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アドリブ研究 : ”Softly, As a morning Sunrise" (1)
トロンボーンのアドリブ研究 第一回(2022/5)
参加者:Kさん(香川)半熟(福山)
曲について
シンプルな曲です。A-A-B-Aの形式で、セッションでよく演奏されるのはCm。ブリッジはCmから平行調のEbに転調するのが特徴。
そこは大事にしたいところです(ロストしたときの道標にもなります…)
譜面の都合で、各セクションをA1-A2-B-A3と呼称します。
実際の作例をみていきましょう。
Kさんは四国のジャズ研の現役大学生です。四国へセッションに行って出会いました。
Kさん(トロンボーン)
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トロンボーンなので正確にいうと実音はこの譜面の1オクターブ下です。
ありがとうございます。
一見すると、使っていい音、ダメな音とかはないように思います。大きな問題はなさそう。休符は少ないかもしれないですね。これリアルに吹いてみると、ちょっと忙しすぎるかも。
ちょっとみた雰囲気だと、全体に「コード音はめゲーム」感はある。
コード「進行」というよりコードにとらわれすぎているのかもしれません。
構成音をうまく使っていますね。ただ「コード」からこなれたフレーズになっていない箇所があちこちあるかもしれません。
細かくみてゆきましょう。
A1 パート
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1,3,5小節目はCmに対し似た感じのモチーフを使ってます。フレーズの中心になりうるのでGoodだと思います。
2小節目。「G B G」は、3小節目のEbに着地するには、ちょっと繋がりが悪いかなあと思う。「G Ab F」か「G F D」はどうでしょうか。
7小節目は…これはあまりよくないですね。8のDに着地する前ですが、Cmのコードアルペジオ。これはちょっとギクシャクします。Cmのハーモニックマイナースケールを適当に利用してフレーズを作ってはどうでしょうか?
ということで少し修正。
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A2パート
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1,3小節目は同じモチーフで動かしてます。これはいいと思う。なので、5小節目も同じモチーフのフレーズだともっとよかったかなあ。
GG Eb Ebをおススメします(G G F Fでも大丈夫)
お笑いでいう「天丼」。モチーフをつなぐのはけっこう大事です。
6小節目は、経過音としてF#(Gb)を使うのはいいと思いますが、こういう場合は頭拍にコードトーン(もしくはスケールの音)を入れるのが原則です。「F#-G-F#」より「F F# F」の方がいいと思う。
なんとなく音の高さから言ってソロのピークはこの辺ぽいんですが6, 7小節目だけ低すぎませんか?オクターブ上がられるなら上げたほうがいいのかも。
A2の最後はBメロのEbΔ7に行くために転調を匂わせる2-5(Fm7-Bb7)なので、ここはそれっぽいフレージングをいれてほしいなと思います。
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Bパート
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Bメロは吹いてみるとちょっと歌いにくい。コードの構成音でなんとなくフレーズを作っていて、あまり流れる感じがしない。これについては基本的にはリテイク。5-6小節目はまあいいかな…
7小節目 FDCからきてGに解決はちょっと歌いにくい。均しましょう。
8小節目はまたF#を頭拍もっていかないように、2ウラをF#にして
「F#G AbBG」もしくは 「F# G Ab G F」でEbにつなげましょう。
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A3パート
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A1A2ででてきたモチーフも再び出てきた。Goodですね。
2小節目は前述の「コードトーン頭拍の法則」でAb F#GAbABCとして次のDに繋げましょう。
6小節目……いい加減Dm7のパターンにネタ切れ感がでてきましたね(笑)
Fの代わりに引っ掛けでF#にするかな、僕なら。
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K作修正案
というわけでK君修正バージョンです。
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まとめ
ソロの中に、無意識ではありますが、モチーフがでてきます。それはソロの統一感というか、臨場感としていいと思う。そもそもスタンダードのメロディーはあちこちに共通のモチーフがあり、それをコード進行にそって展開していることが多いです。ソロもかくありたいものです。
ただ、ちょっと気になったのが、コードアルペジオ。コード感を出すのに重要なんですが、あまりにもコードアルペジオ一辺倒であるように思いました。流れをだすためには、スケール=並びの音列も使うことが必要じゃないのかな。
コードアルペジオ。小節が変わったらまた別のコードトーン。これでは継ぎはぎな感じになってしまう。
コードトーンはあくまでフレーズ重要な点であり、その間は何らかのフレーズ、音列でつないだ方がいいように思います。
コードトーンで荒っぽくフレーズを作って、やすりがけをするように、その間に音を配置する、みたいな作業工程はいかがでしょうか?
