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プロってすごいよな

学生の時は、プロの奏者って、CDとかの音源やライブハウスで聴くだけの存在だった。そういう時は「プロの演奏はいい演奏」なんだけど、それをしごく当然に享受していた。
うまい演奏も「こんなもんか」って思っていた。
だってそれを比較して聴いている音源もみんなプロの音源(なんなら比較対象はレジェンドの名盤だったりする)だから。
自分とは無関係だから。

でも、社会人になって、プロの人の主催するセッションに参加したり、公開ワークショップとかで、プロミュージシャンと共演したりした。
その経験を経て今思うのは、自分らアマチュアの演奏と比べると、プロってやっぱりすげえなあ、ということ。

ジャズっていうジャンルはプロが比較的近くて、交流しやすい。
けど、やっぱりプロってすげえ。プロじゃん。
と折にふれ、思う。

ダニング・クルーガー効果

ダニング=クルーガー効果(ダニング=クルーガーこうか、英: Dunning–Kruger effect)は、ある領域において能力が低い者は自分の能力を過大評価する傾向があるという認知バイアスの仮説である。また、能力の高い者が自分の能力を過小評価する傾向がある、という逆の効果を定義に含めることもある。1999年にデイヴィッド・ダニング(英語版)とジャスティン・クルーガー(英語版)によって初めて報告された。

Wikipediaより

簡単にいうと、あんまり上手くないうちは「自分ってまあまあイケてんちゃう?」と思いがち。
だがある程度実力がついてくると、うまい人との違いがわかる。
幸いなことに、学生のときはジャズ研に所属し、ジャズに親しんでいた僕は、その後社会人の傍らの活動を通じて、今の方がずいぶんジャズ的には上達したと思う。
だから、今の方がプロの演奏を精度高く聴ける。

自分の昔に比べるとうまくなった。
 ただ、それは、所詮はアマチュア芸。
プロの人と比べたら、とてもとても……だ。

多分、手よりも耳の方が先に上達する。
そして、手は上達するとは限らない。

何重に塗り込んでいるの?

例えば、音楽の向上、完成度のようなものを、
壁に漆喰を塗るような作業だとしよう。

素人の演奏なんて、まあ最初は聴けたもんじゃないです。
壁塗りでいえば、塗り残しがあって木の地肌が見えていたり、塗りも不恰好で凸凹だったり。そんなもん。とても人前に出せるレベルじゃないわけ。

ジャズ研現役学生。現役で、できる子の演奏っているのは、まあ4-5回塗り込まれていた壁のようなもの。
一応全体にきちんと塗られてはいて塗り残しはない感じね。
でもまだムラがあったり、角っこのとことかは処理が甘い。

本業も他にあるけどライブハウスでチャージとって演奏するローカル・プロ、セミプロの人(僕も一応この辺)。
この人たちの演奏は、さすがに、10回20回は塗られていて、均一の地肌の仕上がりにはなっている。こうなってくると、素人目には誤魔化せる。

だけどね、音楽専業でやっていて、全国ツアーでまわっていたり、CDとか出している、いわゆるほんまの「プロ」の人の演奏って、なんなら300回とか1000回くらい塗られていて、ぞっとするほどのなめらかさ。
塗りのきめの細やかさが、よくみたら全然ちがう。
プロの演奏って、そういう滑らかさと堅牢さがあります。
ぞっとするほどの繰り返しとルーチンワークで、完成度が違う。

10回20回の塗りと1000回の塗りは、素人目にはそこまで違うようには思えない。
けど、ふとしたことで違いが如実にあらわになる瞬間はあるのだ。

自分の演奏でお金をとって食っていく覚悟

アマチュアで、本業があるジャズプレイヤーで「がんばっている」人は、割とシンプルに「技術的な向上」「より質の高い演奏」を目標に研鑽し、演奏活動をしているように思う。
しかし、専業プロの方の場合は、当然その要素をクリアした上で、「自分の演奏」をきちんとパッケージングして売っている。

アマチュアでのアドリブは「何を吹くか」、つまり、フレージングとかコードトーンとか、譜面にできる音韻情報のレベルで研鑽を積む。
一方、プロは音韻情報だけではなく、ニュアンスであったり空気感であったり音色も含めて「自分の出音」に責任を持っている感じだ。
その覚悟の深さにおいてプロはアマチュアの追随を許さない。
そこが一番大きな違いではないかと思う。

ピアノという楽器に関していえば、音韻情報と出音のところの差異はあまり大きくはない。
(だからか専業ではなくアマ・セミプロのピアニストにもすばらしいプレイヤーはかなり多いのかもしれない)
が、一方、管楽器奏者に関しては、プロとアマチュアの間は、最終的な出音の差が歴然としている。
よく「プロは音色が違う」みたいな言い方をするけど、それはこの違いなんだろうと思う。

* * *

「自分が演奏することでお金を稼ぎ、それで食っていく」という覚悟のある人の音は、やっぱりそういう音なんだと思う。
それはやはりパフォーマンスに最終的に反映される。

プロだから尊敬すべし、とも言えないが

もちろん、これには功罪もあるし、濃淡もある。
プロを名乗っている人が皆いい演奏をしている、とは今の僕にはさすがに言えない。(残念な例もいくつか耳にした)

専業といっても色々。
演奏で主たる収入であるとはいえ、実は実家が太い人とか、パートナーの稼ぎで食っている人とか。まあまあいるよね。

科学の分野では、例えば「進化論」を書いたチャールズ・ダーウィンは貴族のニートで、生前ほとんど仕事らしい仕事もしなかったらしい。
だから仕事としてお金を稼ぐことがすばらしい成果物の必要条件ではない。

お金を稼ぐことにこだわりすぎて、のびのび演奏できなかったり、聴衆におもねることもあるかもしれない。
アマチュアの人の、ぐっとくる演奏だってある。
採算性をはなから無視した「家賃払ってない店の味」みたいな演奏もある。

だけど、ジャズミュージシャンに関していえば、きちんとチャージをとってきちんとしたプレイヤーと演奏を続け膨大な経験を積んだ実績が、やはりその人の演奏を作り上げるのは事実だ。
真面目にコツコツとそういうステージを積み重ねないと、他のプレイヤーとも共演し続けるプロミュージシャンで居続けることはできない。

そういう意味で10年以上第一線でミュージシャンを続けている人の演奏って、やっぱり素晴らしい。

我々アマチュアミュージシャンは、やはりそういうプロの演奏をコンスタントに聴きに行き、自分と何が違うのか、をつぶさに観た方がいい。

ジャズは正直時代に恵まれていない音楽ではあるとは思う。
そういう素晴らしいプロの演奏も、集客には苦労しがち。なので、素晴らしい演奏に憧れ、目標とする我々は、もっとプロミュージシャンの演奏をライブ会場に出向いて聴くべきなんじゃないかなあと思う。

イスカンダルを目指しているけど、イスカンダルが滅んでしまったら元も子もないのだから。

(ただ、この辺りは、プロ同士の視点でいえば、ジャズミュージシャンももっとマネタイズとかマーケティングとか考えた方がいいんじゃないか、という意見もある。ミートたけしこと川村竜さんの発信とかを参照されたし)




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半熟ドクター
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