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三葉虫から着想を得た驚異のピントレンジをもつ「遠近両用カメラ」が誕生!

「三葉虫」は約5億5000万年前にはじまった古生代カンブリア紀で誕生し、長らく海の底で繁栄を極めた。彼らは現代の昆虫と同じように「複眼」を持っており、海中の広い範囲を見渡すことができたと言われている。複眼は無数の独立した小さな眼(単眼)の集合体であり、それぞれの目には角膜・レンズ・感光細胞が搭載されている。この複眼で敵をいち早く察知することができたおかげで、彼らは長い間生き延びてこれたのだろう。

その中でも、ダルマニチナ・ソシアリス(Dalmanitina socialis)という種はユニークな視力を持っていたことが化石研究から明らかになっている。彼らの単眼は異なる屈折率をもつ2つのレンズを備えており、焦点を同時に2つの距離に合わせることができた。そこで、彼らはこの「遠近両用の眼」を使って、近くに浮かぶ獲物と1km以上離れた所から接近してくる敵を同時に見ることができたと考えられている。

ダルマニチナ・ソシアリスの眼の構造

そしてこの度、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)は、D. socialisの眼から着想を得て、前方3cmから1.7km先まで同時にピントを合せることができるカメラを開発しはった!

一般的なカメラで焦点位置を調節するには、レンズを傾けたり、前後に移動させんとあかん。そこで、研究チームはこんなことせんでも幅広い被写界深度にピントを合わせることができる「メタレンズ」なるものを作らはった。メタレンズは、サイズの異なる数百万個のナノピラー(ナノサイズの長方形の柱で形状・大きさ・配置によって光を曲げる障害物として機能する)を、高層ビル群のように並べた平面状のレンズである。そして、ナノピラーの配置を調節することで、同時に2つの異なる焦点位置を作り出すことに成功しはったの!

メタレンズによって2つの異なる位置(木とウサギ)に焦点が合っている様子

しかし、研究チームは手前と奥にピントが合わせられただけでは満足せえへんかった。手前と奥の間の中間距離では焦点が合っていないため、光のブレやゆがみ(収差)が発生する。そこで、彼らはこの中間エリアもクリアに写すため、畳み込みニューラルネットワークをベースとして収差を補正し画像を再構成するアルゴリズムを開発しはった!

被写体までの距離が0.3 mから3.3 mまであった場合の収差を補正している様子

目の前から奥1km以上までカバーする驚異的な広さの被写界深度をもちながら、中間レンジもシャープに写し出せるカメラ。街並みや鳥の群れ、ゴールラインからのサッカー映像など、遠近同時にピントを合わせたい撮影現場で重宝されそうね。三葉虫パイセンぱねぇっす!


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