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果物と野菜、少し文学

探究部顧問のMr.Sです。
スーパーでいちごを見かけるようになりました。
いちご好きの私にとっては嬉しい季節です。同時に、もうそんな時期になったのかと時の流れの速さに驚かされます。
いちごがスーパーに出回ると、やがてクリスマスがやってきて、気づけば新年がやってくるというイメージです。

さて、私は果物全般が好きなので(果物のおいしさには神秘を感じています)、今回は果物について(ちょこっと文学)記事にしたいと思います。

果物といえば、たびたび起こる果物・野菜論争。
果物の定義について、農林水産省の記述を見てみましょう。

農林水産省では、園芸作物の生産振興を効果的に推進するため、概ね2年以上栽培する草本植物及び木本植物であって、果実を食用とするものを「果樹」として取り扱っています。従って、一般的にはくだものとは呼ばれていないと思われる栗や梅などを果樹としている一方で、くだものと呼ばれることのあるメロンやイチゴ、スイカ(いずれも一年生草本植物)などは野菜として取り扱っています。

農林水産省HP、果樹とは

①2年以上栽培する草本植物及び木本植物
②果実を食用するもの
の2つの条件が挙げられています。

メロンやいちごが野菜として扱われていることには驚きですよね。

次に野菜の分類を見てみましょう。

農林水産省の作況調査の調査対象品目は以下のとおり分類されています。
なお、調査対象品目の全てが、指定野菜又は指定野菜に準ずる野菜に該当しています。

1.根菜類
大根、人参、ジャガイモ、サトイモ、かぶ、ごぼう、れんこん、やまのいも

2.葉茎菜類
白菜、キャベツ、ほうれん草、レタス、ねぎ、玉ねぎ、小松菜、ちんげんさい、ふき、みつば、春菊、水菜、セルリー、アスパラガス、カリフラワー、ブロッコリー、にら、ニンニク

3.果菜類
キュウリ、茄子、トマト、ピーマン、カボチャ、スイートコーン、さやいんげん、さやえんどう、グリーンピース、そらまめ、枝豆

4.香辛野菜
生姜

5.果実的野菜
メロン、苺、スイカ

農林水産省HP、野菜の区分について教えてください 回答

野菜の中でも果実的野菜という分類に、メロンやいちごは入っています。
果実的野菜について調べてみると、イオン北海道のHPに以下の記述がありました。

果実的野菜とは、野菜に分類されるもののうち、一般的には「果物」と認識されている植物のこと。
メロンは、この「果実的野菜」に属します。

イオン北海道(2022.6.16)、メロンは野菜?果物?その定義や分類について知ろう!

野菜と果物について、わかったような、わからないような。
ウェザーニュースの記事では、農林水産省以外の扱われ方について記述がありました。

農水省以外の省庁や青果市場などでは、イチゴはどのように扱われているのでしょうか。
「総務省の家計調査ではイチゴは『生鮮果物』として扱われています。バナナやスイカ、メロンも同様です。
また、東京・豊洲など全国38都市・50ヵ所(2022年6月現在)にある中央卸売市場の青果市場は農水省の管轄ですが、統計上イチゴなどは野菜でなく、ミカンやリンゴなどと同列に『果実』、つまり果物として記載されています。
海外ではトマトを果物として扱っている国もあり、イチゴを含めて果物と野菜についての明確な定義は存在していないと言っていいでしょう」(吉田さん)

ウェザーニュース(2023.2.15)、「イチゴは野菜? それとも果物? メロンやスイカやバナナは?」

明確な定義は存在しておらず、視点によって「野菜」か「果物」かは変化するという認識で今回は調査を終えようと思います。

ちょこっと文学

りんご
果物の中でも、特にりんごが好きなのですが、前回紹介した『銀河鉄道の夜』にも、りんごは登場します。

「いかがですか。こういう苹果はおはじめてでしょう。」向うの席の燈台看守がいつか黄金と紅でうつくしくいろどられた大きな苹果を落さないように両手で膝の上にかかえていました。

『銀河鉄道の夜』、宮沢賢治、青空文庫

「ああ、どうしてなんですか。ぼくはカムパネルラといっしょにまっすぐに行こうと言ったんです」
「ああ、そうだ、みんながそう考える。けれどもいっしょに行けない。そしてみんながカムパネルラだ。おまえがあうどんなひとでも、みんな何べんもおまえといっしょに苹果をたべたり汽車に乗ったりしたのだ。・・・(略)

『銀河鉄道の夜』、宮沢賢治、青空文庫

『春と修羅』には、青森挽歌という詩が収められています。

こんなやみよののはらのなかをゆくときは
客車のまどはみんな水族館の窓になる
   (乾いたでんしんばしらの列が
    せはしく遷つてゐるらしい
    きしやは銀河系の玲瓏レンズ
    巨きな水素のりんごのなかをかけてゐる)
りんごのなかをはしつてゐる
けれどもここはいつたいどこの停車場ばだ

『春と修羅』、宮沢賢治、青空文庫

檸檬

教科書の定番教材である梶井基次郎の『檸檬』という作品があります。
檸檬を手に握って、「つまりはこの重さなんだな」と言いたくなります。

私はもう往来を軽やかな昂奮に弾んで、一種誇りかな気持さえ感じながら、美的装束をして街を闊歩した詩人のことなど思い浮かべては歩いていた。汚れた手拭の上へ載せてみたりマントの上へあてがってみたりして色の反映を量ったり、またこんなことを思ったり、
 ――つまりはこの重さなんだな。――

『檸檬』、梶井基次郎、青空文庫

蜜柑

教科書には『羅生門』という作品が採用されていますが、芥川龍之介の作品には『蜜柑』というタイトルのものがあります。

暮色を帯びた町はづれの踏切りと、小鳥のやうに声を挙げた三人の子供たちと、さうしてその上に乱落する鮮やかな蜜柑の色と――すべては汽車の窓の外に、瞬く暇もなく通り過ぎた。が、私の心の上には、切ない程はつきりと、この光景が焼きつけられた。さうしてそこから、或得体の知れない朗らかな心もちが湧き上つて来るのを意識した。

『蜜柑』、芥川龍之介、青空文庫

この場面は美しすぎて、何度も読みたくなります。

おわりに

この一週間体調不良だったのですが、果物には本当に助けられました。
りんごが美味しすぎて、感動しました。
果物を生産してくださっている方々、本当にありがとうございます。おかげさまで、とても美味しい果物を食卓で食べることができています。
感謝を込めて、この記事をとじたいと思います。

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