ジャズ研換算(2)
続きです。「達成すべきゴール」に必要なものを要素分解しましょう。
ジャズ研1年生
メジャー・マイナーの音階がすべてのKeyで吹ける。
テーマが吹ける程度の器楽演奏力
コードネームの構成音がわかる(とりあえずメジャー・マイナーコードだけ)
Diatonic Chord、Two-Five、Tonic/Subdominant/Dominant など基本的なジャズにかかわる用語をしっている。
FかBbのブルースでアドリブ(ブルーススケール一発でいいです)
FかBbかEbくらいの歌ものスタンダード曲でコードに即したアドリブができる(1、2曲でいい)
音源を聴いて自分の「スキ」「キライ」がわかる(後々変わってもOK)。これが一番大事かも。「有名だから」「レジェンドだから」とか世間的な評価とは別に自分だけの「スキ」があればなおいいです。
これくらいできていたら、まあ合格じゃない?と思う。
ジャズ研2年生
2年生は最も伸びる時期ですが、最も差がつく時期でもあります。
バイトに本格的に没頭したり、彼女彼氏ができてジャズどころではない場合もあります。ビッグバンドに時間をとられアドリブはなおざりになるとか……
ジャズ研人生あるあるですね!
代理コード、セカンダリー・ドミナント、Hmp5↓などの用語はおおかた理解している。
Be-Bopのテーマを吹ける程度の器楽演奏能力
Diminish, Augmentなどの構成音を理解し、コードのオルタードテンションについてもある程度答えられる(使えるとまでは言わない)
スタンダード曲でどの場所でどの音を吹くべきかがわかる。
3大イキリスケール、すなわち「オルタード・スケール、コンディミ、ホールトーンスケール」を知っている
4 Beatだけではなく、ワルツ、ボサノバ、ラテン、ファンクなどいくつかのリズムパターンでも演奏ができる
セッションで頻出する10−20曲の演奏ができる
尊敬するミュージシャンがいる(複数可)。その人のスタイルやフレーズをトランスクライブしたり、その人のディスコグラフィーを俯瞰できる。
まず一曲をそこそこのクオリティで演奏できる。
これがこの学年の目標。
これくらいできたら、卒業して、一旦音楽から離れても音楽を再開できる下地になると思う。
あと「スキ」は大事です。素直な気持ちだと音楽は心に届きやすい。
「スキ」を探し、そして掘り下げましょう。
ジャズ研3〜4年生
ジャズ研後半期です。
Upper Structure Triadなども含めアウトサイドの手法を知っている
セッションで頻出する10−20曲はメモリーして演奏できる(違うキーも対応できるとなお望ましい)
スタンダード曲のコード進行のアナリゼができる
変拍子などのアプローチに加え、サンバ・カリプソなどのラテン全般の曲に対して、リズムを生かしたフレージングができる
バラードが吹ける
ここまできたら、一生音楽を楽しめると思います。
複数のスタイルを知り、それの吹き分けができる。
当然達成すべきハードルじゃないな、これは。
ジャズが好きで、楽しんで続けられるレベルの目標です。
がんばってください。
まとめ:
成長の階梯を例示しました。
もちろん、あくまで『ジャズ研何年』はもののたとえです。
例えば音大を目指す中高生は、中学・高校の段階でここに挙げた要素の過半はクリアしていると思う。また、すべての要素が揃わないと上に上がれないわけでもない。単位じゃないんだから。
「ジャズ研」という言葉は、音大ではなく本道が別にあり、趣味としてジャズにかかわることを想定しています。
書いといてなんですが、趣味です。
発達段階なんか無視して好きにやってください。
おじさんをみだりに信じちゃいけません(笑)
ただ、不思議なことにジャズ研の学生、何百人も見てると、大体こういう発達の階梯に収斂するのも事実。
ここからが大事な話!
音楽は一生をかけて楽しむに足る趣味です。
大学ジャズ研の存在意義は一生音楽を楽しむための下地を作ることにある。
社会人なっても引き継げるスキルを育ててほしい。
そうでなければ、若い時の貴重な時間を費やす価値がないと僕は思う。
プロやセミプロだけが目標ではないんです。
仕事が終わって見晴らしのよいタワマンの上層階でシングル・モルト・ウィスキーをかたむけながらジョー・パス気取りでギターでバラードをつまびく。それだって音楽の楽しみ方です(わ、これ明らかにディスってるな笑)。
リスナー道を極めるのもまたしかり。
でもリスニングでさえも趣味を極めるには「下地」が必要です。
ビッグバンドに没頭するのも人生の貴重な経験です。
ですがジャズはどこまでいっても「個人」の音楽です。
自分の心の中の音楽に向き合ってほしい。
YBBJCが終わりビッグバンドを卒業しジャズとの距離がわからず、呆然とするプレイヤーが沢山いるのを、おじさんはとても悲しく思っています。
これって、中学・高校の吹奏楽コンクール強豪校の図式とおんなじです。
ビッグバンドのために音楽をするのではなく、自分のために音楽をしてほしい。