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アドリブ研 : "Summertime" (2)

 1:曲について    
 2:Kさん(tb)作例   ←Now
 3:私(tb)作例
 4:岩田さん(gt)作例

Index

では作例研究です。

四国のジャズ研トロンボーン、Kくん作例です。

作例K

Fig.1a "Summertime" by K take1 (G clef)

おー。
シンプルな音使いではありますが、これはちゃんと歌えている感じがします。ちょっと歌いにくい部分が少しだけありますが、そこは後述。
欲を言えば、一つの語法で展開している部分が多い(後述)
そこはバリエーションを検討しましょう。でも、基本的にこのままでも割といい感じですね。

Fig.1b "Summertime" by K take1 (F clef)


Aパート

Fig.2a "Summertime" A by K take1 

♪ Feelin'〜と歌詞が付きそうな冒頭。
2小節目。Am一発のところで今回KさんはこのEbの音を多用しています。
これはマイナー・ブルース・スケールと言われるスケールの特徴音、-5の音です。
Aマイナーで使えるスケールにはもっといろいろバリエーションはあるのに、ナチュラルマイナーとブルース・スケールで、バリエーションが少ないなあ、というのが、このソロの弱点ではありましょうか。
ともあれ、1〜7小節については無理がないフレーズです。
8小節目のAの音だけはE7の11thの音で若干コードとぶつかって歌いにくい。(間違いではないんですが)3rdのG#でいきましょう。

あと、4小節目。Dmの前のA7-9。C#の音をきかせましょうか。
これテーマメロディと同じでメロもCですから敢えてC#でなきゃいけないわけではないのですが、バップ的にはC#を含んだフレーズが、わりに自然であるということで、代案として示しておきます。

Fig.2b "Summertime" A by K take 2

Bパート

Fig.3a "Summertime" B by K take1 

音づかい、特に問題はありません。
Aパートで述べたように、ここもブルーススケールのEbなので「また?」感はあります。飲み会で、唐揚げ頼んで次に天ぷら出てきた、みたいな感じになります。サラダがほしい。
あとは、テーマ・メロディーの派生な感じでしょうかね。
同音が続くフレーズが多いので、その辺の部分に「ヤスリがけ」をしてなめらかにしてみましょうか。

1小節目:3ウラのGをPassing NoteでG#に変更。4ウラは上行しBへ。
2小節目:Aパートと同じEbを使ったブルージーなフレーズですが、ここは、普通にAハーモニックマイナーのフレーズにグレードダウン。G#を使っているのは、いわゆる「ハーモニックマイナー」の音です。
3小節目:ここもマイナーらしさ。でGをG#に変更。その後のフレーズもAマイナーにそって変更。
5小節目:冒頭音のGをEに変更。(G-F-Eというフレーズなので)、その後もちょこちょこ Cmaj7の範囲で変更。
6小節目:Bm7-5-E7-9のコードトーンに寄せて変更。1ウラのBbは2表のBのPassing Noteとして考えてください。

繰り返しますが、もとのソロ、メロディメイクとしては悪くないです。
ま、バップの歌い回し、スケールとか、よくあるジャズの語法を使った対案と思ってください。

Fig.3b "Summertime" B by K take 2  

Cパート

Fig.4a "Summertime" C by K take 1  

これもメロディフェイク中心。「間違い」の音は一切ないです。実際1930年代のニューオリンズでジャムセッションとかあったらこんなソロありそう。フレーズのタイム感とか工夫したら雰囲気でますよね。
ただ、まあ前述の理由で、三品目も揚げ物。
揚げ物祭りじゃあ!感はあります。
またメロディの原型が残っているので、その辺も少し手を加えてみましょうか。

