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【読書】異色の主人公に惹かれまくる〜成瀬は天下を取りに行く
デビュー作にして2024年本屋大賞、そして続編の『成瀬は信じた道を行く』も2025年本屋大賞ノミネート。
できれば文庫本で読みたかったからまだ購入を控えていたのだが、やはり読みたい気持ちが勝りこの度やっと購入した。
本日は、『成瀬は天下を取りに行く』の面白さを2点お伝えしたい。
あらすじ
物語は、成瀬あかりという主人公の、中2の夏休みから始まる。成瀬は、コロナ禍前に閉店を控える西武大津店に夏休みを捧げ、地方局のテレビ中継に毎日映ると親友の島崎に宣言する。かと思えば、M-1に出るといったり、自分自身の身体である実験をしたり、、次々に誰も想定しない行動を起こす成瀬を取り巻く周囲の反応に目が離せない作品。
面白さ① 第三者から成瀬が語られる点
本作は、章ごとに一人称が変わる。成瀬の親友、高校の同級生、部活の全国大会で知り合った県外の同級生、…と語り手が変わるが、全て成瀬について語られる。
第三者の視点から成瀬のキャラクターが分かり、徐々に惹かれていった。
そして最後に成瀬本人が語り手となる。
やっと、成瀬自身から成瀬を知ることができる。
とはいえ、それまでの章は私(語り手)と成瀬だったのが、成瀬が語り手となると"成瀬"のままである点が、これまでの成瀬の自分自身を貫き通し、飄々としているキャラクターがさらに浮き立つ。
成瀬が語る、親友への想いに、胸が温かくなる。
最終章。それまで、成瀬はなんでもできすぎるが故、軸がありすぎるが故に、周りからは変人扱いされ、クラスでも浮いた存在だった。彼女の唯一の理解者である親友の島崎こそを、成瀬も大切に思い、尊敬していることが成瀬の視点で語られ、胸が熱くなった。
また、成瀬が語り手になることで、成瀬はやっぱり変人であることもよくわかる。
そのシーンがこちら↓
癖毛が悩みで高校入学と同時に縮毛矯正を当てた友人について、(彼女は別の章で語り手となり、成瀬の直毛を羨ましがる)
「彼女は高校入学と同時に髪の毛が直毛になったが、きっと美容院を変えたのだろう。彼女の行きつけの美容院を教えてもらおう」
というフレーズがある。いやいや縮毛矯正だって!とツッコミを入れたくなった笑
この鈍感さに私は思わずクスッと笑った。
面白さ② 固有名詞が頻出、現代と同じ時が流れる点
そして、これでもかというほど、実在の固有名詞が頻出する。時代もコロナ禍〜数年と、物語がすぐそばで起こっている感覚があり、親しみやすい。
成瀬の中学時代→高校入学→高2の部活→高3の夏休み、と時が進み、細かく成瀬やその周りの変化を見られるのが面白い。別の章の登場人物との繋がりもあり、世界観を楽しめた。