型にはまらない僕たちは

#小説 #トランスジェンダー #青春群像劇

1話

ただかわいいものが好き
それだけなのに、「偏見」が邪魔をする。

春の教室

「見てあれ」
「女の子?」
「いや男って聞いたぞ。」
「かわいい!」
「え?かわいい?」

ある生徒を見て生徒たちはざわつく。
そこには長身だけど、まるでお人形のような女子の制服をきた男子が教室に入ってきた。

「うるさ。」

彼の名前は俵道夫(たわら みちお)15歳。
可愛いものが好きで、自身もかわいいものを身に着けたいタイプだ。

「しかたないよ。新学期だからざわつくものだよ。」
そう言った彼女は、男子の制服を着ていた。

そして、周りの目をくぎ付けにするのは、奥野すみれ15歳。

「え?かっこいい」
「かっこいい??」

こうして2人は教室内をざわつかせる。

「似合ってなくても好きならよくない?」
みちおはにらみを利かせながら、そう言って女子たちをだまらせた。

二人はいわゆるトランスジェンダーだ。

「みちおはなんでも似合うよ。」

すみれはにこりと笑うと道夫ではなく、周りの女子がすみれのイケメンオーラに充てられてキャーとわめいた。

早速二人は話題の的になっていた。

「ねぇ見たあの新入生、かっこいいけど女子なんだって。」
「知ってる。人形みたいな女顔の男子と一緒にいるんだよね。」
「情報過多じゃない?」
「かもね。でも今時じゃない。」
「そうかも」

そう生徒たちが言っている間に二人は席に着く

「さっそく噂になってるな。」
道夫は周りの声に耳を傾ける
「だね。でもこれでよかったんでしょ。」
「あぁ。可愛い制服の為にここを受験したもんだし。着なきゃ損じゃん。」
「だね。私の制服もかっこいいでしょ。」
二人はそう言って、自由なカスタマイズできる高校を選んだ理由を言う。
自分らしく着飾れる高校は少ない。
二人は自分らしくいるために男子でも女子の制服が着れるこの高校を選んだ。逆もしかり。

「だけどさ、この高校でも偏見はまだあるね。」
「ただ、かわいい服を着たい。それだけなんだけどさ。自分が見たことないものは抵抗があるんだろ。」
「そうだね。」
そう語る二人にはこうしてあべこべで制服を着る理由があった。

10年前

ある絵本がきっかけである。

それは、田舎娘がお姫様になると王子様となかよく暮せる話である。
それに感動を覚えた道夫はお姫様になると、幸せになれると信じていた。
それを幼馴染である、すみれに相談する。
「ねぇ。これみて!お姫様になると幸せになれるんだって。僕もなりたい!」
「え?」
「それに、この服かわいい!ぼくも着れるかな?」
「うん。お母さんに相談してみたら?」
「うん!」
こうして、道夫はお姫様の道を歩む。
それにつられて、道夫に淡い恋心をもっていたすみれは、「お姫様になると道夫を幸せにできない!私が王子にならなくちゃ!」と勘違いした。

二人はそれぞれ思うままに着飾って、道夫はお姫様に憧れ、すみれは王子になりきること専念した。
月日が流れてある程度大人になると、道夫はお姫様にならなくても幸せになれることを学習するが、かわいいものがすきなので、そのまま女子の格好を楽しんでした。

一方、すみれはまだお姫様説を信じているので、道夫に合わせて王子を演じていた。

道夫が幸せでいるために。

つづく?


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