またBe-Bopでウネウネとフレーズが動く局面で同じ音を続けて出ることも、多くありません。(もちろんモチーフで同音を連打する局面はある)
あとは経過音の使い方。経過音が頭拍に来ない原則ですね。
半熟作
では、私の作例です。
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自分で作ったソロって、あまりコメントできないですね(照)
ゆっくりアクセルを踏んでソロが盛り上がるように、序盤は抑えめに。
最高音が Abが一つだけでGまでなので、多分トロンボーンには吹きやすくポジションも無理はないと思います。
Bメロではモチーフを強調しています。
A3は、少しだけ「仕事」(寿司屋的な)をしてます。3拍フレーズを繋げ「ポリリズム」的にしました。途中Cmメロディックマイナーのフレーズで毛色をかえたりAb7っぽいGbの音を強調したり。
Softlyのフレージングについて:
Cm一発の吹き方:
AメロはCm一発の吹き方で押し通しちゃうんですが、まずはこういう「一発もの」進行の場合は細かいコードの上下を無視して、Cのハーモニックマイナーの音を上げ下げしたりしてみて試してみましょう。これも理論的にはちょっと不正確なんですが、第一段階はそれで。
iReal Proとかで音源を流しながら、このスケールの中の音を上がったり下がったりしてフレーズを作りましょう。
適当にやってみてください。
この中の音なら基本的にはOKです。
けっこういい感じのフレーズになると思いますよ。
なに?うまくいかない?
そうですね……
「フレーズのはじめに使う音はなんでもいいが、フレーズの終わりの音はなんでもいいわけではない」ことに注意してください。
慣れてきたら、次のことに注意してみてください。
1:フレーズの終わり(ブレスするところ)では、Cmのコードトーン(C Eb G と、9thのDの音)を用いると落ち着きやすい。その反面F Ab Bでフレーズが終わると、ん?ってなりやすい(間違いではないが、やや応用編の音使いになる)ようするにフレーズの解決ではCm、ということです。
2:奇数小節目にCmがくる(Tonic Chord)そこでフレーズを終えるようにする。
三度:
さらに慣れてくると音を C D Eb Fと順繰りに上がるのではなく、一個飛ばし C Eb G Bもしくは(C Eb G Bbでもいい)で上がる。
一個飛ばしだと、いわゆるコードアルペジオになります。Dから始めると D F Ab C(もしくはD F Ab Bでもいい)こうするとDm7-5 のコードトーンになる。
一個飛ばし(三度音程)で音を並べると、いわゆるコード感がでやすい。
実際トランスクライブしてみると三度音程のフレーズはとても多いことに気づきます。逆にいうと、コードアルペジオとかの基礎練をしこしこやるとアドリブでやるときにそれが活きてくるわけです。
クロマティック:
スケールを上下する時に、たとえば C (Db) D Ebと半音の経過音を使うのも有効です。この時に大事なのは前述しましたが、八分音符の裏拍に経過音を使ってください。表拍はコードトーン。
これが裏返ってしまうと、フレーズがぼんやりします。
Two-Five
2-5リックを使う段階に来ていたら、次のことに注意してください。
2-5は伸び縮みさせて良い。ただし、伸び縮みさせる場合、解決点を起点に伸び縮みさせること。たとえば、開始点であるDm7-5を、1小節目の3拍目から始めても、2小節目の3拍目(なんなら4拍目)から開始してもいい。但し、解決点である3小説目頭はずらさない。5小節目をDm7-5、6小節目をG7として大きなツーファイブを吹いてもいい。
2ー5はとりさってもいい。書いてある2-5をすべて吹かなくていいです。その場合は2−5が押しのけたであろうもとのコードを吹けばいいのですが、SoftlyのAメロの場合はCmでいいと思います。もう少しコードが動く曲の場合はケースバイケースで考える必要はあり。
Cm一発からアウトする
Cm一発でソロを吹いていると「発展せえへん!」と思う瞬間は来ます。
そのときに発展させる方法。
ヒントだけ示しておきます(詳細は省略します)
Dm7-5のところで Ab7を使う。
G7のかわりに Db7(+11)を使う(いわゆる裏コード)
G7のところで Augment=Whole toneを使う
G7のところでCom.Dim.のフレージングを使う。
半音上もしくは下、もしくは全音上・下にずらし、もとに戻る
(アウトサイドの場合も、解決としてインサイドに戻るのが大事)
アウトについてはたくさんたくさん語ることはありますが、初学向けなので、また別のところで。
おまけ:音源
基本的には譜面を見て弾いたりしてほしいと思っていますが、時間がない大人の方、in Bb, in Ebの譜面を作りたい方は是非利用ください。
音源:Notion iPadの機械音源に iReal proのバックトラックを合成しています。bpm 140でわずかながらバウンスさせています。
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