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Photo by
fujinyosakoijazz
今季最強寒波
「本年もどうぞよろしくお願いいたします」少し畏まった挨拶に
ようちゃんも「よろしくお願いします」と言ってくれた。
長袖のグレーのTシャツに黒のパンツ
グレーのニューバランスのスニーカー。
去年の秋頃からモノトーンの服ばかり着ている。
服に合わせたかのようなグレーのマスク姿に「風邪ですか?」と尋ねると「うん、だいぶ良くなったんだけど鼻水がね」鼻声の返事が返って来た。
風邪を引いているのに、寒くないのかな?
ようちゃんはいつも薄着だ。
部屋を見回して、この前渡したクッキー缶が
入った紙袋が見当たらないことを確認した。
レッスン自体はね、すごく楽しいの。
この前まで出来なかったところに、赤い〇が貰えると嬉しい。
まるで小学生の子どもに戻った気分になる。
大人になってからの習い事は進み方もゆっくり。
でも、それでもいい。
ちょっとずつ前に進めているの実感があるから。
合間に何かお喋りするとかはなくてひたすらレッスンに集中した。
話せないことが、寂しいとか残念とか感じない。
それに、ようちゃんの顔を見ても、好きの感情が湧き上がらない。
森の奥のしんと凍った湖の水面のように気持ちが冷え切っている。
その心の変化にいちばん驚いているのは、私自身だった。
「ありがとうございました」の挨拶をして教室を出た。
受付カウンターを通り過ぎるときに
お店の人に「忘れ物をお預かりしています」と
声を掛けられると考えたけれど、それはなかった。
そうか、受け取ってくれたんだ。
良かった、でもなく、淡々と受け取ってくれたんだ、と思った。
駐車場に出たら、今季最強寒波の影響かとても寒かった。
寒いのは苦手だし、いつもなら早く暖かい春が恋しいはずなのに
もう少しだけ、この寒さを味わっていたい不思議な気分だった。
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