日本に対外情報機関は必要か?
副題:インテリジェンスとビジネス(続編)
「ビジネスシーンとインテリジェンス」と題した拙稿がノートのアーカイブに保存されているが、以前から欲しかった書籍を最近入手・閲読する機会があったので過去の拙稿に考察などを付け加えてみたいと思い、PCに向かっています。
その書籍は
「日本のインテリジェンス機関」(大森義夫著、文芸春秋社)
著者は既に故人、絶版となっていますが2004年に執筆されたとは思えないほど教訓に富み、日本のインテリジェンスの将来はかくあるべきという提言に満ちています。
これから我が国がいかにして中国、米国、英国とインテリジェンス(とりわけ対外情報機関として)という側面で渡り合っていくべきかという命題と向き合い、極端な言い方で言えば我が国の存亡をかけた今後の在り方について再考するいいチャンスだと思ったのです。
1 インテリジェンスは毒である
筆者の大森義夫氏はこう定義しています。
(以下本文から引用)
悲惨な国際テロを防止するためであっても、テロ容疑者の周辺にインテリジェンスの布石を打つことは厳密に言えば人権の侵害を伴う。
しかし、これは社会の安全を守るために必要な「毒」である。
(中略)
民主主義の枠内に毒を使いこなすシステムを構築する工夫である・
(引用おわり)
大森氏は、このように国体の維持にはインテジェンスの必要であることを是認し、その機能をコントロールするシステムすなわち政府機構が必要であることを説いています。
大森氏がこの本をこの世に送り出した2004年の時代背景として
2001年米国同時多発テロ事件(通称「9.11」)
の直後であったことはリマインドしておかねばならないと思います。
未曽有の国際テロ事件が発生した数年後におけるインテリジェンスの未来とあり方について真剣に向き合い持論を展開された大森義夫氏の勇気と分析力に対して、インテリジェンス・オフィサーとして実務家として心から敬意を表する次第です。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
次回からは大森義夫氏が著した
「日本のインテリジェンス機関」(文芸春秋社)
から適宜引用させていただきながら、今後の課題などについて書いてみたいと思います。