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心霊スポットに行った話

清滝トンネルとは京都の有名な心霊スポットで、このトンネルを抜けると試峠(こころみとうげ)という、ここもまた有名な心霊スポットがある。

ここへ行った時の話。

大学一年の夏休み、女三人京都で遊んでいると誰か呼ぼうという流れになり、友人がナンパされて知り合ったという男三人を深夜12時に呼び出した。

知らない男と遊ぶのは面倒だし、やめない?って言おうとしたところで、男たちが二台の車でやって来た。

男たちのしごとが早い。しごとがデキる。

私、友人A、男1人。友人Bと残り男2人。の三人ずつに分かれてドライブしていると、私が乗る車を運転している男が「清滝トンネルって知ってる?」と、先述のトンネルの話をし出す。

続けて男は
「心霊スポットなんだけど、着いてすぐトンネルの前の信号が青だったら霊が呼んでる証拠。
次の青になるまでにトンネルを通過すると呪われる」

「その先の試峠の頂上にはミラーがある。
覗いてみて、自分がうつってなかったら死ぬ」

……

どうしようもないほどの夏、女子大生、ナンパ、深夜のドライブ、心霊スポット、男女6人…役者は揃った。

もう多分、行かざるを得ない。主役脇役が舞台に立ったのだからいざオンステージだ。
行きたくないけど。
もう一台の車の男と携帯で喋るやいなや、行くことになっていた。

ベタが渋滞した車二台が、程なくしてトンネル付近に。

男が「うわ…」と声を上げる。
男の目線の先にある信号が青だった。
このまま進むと死ぬと言われてる青だ!

男は「初めて見た」
「ごめん。窓閉めとけって後ろの車に電話して」

「次の青になるまで待たないの?」
と言うも、ブレーキはかけず進む。
私は後続車が気になり振り向くと、信号が赤になったようで、残り3人を乗せた車は止まっていた。

饒舌だった運転している男が一言も喋らない。
何とも言えない張り詰めた空気が車内を包む。

重い空気のまま出口が近づく。
息が止まりそうになりながら、やっとトンネルを抜ける。
その瞬間、安堵した全員から笑いが起こり、ゲラゲラ笑いながら「怖かった〜」と、言い合った。

そのまま道続きに試峠にやってきたので、ここはひとつ誰かミラーを覗こうという話になる。
当然の流れだ。


経緯は忘れたがもう一台の車に乗っていた男がひとりで行く事になった。

詳細はググって欲しいが、このミラーは真下を向く形で設置されているので自分を確認するには、真下まで行かないといけない。

残りのみんなはそれぞれの車から、ミラーを覗く男を覗いた。

男はほんのちょっとだけ、加トちゃんのちょっとだけよでももうちょいあるだろの世界くらい、マジちょっとだけミラーを見上げてすぐ車に戻った。

全員「何も見れてないだろうな」と思っていたので、写ってたかどうかの確認は誰一人しなかった。

そのあと、何もなかったねとか言いながら峠を下った。
うっすらと明るくなり、広めの道路に出たのでそこで缶コーヒーを買って飲んだ。

ホタルが何匹か飛んでいた。
捕まえたりする人と、それを見て笑う人とがいた。

初めてのホタルを見ながら、知らない人と遊ぶの面倒だったけどなんか良かったな。
とか思っていたら、突然老婆が現れた。
こっちを見ながら近づいてくる。
恐怖で全員固まった。

「こんにちは〜」1人の男が声を掛けた。
「はい、おはよう」と老婆は答えた。
地元のおばあちゃんが散歩してただけだった。

そして、友人宅まで送ってもらい別れた。

夏休みが明け、男のうちの1人が交通事故に遭ったと友人まで連絡が来た。

その子は青信号で運転した子でもなく、ミラーを覗いた子でもない、おばあちゃんに声を掛けただけの子だった。

呪いとか心霊とか、関係ないとこで交通事故に遭っちゃう不憫さ。

「みんなでお見舞い行こうって言ってるけど、どうする?」

まぁ、断った。
お大事に。

こうして書き出すと、うわーなんかわたしも青春っぽいことしてたなーって気持ちになる。
恋愛も、お化けも、何もなかったけど。

そう思うと稲川淳二はこの手の話でのオチは絶対怖いし、そういう話を数え切れないほど記憶してるということが何かしみじみ、一番怖くなった。

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