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アドリブ研 : "There Will Never be Another You"(1)

曲の出自:

「アイスランド」という1942年の映画で劇中で歌われた歌だそうです。
アイスランドの女性がアメリカの海兵に惚れ込むというストーリーだったそうなんですけど、その設定にアイスランドの男性陣が「ケシカラン!」と政治的な物議をかもして、そっちで揉めたんですって。
だから、せっかくの名曲なのに、ケチがついて、アカデミー賞にはノミネートされなかった。
作曲者のハリー・ウォーレンは生涯で11曲をアカデミーの賞レースに送り出し、三曲でオスカーを勝ち取ったのだそうだが、この曲は無冠なのはそういうわけ。
ま、それも無理はないかもしれない。
"But, there will never be another you" 
あなたのような人は他にいないだろう。
なんて、永遠の愛を誓いつつも、
”There will be other lips that may I kiss, but they won't thrill me, like yours used to do."
将来他の人と唇を重ねることがあっても、あなたとのキスのようにはゾクゾクはしないでしょうね。なんて言っている。
うちの国の女はそんなポッと出のアメリカ人なんぞに媚びは売らん!と、アイスランド人男性ならずとも、言いたくなるかもしれない。
せめて仮定法未来の”would”とかに、せえよ、と。

要するに、近い将来別れることはわかっているけれども、お互いにすごく好き、という悲恋の歌なんですな。昔はZoomとか携帯とかなかったから。

しかしまとまったいい曲ですよね。

映画当時はあまり人気を博さなかったが、後代、ナット・キング・コールのバージョン、チェット・ベイカーのバージョンで人気を博したそうです。

アマチュアのジャムセッションでは欠かせない曲ですね。今では。

曲の構造:

32小節の、前半・後半に分かれている、ABAC構成の曲です。
このあたりについては別項にまとめた「歌物基本系」を参照ください。
Aメロは、さらに、I'll Closeや、All of Meと同じく、3段目のサブドミナントに向けて、2−5進行で動いていく形をとり、アドリブしやすいです。

注意点としては、8段目が、定型的な2−5−1ではなく、解決点が、最後の一小節にあること(普通は最後から2小節目のところに解決点がくる)
このパターンは、まあまあ珍しい。

名演

ナット・キング・コール

バースの部分も含めて、このナット・キング・コールのテイクが、もとのミュージカルの雰囲気に一番近いものではないかと思われます。

チェット・ベイカー

これはチェット・ベイカーの前半生で録音されたもの。チェットベイカーは歌とソロがシームレスなので構成に色々なバリエーションがあって飽きないですね。

ウディ・ショウ

ウディ・ショウのコンテンポラリー前夜、というべき演奏が聴けます。学生時代にウディ・ショウのフレージングにあこがれてトランスクライブしたけど、なんか持て余しちゃった記憶があります。相方はケニーギャレット。

ソニー・ロリンズ

こういうシンプルな曲のほうが、ロリンズの「アドリブ力」とでもいうべき器の大きさが映えるような気がする。しかしテーマフェイク、癖あるなー。

スプリット・キック
Another Youの「コントラ・ファクト」で最も有名なものとしては、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズでやっていた「Split Kick」があります。これかっこいいですよね。
冒頭のMCの時点で、かっこいい。


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半熟ドクター
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