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USJ復活の立役者 森岡毅氏の本からジャズ界隈の性格類型を考察する(3)

(1)3つの特性、Tの人、Cの人、Lの人
(2)ジャズ界隈における様々な現象を性格類型で考える
(3)ジャズコミュニティのあり方を考える

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続きです。
ジャズのコミュニティにおける性格別の特性を踏まえたうえで、ではコミュニティ自体にどのようなデザインを実装すればみんなが幸福になるだろうか、ということを考えてみました。

コミュニティにもいろいろありますが、ここでは大学のジャズ研に限定してみます。が、さまざまなコミュニティでも参考になるとは思います。


ジャズ研とは

「ジャズ研」は「研究会」と命名されていながら、研究要素は案外少ない(「愛好会」でいいんじゃないか?)。
個人的な経験ではアドリブを体系的に学ぶこともあまりありませんでした(これは時代や部によって様々だとは思う)。

せっかくジャズ研に入ったのにアドリブをする人少ないなあ……卒業後もジャズを続けている人も少ないよね……そんな難しくないよ?
と私は繰り返し嘆いてきました(うぜえ先輩!)が、これは結局自分がTの人なのでTの視点で、Cの人やLの人をジャズに引き込むにはフックが足りなかったんだと思う。
別なアプローチが必要。

性格類型別の強みをいかす

(1)でも書きましたが、演奏に関してはTの人はソリストやアレンジに向いています。
一方、Cの人はアンサンブルに強みを見出しやすいかもしれません。コンボでもインタープレイ性の強いドラムやベースに強みを発揮するのかも。
またビッグバンドも強みを発揮しやすいはずです(集団行動ですから)。
Lの人は、バンドのマネジメントに強みを発揮する。その点ではビッグバンドのコンマス・バンマスに向いていると思います。大人数をまとめるジャズ研部長とかもL型人材が向いていますね。

いろんなやることを見つけよう:

ジャズ研には、演奏以外のさまざまなタスクもあります。

以前に書いたこれも、さらにTの人、Cの人、Lの人の特性認識を交えて考えると、もう少し向き不向きが明確になるかもしれない。

  • Tの人にむいている:書く・批評する・キュレーション

  • Cの人にむいている:司会・MC・交渉・営業・支援・応援

  • Lの人にむいている:バンドリーダー・予算管理・経理・備品管理・マネージャー・部長

PA・写真・録音・動画撮影とコンテンツ制作はT・C・Lいずれも有効でしょう(複数いるならタイプ別を組み合わせた方が相乗効果が得やすいかも)

ジャズ研にしろ地域のアマチュアジャズコミュニティにしろ、ある種の組織、ある種の社会です。コミュニティの中で自分に向いたタスクを見つけて、貢献してみんなに喜ばれたら、ハッピーなんじゃないかと思います。

Cの人にむけた組織づくり

何度も書きましたが、ジャズは初期状態ではTの人偏重の傾向が強い。
アドリブ、特にコンボジャズに関しては特にそうです。

多くの場合、ジャズのアドリブって、理論とかに関しては個人の自主性に委ねられる……という名のほったらかしだったりします。それがTの人の相対優位につながっているんですが、では、アドリブは頭のいい人だけのものか?といいますと、僕はそうではないと思う。

確かに、市井のアマプレイヤーできちんとアドリブする人の多くは「賢げ」な人が多いです。それは上述したとおり、独習型=T型人材しか残らなかった環境だから。生存バイアスなんですこれ。
でもね、アドリブとかジャズの演奏って、会話なんですよ。
モノローグである必要はないんです。

外国語の習得を考えてみればいいんですが、文法・理論をきっちり理解してきちんとしゃべる、というやりかたもありますけど、外国に放り込まれて必死こいてしゃべれるようになるアプローチもあるじゃないですか。
文法を体系化し言語化できなくても、とにかくしゃべってコミュニケーションした結果、ペラペラに、なんてのはよくある話。
(むしろそっちの方が発音とかアクセントとか、言語化しにくい部分は自然です)
おそらくCの人のアドリブの到達する理想のイメージはこれじゃないか。

「ようわからんけどペラペラにしゃべれる。」
ジャズにおいてもこれを目指しましょう。
ネイティブの人って、文法をきっちり言語化して言葉をならうわけじゃないけど、正しい言葉をしゃべれますよね。そのイメージで。

