍(し)が10日間くらいで白骨化する②」という事になります。
つまりキム管理官は、おおよそ2週間前まで本来の意味で生きていたのではないかと推測できます。
さらにここから考えるならば、前述の「SCP-3980の存在は純粋に形而上的なものであり、(中略)死を引き起こす」という証言は、生きている間にしていることとなります。
インタビューの内容から、3980に影響されている死体は、恐らく会話していると思い込んでいる人間が勝手に妄想した内容を喋るのでしょうが、それとは別に、生前のキム管理官の言葉ならば、ある程度は信用できるのではないでしょうか。
そこから考えると、「認識すると死ぬ」という情報を持っていたキム管理官は「生前に、3980に影響されて死んだ(ように見られるようになった)人を認識した」という事になります。
ちょうど今回のインタビュアーが突然死んだ(ように周囲から思われた)ように、何かしら3980に関わった人が死んだ(ように扱われる)ところを見たのでしょう。
しかし、キム管理官自身は死んだようには扱われず、逆に死後、生きているかのように扱われています。
つまりこれは、3980がかかわった人物の生死の被認識全てを反転しているのではなく、一定の法則にしたがって死を生に、生を死に認識反転させていると言う事になるのだと思います。

一端、前までの内容を端的にまとめますと、3980は「何らかの条件を満たした死者を、生きているように見せる」異常と、「何らかの条件を満たした生存者を、死んでいるように見せる」異常の2つを別々に持っていて、「単純に生死の認識を反転させているわけではない」という事になります。
これは、ロック基地の2000年時点の死んでいるように思われた生存者が、2014年時点でも死んでいるように思われている点からも納得がいくと思われます。14年の間に本当に死んでしまった人たちは、生きているようには扱われていません。
ここで再びメタタイトルに注目してみましょう。
「blind leading the blind」、「盲者の手引く盲者」、これは、「A leading the A」、「Aの手引くA」と置くことができます。
ここからこじつけてみると、「生存者は生存者に手を引かれ」「死者は死者に手を引かれる」といった形に出来ると思いませんか?
キム管理官は生前に「3980によって死んだように見える人を認識していた」、そして「生存中は異常が発揮されず、本当に死んでから異常が発生した」。
インタビュアーは「3980によって生きているように見えるキム管理官を認識した」、そして「生存中に異常が発生した」。
この2点から、「死んだのに生きているように見える異常は、3980の影響を受けた生存者を認識した」「生きているのに死んだように見える異常は、3980の影響を受けた死者を認識した」という風に表せます。
図に表すと、このようになります。

画像2

これでもなんともややこしいですね。
単純な反転ではなく、それぞれがもう1つの異常のトリガーを産んでいる形と考えると、それっぽいかな、と思いました。
ロック基地には恐らく、生きているように見える死体(Aタイプ)が持ち込まれ、そこから多くの人が死んでいるように見える生存者(Bタイプ)と化してしまったのでしょう。
そして、前述のロック基地の生き残りとして財団に拘留された人たちは皆Bタイプを見ていたため、死後Aタイプと化してしまっているのだと思います。

しかし、疑問点がまだ残っています。
そう、財団に拘留された時点で生きていたはずのキム管理官らは、どうして死んでしまったのでしょうか。
ここで私が着目したのは、生存者全員の証言として一致していた、「自分たちのうち1人が行った破壊工作が事案ロック/3980に繋がった」という話です。
少なくとも、前述の仮説が正しければ、この証言の時点でキム管理官とボンド研究員は正しい意味で生存していたと考えられます。
で、あるならば、この犯人が1人混じっているという情報も、信ぴょう性を帯びます。
もし、3980を基地に持ち込んだ犯人がいるのであれば、100%と言わずともある程度はその異常を知っていてもおかしくはありません。
つまり、3980に影響されている生存者は、初めから死んだものと思われているか、もしくは死後生きているように見られるか、と言う事も、恐らく知っているでしょう。
3980の被影響者は、殺されてしまっても周囲の人間からはそれを観測出来ないと言う事になります。
ということは、殺人を隠すのに何らかのトリックを用いる必要もありません。生き残りに混じって帰還した犯人は、片っ端から生き残りをそのまま殺したのです。
後は、財団のインタビューに対してでたらめを吐く死体が残ります。
前述の通りですと、3980の特性についてキム管理官以外では正確な発言をしたボンド研究員が最も怪しいですが、犯人もでたらめを言って死体のふりをしている可能性もあるので断定できないでしょう。生存者のふりをした死体のふりをした犯人とかいう、ややこしすぎる状態です。
いずれにせよ、財団の全員の拘留という選択肢自体は、犯人確保の点では正解だと思われます。
最も、3980の封じ込め策としては失敗なのですが……。

最後にまとめます。
・SCP-3980は、2通りの情報災害を有する現象である。
・1つ目は、Aタイプの媒介者より感染する異常で、感染した生存者は死んだものと扱われ、Bタイプの媒介者となる。
・2つ目は、Bタイプの媒介者から感染する以上で、感染した者は死後、生きているように扱われ、Aタイプの媒介者となる。
・SCP-3980をロック基地に持ち込んだ犯人は、現場にいなかった元職員たちに紛れ脱出し、そのまま他の職員を殺してAタイプの媒介者に変えた。

こういった形となります。
何分私も専門家ではないので、矛盾等が見つかるかもしれません。
しかしながらこの記事は「盲者の手引く盲者」、私も皆さんの手を引く盲者に過ぎないのです。お許しください。
それでも、何かしらポジティブな感情を抱いて頂けたのなら、幸いです。
それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

引用
①Weblio英語イディオム表現辞典
https://ejje.weblio.jp/content/blind+leading+the+blind

②死体現象(読み)したいげんしょう - コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E6%AD%BB%E4%BD%93%E7%8F%BE%E8%B1%A1-282565

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