自分らしさを取り戻す、ラジオのある暮らし
最近、自分らしいと思える感覚を取り戻した、と感じることがある。
それは、洋楽を聞いて、気になる曲の英語の歌詞を調べて、お気に入りの曲をYouTubeで繰り返し聞く生活。
楽しいと思えることが何もない、他人と接することがない、辛い日々を送っていたことがある。
だけど今は、音楽が暮らしの一部に戻ってきた。
私らしさも、戻ってきた。
私は毎日、通勤中にラジオを聞いている。
AFN(American Forces Network)という在日アメリカ軍向けのAMで、ほとんどの時間、音楽が流れている。
私はいまアメリカで流行っている曲は、たいてい知っていると思う。タイトルや歌手の名前はわからないものもあるけど。
アプリもあるので、自宅にいる時にスマホで聞くこともある。
ラジオを聞くことが生活の一部になっているのは、30年ぶりくらい。
AFNは、高校生の時に、英語の先生に勧められた。(当時はFENという局名だった。)
英語の授業で、先生がカセットに録音したAFNのニュースをみんなで聞いた。
普段授業で使うリスニング用の英語と違い、ネイティブスピーカーの生の英語ニュースは、何を言っているのか全然わからなかった。
私は高校、大学の頃に、時々自宅でAFNを聞いて、ニュースやCMの一部を理解した時は、すごく嬉しかった。
AFNを聞きながら、英語が話せるようになりたい、いつか留学したい、と夢見ていた。
それから私は英語をかなり勉強したし、念願の留学や海外旅行も経験した。
たとえ英語に文法間違いがあっても、どちらかというと内気な私が、様々な国の人と英語でコミュニケーションをとれるようになった。
英語の勉強だけではなく、英語で専門的な分野の勉強もした。
狭い部屋でラジオを聞いていた、高校生の頃の自分を思い出す。
あなたの夢は、実現するよ。
AFNを聞いているこの一年、お気に入りの曲がたくさんできた。
気になる曲は、必ず調べる。
サビの英語を聞き取って検索したり、スマホに鼻歌を歌って検索したり。
タイトルと“lyrics”とタイプして、歌詞も調べる。
歌詞の意味がわかると、その曲を聞く時の気持ちが違ってくる。
歌詞の中でわからない英単語の意味を調べるという地味な作業は、私が10代、20代の頃によくしていたことで、私にとっては楽しみのひとつだった。
そうそう、こんな感じだった、と私らしい感覚が戻る。
AFNでは、流行りの曲だけではなく古い曲もけっこう流れる。
私が留学していた時に流行っていた曲も。
全く古い感じがしない。
その頃に見たもの、出会った人、感じた事。
懐かしい景色を思い出しながら出勤する。
ラジオを聞きながら、胸がぎゅっと切ない感じがすることもあり、その曲が流行っていた頃の事を思い出す。
これラジオでよくかかるな、いい曲だな、と思って調べると、だいぶ前の曲も多い。
YouTubeの再生回数からして、たぶんとても流行っていたのに。
その頃には、なぜか私はこの曲を知らなかったんだ、と思ってリリースされた年を調べると、自分が大変な時期で音楽を聞くどころではなかったことがわかる。
今までの人生で、音楽を聞く余裕もない時期が何度かあった。
その頃のことを思うと、この曲を知らなくて当然だ、と思う。
だけど今、その頃流行っていた曲が、遅ればせながら私のお気に入りプレイリストの一曲になり、辛かった時期の失われた時間と自分を、少し取り戻したような気分になる。
ラジオを聞き始めてから、私は自分らしさを取り戻してきた。
AFNを通して、若い頃の自分に再会した気分。
海外に憧れていた自分。少しでも英語が聞き取れると喜んでいた私。歌詞の英単語を調べて、曲に感情移入していた自分。
いつか何年も経ってから、いまAFNでよく聞く曲をラジオで聞いた時、私は何を思うだろうか。
いま過ごしている毎日を、どのように思い出すだろう。
後悔しないように生きたい。