もちろん、こういうアプローチのためには音感とか、イヤートレーニングみたいなものは必要ですけど、論理よりもフィジカル寄りの訓練です。
そして一番大事なのはネイティブみたいに喋るために必要なのは、ネイティブが喋る場に参加することです。

だからCの人がアドリブするためには、ちゃんといい感じのジャズに放り込まれて体験するのが一番です。
できれば自分よりちょっとレベルの高いセッションに参加することをすすめる。物おじせずに。

Tの人は、そういうのなしでも、音源をトランスクライブしてアナリゼして、ある程度アドリブできるようになる可能性はある。
しかし特にCの人には生の現場が絶対に必須です。Cの人は逆に、言語化されない非言語化的な特徴をとらえて、いい感じに演奏できる可能性あり。
逆にいうと、理論的には正しいけどリズムとかがイモ臭い演奏しているコミュニティでは、Cの人は全然うまくならない。

そういうC型人材のためにはジャズ研のコミュニティの内部で、きちんとかっこいいアドリブを味わえる場=環境が必要です。

昨今のありがちな強要しないコミュニケーションでは、同じくらいのレベルで固まってレベルごとに分離していきがちです。
上手い人は下手な人とやるのをいやがる…というよりは下手な人が上手い人とやるのをいやがる、というのは最近は多いかもしれない。下級生が上級生とも一緒にできる場をきちんと設定しておくことがCの人むけのコミュニティ・デザインでしょうか。

コロナ禍で多くの部活では伝統的なコミュニティのあり方が根こそぎ絶滅してしまいました(焼け野原)。よいレベルのアドリブがコミュニティ内で調達できない場合は、プロミュージシャンを呼んだり、お店でやっているジャムセッションにいくなど外部との接点を個人の行動に任せるのではなくコミュニティとして志向するのも必要でしょうね。

Lの人にむけた組織づくり

Lはある種の「達成型」キャラ。
目標に向かって小さなゴールを作ると、そこまで頑張りしやすい。

既存の部活でも、例えばビッグバンドのレギュラー入りだとか、
定期演奏会に選ばれるバンド、とか。
そういう序列こそがL型人材にとってはモチベーションの燃料になる。
もちろん対外的な序列、たとえば山野(YBBJC)とかもそう。

ま、音楽の本質、芸術としての音楽とL要素は、必ずしも調和するものではない。
Lの人にとってはモチベーションの源泉となるような「競う」要素が、Tの人にとっては嫌悪感や忌避感を煽ったりする、というのもコミュニティあるあるだったりするわけです。
が、ジャズ研というのは聖域ではなくて、実世界に出る前の揺籃期であるわけなのでリアルワールドの「アク」がそれなりにあってもいいのかもしれない、と考え。
こういうL要素をもう少し工夫してみてもいいのかもしれない。たとえば…

  • 月間MVPを作る:毎月の定例の演奏とかジャムセッションとかの活動の中で、いい演奏をしたり、なんかしら功績があったりした場合になんか名誉ぽい称号を付与する。名誉と注目はLの人にとってはなによりもよいモチベーションになる。ただし達成できなかったら倍落ち込むので、バフでありデバフであるのが「達成目標」なんですよねー

  • 月間スタンダード:ジャムセッションでの目標曲のようなものを用意してみるのは、小さな目標に邁進しやすいLの人の性質には向いているかも。可能であれば、少しずつ理論的には複雑な曲に向かっていくように目標曲を設定していたら、知ってか知らずかレベルアップするのかもしれません。

曲の順番とかは、以前に書いたこれを参考にしてみてください。

まとめ

コミュニティデザインとして、Cの人やLの人のモチベーションをアップさせやすい仕掛けがあってもいいかもしれません。
現在のジャズコミュニティはTの人向けな要素が強すぎて、それゆえに向いていない人にとってはとっつきが悪いように思われるのですよ。
コミュニティの構成員は本来多様なものですし、多様なコミュニティの方が強靭です(レジリエンス)。
それぞれの特質にあったタスクというのは必ずあるはずです。それを見出し、それぞれが自分に向いていることをやって、楽しく暮らすことを考えてはいかがでしょうか。

私のジャズ人生はアドリブ至上主義史観に根差したものでしたが、それはおそらく世の中の一面に過ぎないと思います。エンジョイ!



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半熟ドクター
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