オブリ研第4回 : ”The Autumn Leaves”(1)
皆さんみてくれてオブリガード!
今回のお題は"The Autumn Leaves"いわゆる"枯葉"です。
セッションでもよくよく出てきます。ボーカルでもインストでも。
テイスト:
元曲はシャンソンというだけあって歌伴の雰囲気が近いと思います。
しかしインストものでジャズ史に残る有名なテイクが二つあります。
Cannonball Adderley "Somethin' Else"
Bill Evans "Portrait in Jazz"
の二つです。皆さんご存知ですね?
二管編成。かなり独特なイントロで重々しく始まる。スタイリッシュでクールな印象はマイルスのサウンドディレクションの賜物ですね。
このテーマではマイルスが全面的にメロをとり、キャノンボールは休み。
なんつーかマイルスとキャノンボールの関係性っぽいですね(笑)。マイルスはメロディーにオブリ的なメロフェイクも(空白を生かしつつ)入れるので、相方としてはオブリを入れたくなるけど、多分入れたら怒られるやつ。
セッションでもたまに「俺が吹いているときはなんぴとたりともオブリは入れさせねえ」くらいの形相で吹いている人いるので気をつけましょう。
「俺は帝王」みたいに一言も笑わずマイルス感だしてるけどマイルスなのは音程だけの人たまにいますよねー(ファック!)
ビルエバンスは一見さらりと演奏してると見せかけてインタープレイの密度も濃くリズムはタイトで緊張感の高いテイクです。でもさらっと聴けちゃう……という「ジャズ沼ホイホイ」感があります。
逆にそれ以外のレコードやCDのテイクはこれらに比べるとずいぶんカジュアルに感じます(特にハードバップ期の演奏)。名演とは言えないが、ロールモデルになるようなテイクはあちこちに転がっていますね。
曲の構造
コード進行もシンプルで調性も単純な曲です。
基調はGmですが、その平行調のBbメジャーを行ったり来たり。
というわけで、1・3・6段目はBbメジャー。2・4・5・7・8段目はGマイナー(悩んだらハーモニックマイナー、時々メロディックマイナー)で音を選びましょう。その原則でアドリブしてください。ジャズ研1年生はそれでOKです。
スタンダードブックのコード進行を細かくみると、後半に少しフックがあります。こういうフックの部分って最初は「??」となりますけど、ジャズのコード進行のこまかい「仕事」はこうした細部に宿っています。ジャズ研2年以降は、こういうのを丁寧に拾ってゆきましょう。
基本的なフォームが単純なだけ、アドリブだと「深く潜る」ことを要求されやすい曲でもあります。ただ、今回はアドリブではなくて、オブリですから詳細は略します。
オブリもそうしたサウンドスタイルに影響されます。フロントがコンテンポラリー系のサックスで10コーラスくらいアドリブやる気満々の雰囲気だったら、あんまりかっちりしたオブリはちょっとミスマッチかも。「なにハードバップ的なダセエことしようとしてんだよ。こっちは脳のネジ外してトぶつもりなんだよ」と睨まれてしまうかもしれません。不用意に"Butter Note"でハモったら譜面台投げられちゃうかも……(バターノートの話はまたどこかで)
過去の名演
とりあえず、私が好きなあたりをあげときます。
"Gone With Golson" Curtis Fuller とBenny Golsonの双頭コンボで、これはBenny Golson名義のCDです。
上記のテイクと違い、とてもハートフルな感じですよね。
生ハムとメロン、トマトとモッツァレラチーズのように、ゴルソンのサブトーンとカーティス・フラーのウォームな音色が合うんだよなー。
譜面は自分で頑張って作ってみてください。
1〜4段目までは、テーマのデッドポイントに対してカウンターメロディー。教科書どおりのフレージングです。オブリのメロディーの中では整合性はあまりありませんが、自然なフレージングですね。
5段目から、メロディー&オブリのコールアンドレスポンスをやめて、メロディと動きを同じにしてハモっています。7段目8段目は少しバラけて主・副の関係を曖昧に動いてます。アンサンブル感が濃厚に演出される展開です。
このオブリの「コールアンドレスポンス」(メロディと時間的距離を保つ)からハモリ(メロディと音価的距離を保つ)への切り替えは、オブリの常套手段です。まあベタネタではありますけど。
率直にいって新奇さはなく、アイデアフルであるとも思いません。が、聴きやすく滋味がある。そこらへんの食堂のなんでもない野菜炒め定食が妙にうまい、みたいな感じの演奏です。逆にこれを聴いたあと、冒頭の2テイクを振り返ると、すげースリリングな演奏じゃないですか。
それもジャズ、これもジャズです。