1小節目:「Ebを多用しすぎ」と思って変えました。がAパートと同じ音形ですね(反省)
2小節目頭のG#に移行。同じではない、ってことで。
2〜4小節目:基調を「ハーモニックマイナー」でフレーズを組んで、最後だけEbの音を効かせるようにしました。
4〜5小節目:A7-9-Dmのコードトーンということで、ここもメロディと同じ音形だったのを、少し変えています。C#とBbが重要です。
6小節目:ここはF7なのでEbがコートドーンとして出てくる。
 逆にEb効かせるべきところ。F7の音使いでフレーズを作りました。
8小節目:E7-9のオルタードとしてのBb7を意識しています。また、3−4拍目に関してはナチュラルマイナー。F#の音を効かせています。
ちょっと「アダムスファミリー」感ありますけども。

Fig.4b "Summertime" C by K take 2


Dパート

Fig.5a "Summertime" D by K take 1

ここもメロディメイクに問題はありません。「歌えている」と思います。
作例研究ですから、いろいろ代案のバリエーションを示そうと思っていますが、代案もネタ切れ気味です(笑)。シンプルな曲は難しいですね。
2小節目:Cパートと同じく、AlteredとしてBbの音を強調しています。4ウラはハーモニックマイナー。3小節目は2ウラ3ウラ4ウラで E→Eb→Dとちょっとクリシェっぽい感じに音を移動させて、Ebを強調しています。

5小節目:ちょこちょこ変えていますが、語法的には特記事項なし、か。
6小節目はまたまたでてきたアダムスファミリー。メロディックマイナーにしています。

この多用するEbの音ですが、ブルーススケールなので、完全なEbではなく四半音で、もうちょっと低めのEbです。Ebに隣接するDは第四ポジション。Eb〜Dはスライドさせて音を調整してください。トロンボーンの人はね。

Fig.5b "Summertime" D by K take 2

修正案:

Fig.6a "Summertime" by K take 2 (G clef)
Fig.6b "Summertime" by K take 2 (F clef)

まとめ:

今回のKさん作例は、結構よくできていて、「直さなきゃいけない」音はほとんどありませんでした。
カラフルさ、の点で少し音を代案を出しています。

マイナー一発で何を用いるか?

今回のSummertimeは比較的トニックのマイナーが続く曲です。

マイナー・トニックをどう吹くか、というのは、結構難しい問題です。
いくつかやり口は考えられますね。

  1. Aナチュラル・マイナー

  2. Aマイナー・ブルース・スケール (Ebの音を加える)

  3. Aハーモニック・マイナー(G→G#)

  4. Aメロディック・マイナー(F→F#、G→G#)

  5. Aドリアン (F→F#)

Kさんは1.を40% 2.を60%くらいの割合で吹いていました。それは間違いではないです。が、おそらく2コーラス目、3コーラス目に入ると、ネタ切れ感がかなりでてくる。
そもそもナチュラルマイナーだと、4段目頭のCメジャーの部分と差がつかないので、メジャーとマイナーの差がうまく出せないという欠点もあります。
そして、2.マイナーブルース・スケールは、例えばブルースをブルーノートスケール一発で吹く、というのと同じで、コード無視していけちゃう反面、コードに即した音を吹くというバップによくある語法に切り替えにくいところがあります。
コードに即して行く場合、A/Cパート6小節目にF7が出てきて、逆にここではEbの音を効かせたいのですが、そこではスルーしてしまっている。

私個人は基本は「3.のハーモニックマイナー」で50%くらい吹きます。
(コードフィギュアで書いてある Bm7-5- E7-9もハーモニックマイナーで吹くのが最も無理がないからです)
残り 1.2.4.半々、くらいな感じで吹いているみたいです。
5.のAドリアンは、正直あまりイメージしたことはないのですが、F#単独で使う場合は理論的にはこう考えるみたい。

まずは一音だけ異なる「ハーモニック・マイナー」でメロディメイクをする癖をつけて、慣れてくれば、メロディック・マイナー、そして、メロディックマイナー、ドリアンも取り入れてみたらいかがでしょうか?

おまけ:

ちなみに冒頭なんやかや言っているのは、これですね。

アダムスファミリーを知らない若い人へ。これがアダムスファミリーです。
詳細は僕もよくわからんです。

有料音源:
iPad notionの音源とiReal Proの音源を組み合わせたものです。

修正前音源とNotionの生データです。

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