優しい嘘

優しい嘘

私の学生時代、もう数年前のこと。
数年前、私には親友がいた。
出席番号が隣で、彼女が生徒代表挨拶を読み上げたことをすごいねと話しかけたことがきっかけだった。私はその子と毎日を過ごして、いつでも一緒だった。彼女が学校を休んだ日、私は楽しくなかった。
少し家が遠いけれど連絡帳を渡しに行ったりもした。
毎日メールを何通も交換して、履歴は彼女でいっぱいで休みの日も途切れることなく話し続けた。私はその子が大好きだったし、大切だった。多分、彼女もそう思ってくれていたと思う。今となっては覚えてないと言われてしまうかもしれないけれど、私のファーストキスも彼女で彼女のファーストキスも私だ。二人で、口が臭かったら嫌だよねと笑って歯磨きしたことを思い出す。
友情と恋愛とをごちゃ混ぜにしても違和感がなかった。そのくらいその子が好きだったし、大切だった。

その反面、数年前の私には好きな人がいた。
かっこよくて誠実な男の子だった。私が好きになった頃には彼女がいて、とてもたのしそうだった。
満ち足りた彼の気を引くために楽しくお話をしようと心掛けていた。
席替えで運良く私は親友とその人と席が近くなり 、私はその人と話すために親友も巻き込んで色んな話をした。
やっぱり盛り上がるのは恋愛の話で、私の好きな人の話もした。その人にバレないように、必死で考えながら話をした。この分なら他の人も当てはまるから大丈夫、こっちは一人に絞れちゃうからダメなどと考えながら私の好きな人を当てさせるような話をして盛り上がった。おしゃべりは楽しかった。
親友は好きな人が居ないと話していて、私も好きな人が欲しいなぁと言っていた事。
そして、あまり乗り気ではなかったことを思い出す。

結局私は隠しきることが出来ず好きな人に好きな人がバレた。親友の目の前で。その後、放課後の生徒会室で二人で話したことを覚えている。何かの間違いだよね？と聞かれて、間違えじゃないよと笑ったことも覚えてる。

そして、私は振られた。

振られたことをわかっていたと割り切れず自分の部屋に帰って泣く日々が続いたことを思い出す。それでも、私は平気な顔をしようとした。きっと親友にはバレていたと思うし、親にもバレていただろう。

しばらくして私たちは卒業した。
親友とも、好きな人とも進学先が違くて疎遠になってしまった。けれど、親友のことは大好きだった。
好きな人は私の好きな人ではなくなったけれど、幸せな時を過ごしてくれていたらいいなぁと思っていた。
卒業して半年くらい経ち、他の同級生と話していて私は聞いてしまった。
私の親友もその人が好きだったことを。
あぁ、そうだったのかと心臓が痛かった。私に彼女が嘘を付いていたことよりも、私を傷つけないために彼女が自分を傷つける苦しい嘘を選んだことに私は苦しくなった。私は彼女が大切だったから。
その後、何度か考えたけれど彼女が私を大切に思ってくれていたからこその結果であり、私は彼女を責められない。かと言って、私が彼女の信頼を得ていなかったかと言うとそうでもない。私は彼女を大切に思っていた分、彼女も私を大切に思ってくれたのだろう。もし、順番が逆で、彼女が先にあの人を好きだと言っていたら私も同じ嘘を付いていただろう。
だから、これは必然だった。私が彼女と時間を過ごして好きになったのも、彼女と共有できる価値観が多くて好きの感覚が似ていたことも、彼女と好きな人が被ったことも、全部必然だった。当たり前にあって何もおかしくない感情、誰もが持つ感情なのに彼女は嘘をつかなければならなかった。彼女が私を大切に思ってくれていたからこそ嘘をつかなければならなかった。

私は彼女が嘘をついていたことを知れてよかったと思う。苦しいけれども、何も知らずに守られているだけで終わらなくてよかった。私は私が知らないとあなたに嘘をつく。あなたの優しさを守るために。

あれは優しい嘘だった。
あなたを泣かせてごめんね。

ありがとう、だいすきだよ。