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尽くす女
髪を振り乱して我慢して
自分のことは後回しにして
多少、身銭を切っても仕方ない
そうして誰かに尽くさないと、私に価値はない。
子どもの頃、気付いたら小学5年生のときには
母や祖母に代わって台所に立っていた。
学校から帰ると、お風呂掃除も洗濯も部屋の片付けも
私がやることになっていた。
母は私に「あなたは家事をやってくれるから好き」と言う。
友だちと遊ぶのを我慢しても家事をやらないと
私は愛されない存在なのだろうか。
ひとつ年下の弟は、学校から帰ると夕方暗くなるまで
友だちと遊んでいて、手伝いをしなくても怒られない。
一度、夕飯の支度をサボったことがあった。
母は自分の部屋で本を読んでいた私を烈火のごとく叱った。
「あなたは家事をやらないといけない人なの!」と。
私は他の兄弟に比べて何かが圧倒的に足りない。
その何かが、分からないけれど。
自分のことを我慢して家事をやらないと
その何か分からないものを埋め合わせできないんだ。
私は、ただ、ここに居るだけでは許されない。
だから、40歳を過ぎた今でも
自分のことを後回しにして我慢して
家族に尽くさないと、私の価値はないと思ってしまう。
それは、恋愛でも同じ。
酷いことを言われても、嫌だと反論できないし
貢ぐとか、多少の無理をしても金銭的な援助をしてしまう、などなど・・・
嫌われるのが怖い。
尽くさなければ去ってしまうのではないかという不安が根底にあるの。
だから、多少の無理をする。
無理をしているときの私はたぶん笑顔ではない。
そんな人と一緒にいても、楽しくない。
だから、振られる一因になっているのだろう。
夫は私との結婚の決め手になったのは
母親に似て尽くしてくれるから、だと言う。
尽くして欲しい夫と、尽くしたい私。
鍵と鍵穴のようにお互いに求めるものが一致した。
まあ、それはそれでいいのかもしれない。
最近、尽くすのが少ししんどい。
やっぱり、無理しているのかなぁ。
あまり頑張らなくてもいいんだよ
もう少し自分のこと優先してもいいんだよ
尽くさなくても、そこにいるだけで、価値があるんだよ
そんな言葉をどこかで待っている私がいる。
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