オリンピックの夏 Tokyo2020のボランティア経験を思い出す
パリのオリンピックが始まった。
私は3年前、東京で行われたオリンピックでボランティアをした。
一年延期されて、2021年に行われたTokyo2020。
事前に職場の人に相談して有給をいただき、仕事は週に2日。
有給と土日にボランティアをして、最低10日参加の条件を満たせるようにした。
その頃はパンデミック2年目。感染状況は、まだ厳しかった。
メディアは、そんな中でオリンピックを開催することに反対する人たちがいると伝えていた。
職場でも、オリンピック反対派の人がいた。
ボランティアをすることは、なるべくばれないようにした。
仲のいい同僚にも言わなかった。
私が休みをとることで迷惑がかかるかもしれない、一部の人にしか言わなかった。
ボランティアは皆、オリンピックの前にワクチンを2回接種していた。
会場でPCR検査も数回した。
無観客なので、会場には人が少なかった。
感染リスクは、おそらく職場にいるより低い。
でもそんな事は、他の人にはわからない。
毎日とても暑い。だけど、会場へ向かう足取りは軽い。
慣れない路線の見慣れない景色は、ちょっとした旅行に行くような気分。
滅多にできない経験。
海外メディアの人たちが行きかい、自衛隊がたくさんいて、日本戦のある日は特にセキュリティーが厳重。
見た事のない光景に少しドキドキした。
私はメディカルという分野のファーストレスポンダーという役割で、３会場で活動した。
無観客の会場は、どこもとても平和。
暇すぎて、時間が経つのが遅かった。
SNSでボランティアの書き込みを見ると、ボランティアの役割は様々で、会場や役割によっては大変そうだった。
自動販売機には、お金を投入するところがなかった。
無料で飲み物がもらえるのは、たしか一日1本か2本と決まっていたけど、お金も入れずにボタンを押せば飲み物が出てくるので、魔法の自動販売機と呼んでいた。
毎日アイスがもらえて、スーパーカップが人気。毎日ねらっていた。
どの会場にも、近くの小学生が育てた朝顔が、たくさんあった。
早朝からのボランティアは、きれいに咲いている朝顔を見ることができた。
ある会場に偶然いらしていた橋本聖子さんと、一緒に写真を撮った。
私たちボランティアは、自宅からユニフォームを着ていかなければならなかった。
ネットで見たり、他のボランティアから聞いた情報では、オリンピックの開催を良く思っていない人たちが、電車などでボランティアに嫌なことを言ってくることもあったみたい。
こんな感染状況で、よくそんなことするよね、と思われていたのかもしれない。
同じ会場で活動していたボランティアの中には、近所の人の目が気になるからと、駅のトイレで着替えていると言っていた。
私は最初、喜んでボランティアのユニフォームを着ていたし、気持ちもオリンピックモードになって、朝から気分良かったんだけど。
その話を聞いて、少しひと目を気にするようになってしまった。
会場の近く以外では、電車の中や近所で、ボランティアのユニフォームを着ている人には会わない。
私、どう思われているんだろう。
ボランティアをした日の帰り、夕方に自宅付近を歩いていた。
犬を散歩していた女性とすれ違った時、「お疲れ様です」と声をかけてくれた。
え、私に言ったのかな？
一瞬わからず、そのまま歩いてしまった。
ありがとうございます、って言えばよかった。
無視したようになってしまったけど、私はとても嬉しかった。
嫌な印象を持っている人ばかりじゃない。
プライドを持って、このユニフォーム着て歩こう。そう思えた。
あの犬を散歩していた女性、自分の一言で、私のボランティアとしての意識や気分がこんな風に変わったとは思っていないだろうな。
いまも近所に住んでいる人かな。
私も、あの女性のような人になりたいと思う。
パリのオリンピック。
テレビには映らないボランティアを、私は陰ながら応援しよう。
心の中で、お疲れさまです、って声をかけよう。
