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旅心と秋の空
女心と秋の空、という言葉があるが、別に性別関係なく人間の心というものは移ろいやすいものだ。生きているのだから。そもそもこのご時世ですし、女に限定しても、という感じである。
旅も同じで、どれだけのんびりした旅であろうが、今までに見たことのない、経験したことのない事柄に、楽しくなったり不安になったりする。常に心が忙しいのが旅である。
休日の早朝の電車には、スーツケースを持った人、軽装に大きなリュックを背負った人など、明らかにこれから旅に行こうとしている人がおり、それがより一層心を高鳴らせる。どうか、道中ご無事で、と。
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一方で、こんな朝早くからスーツをビシッと着こなした人もいる。私たちのような旅人が社会から一旦離れることができるのは、代わりにこういった方が世界を回してくれているのだと、心の中で感謝する。
空港に向かう路線の電車は、ひと回り大きめのスーツケースを持った人が増えてくる。パスポート持ってきたかな、と目視する人。車内の路線図を見て、この電車で合ってるかな?と確認する外国の方。そう、旅とは不安がつきものである。村上春樹氏が著書『ラオスにいったい何があるというんですか?』の中で「旅先で何もかもがうまく行ったら、それは旅行じゃない」と書いてあったが、確かにそうだなぁと思う。旅先でのトラブルは、思い出のちょっとしたスパイスになる(そしてお土産話を聞く側からしたらそっちの方が面白いのかもしれない)。それは分かっているのだけれど、私は生まれながらに完璧主義者で自分のミスを許せないタチだ。出発する前にかなり入念に調査をする。「行ってからのお楽しみ」も旅の醍醐味であることは重々承知だが...。
だが、どれだけ入念に準備しようとも、旅では思いがけない出来事が必ずある。山形県でふらっと入ったお店の芋煮が絶品だった。なんとなく通り過ぎた道沿いにあった渓流があまりにも美しく、次の旅先になった。導かれるように入った公園が猫のハーレムだった。空を見上げたらオーロラが煌めいていた。とか。
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パリからロンドン経由で日本に帰ろうとしたら、シャルル・ド・ゴール空港からヒースロー空港の飛行機が理由も無しに欠航し、急遽ユーロスターでドーバー海峡を渡る羽目になったことがある。胃腸風邪でホテルでダウンしていたところ欠航の連絡があり、奈落の底に突き落とされた気分だった。だが人間とは面白い。そんな体調不良もすっかり忘れたかのように、火事場の馬鹿力で代替案を試行錯誤し、列車のチケットを何とか入手した。ヒースロー空港に無事着くまでは気が気じゃなかったが、道中にドーバー海峡を渡っているという事実や、ハリーポッターで有名なキングス・クロス駅を経由したりと、内心とてもワクワクした。
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これだから、旅というのは辞めようにも辞められない。