セッションにおける酒の効用
お店のジャムセッションで演奏者の飲酒はどうなの?
時々話題になります。
結論を言っちゃえば「好きにすれば?」と思う。
自動車と違って、演奏中の飲酒を禁止する法律などありませんしね。
アルコールの効用
事実として、アルコールは意識や感覚に影響を及ぼします。
アルコール(エタノール)は中枢神経を抑制します。一定量以上とると感情、思考、行動、認知機能に影響します。
運動や感覚に影響します。楽器のコントロールには繊細な協調運動が必要なので、アルコールは演奏に負の影響を与える可能性があります。ピッチやフレージングのミスが増えるかもしれない(個人差は大きい)。
軽度の酩酊は外界の刺激を遮断しがちです。緊張を和らげるかもしれませんが、演奏者同士の意思疎通をキャッチしにくくなるかもしれない。
反応時間は遅くなり判断力も低下する傾向にあります(これらが向上することはなさそう)
アルコールによる脱抑制で、気分を一時的に高揚させる効果があります。これは過緊張(あがり症)にはメリットかもしれない。
ある種のリラックス効果はあるものの演奏のパフォーマンスは若干落ちる可能性がある、という感じでしょうか。
プロはどうか?
プロのやり方が、正解に近いはずです。
多くのプロミュージシャンは、聴衆からチャージをもらって演奏する場合アルコールを入れていないようです。
要するに「仕事」の時はアルコールなし、という感じですね。
もちろん個人差もあり、ちょいと酒を入れて演奏されるミュージシャンもいます。昼間の演奏でアルコールを入れて演奏するミュージシャンはかなり稀ですから、単に生活習慣のリズムに根ざしているかもしれません。
一方、プロが、オフタイムで他の人が主催するセッションに参加する場合、アルコールを入れて演奏する事例は結構目にします。
それは厳密にいうと「仕事」ではないから、なのかもしれません。
主に聴衆を相手に演奏する場合はアルコールなしで、プレイヤーがほとんどのセッションだったらホストミュージシャンの立場でもアルコール入れる方もいます。ライブ&セッションの形式でセッションタイムになったらアルコール入れるパターンもしばしば見ます。
要するに、ライブとセッションでは、仕事における感覚が若干違うんだと思います。セッションは仕事と仕事外の中間かもしれない。
これはジャズ黎明期、クラブでリスナー向けの演奏をした後、ミュージシャンが有志でセッションをしたエピソードの残滓なのかもしれません。
もちろん、そもそも演奏する時にはアルコールを一切入れないミュージシャンも居ます(僕はそうです)個人差はかなり大きい。
セッションに行く目的は何か
要するに、自分のパフォーマンスを最大化し、いい演奏をお届けしたい場合は、アルコールは邪魔になります。
しかしセッションでは「うまく演奏する」ことよりも「みんなで」「楽しく」「演奏する」ことが時に優先されます(セッションの性格にもよります)。
そういう判断のもと、アルコールを入れることは合目的なのだと思います。
プロのありようをまとめると、こういうことになります。
ではアマチュアがセッションでアルコールを飲むべきかどうかは、結局何のためにセッションに来ているのかで答えがでると思います。
高田馬場"Intro"が代表的ですが、プロの登竜門のようなセッション。頭角を表してキャリアにつなげたい場合は当然アルコールを入れるべきではないでしょう。ただし、極度に緊張している場合はちょっとだけアルコール入れる方がいいかもしれない。
また、できるだけいい演奏をしたい、キレキレのアドリブを演奏したい、難しい曲に挑戦したい場合もアルコールは入れない方がいいでしょう。
しかし昼間の仕事が疲れた…とかリラックスして音楽を楽しみたい、とか、音楽友達と和気藹々と演奏したい場合は、アルコールありで楽しめばいいと思う。
観客のほとんどがプレイヤーでもある場合と、リスナーも一定数いる場合ではアルコールの許容度も変わってくるかもしれません。
もちろん、酩酊しすぎて演奏にならないとか、共演者に迷惑をかけるレベルはあかんでしょう(……たまにいます)。
また、酒飲んで演奏するには、酒を入れた状態で練習をしたりして、酒ありの状態で演奏することに慣れておく必要はありそうです。
でも個人的には演奏者の酩酊・泥酔で困った経験はあまりありません。
ひどい酔い方をしている人はそもそも演奏しないからね。
むしろライブやセッションでは、聴衆同士のアルコール問題で迷惑することの方がよっぽど多いんじゃないかと思う。
不適切な手拍子・足拍子をしたり。
演奏を聴かず大声でしゃべっているとか。
酩酊してグラスを落としてしまう、転んでしまう、とか。
すばらしい演奏が台無しになってしまうから。
お酒はほどほどに。
ただ、じゃあそういう人がお酒なしならマナーが良いとも限らないし、沢山飲んでお金をお店に落としてくれるという面ではお店にとってはありがたいお客さんという面もあります。
クリーンな人しか来ない店は、長続きしにくい。
まとめ
アルコールによる特性を理解しつつ、自分が何のためにセッションに行っているのかを踏まえて、適度にお酒を楽しみましょう。
むしろアルコールで迷惑をかける確率は、セッションでステージに上がる時よりも、客席で聴いている時の方がよっぽど高い、と僕は思います。しかしそれも経済効果からは一概に否定もできません。
いずれにしろ、聴衆も演奏者もお酒が入っている状態がある程度許容されているというのは、クラシックではほとんどありえないわけです。
ジャズというナイトミュージックの大きな特徴ですから、そういった歴史的な経緯を踏まえて、他人には寛容に、音楽を楽しもうではありませんか。