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私たちが楽器がうまくなる理由には2つあってだな(3)


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(2)ではコミュニティという環境に依存したモチベーションに触れました。
特に、初学の段階では、そういうコミュニティに守られて、演奏することに慣れ、自信をつけるステップが特に有効だと思います。

コミュニティによるモチベーションの欠点

ただし、コミュニティに依存した向上意欲には当然欠点があります。
「コミュニティによる淘汰圧」は淘汰圧ですから、そのコミュニティの水準以下の能力を押し上げる作用しかありません。

したがって、このモチベーションに頼っている限り、コミュニティに要求されるレベルまで向上すると成長は止まってしまう。
この力学に気づかない限りコミュニティから出ることもできない。

どこかで相対評価から絶対評価軸に切り替えて、絶対評価でうまくなろうという意思を持たないといけない。
組織ではなく、あくまで個人として上達欲をもち一意専心できるかどうか。

漫画『Blue Giant』の宮本大はこういうコミュニティ依存型の向上スタイルを一切とりません。コミュニティに属さず、ひたすら孤独に、ひたすら自分と向き合って修練を積むわけです。
あの漫画は「荒唐無稽」という意見もありますが、本質的な音楽の向上を望むなら、大なり小なりあのような自分との向き合い方が必要であると看破している点において、本質を突いているんじゃないでしょうか。

ただ、人間って関係性の生き物です。
人は独りでは生きられないものですから。
すべての人間が「ジャズ」という絶対的で崇高なものに向かって孤独に頑張るべきだ、とは言えない。ちょっと理想論にすぎると思う。
そんなハードモードではジャズ人口も増えませんし発展もしないでしょう。
みんなにストイシズムを強要することなんて、できないのです。

だからコミュニティ依存型のモチベーションを否定すべきではありませんが、その効用の限界をわきまえる必要があると思います。

成長したければ、コミュニティを移動しましょう。
マリオカートみたいなもんです。ブロンズリーグからシルバーリーグへ。

今いるコミュニティでは得られるものが少なくなったと感じたらレベルの高いコミュニティに移り、下位からスタートして同じことを繰り返す。

セッションでも、お店によってレベルの高いセッション、高くないセッションがあります。ハイレベルのセッションに果敢にチャレンジしましょう。
プライドは傷つきますけど、上達するんだったらその「傷つき」こそが有用です。

今のコミュニティに恩がある?恩義を感じているのであれば別のコミュニティでレベルアップしたことを持ち帰って還元すればいいんです。

コミュニティ内の相対評価が上の状態はインセンティブを受け取る側なんですけれども、これに安住してしまうのは、大変危険。
これは、その人個人にとっても、そのコミュニティにとっても害が大きいんです。

コミュニティの上位にいる人を見極めよう

コミュニティはある種のムラ社会です。

しかし人の動きのないコミュニティは澱みがちなものです。
コミュニティにおいて相対評価によるさまざまなインセンティブ。その受け取り方が不公平なおかつ固定されがちな場合コミュニティは澱みます。

学生のジャズ研や、各地のジュニア・ジャズ・オーケストラは一定の年齢制限があり、卒業でリセットされる。
これでコミュニティの流動性をたもち、公平性が保たれる効用がある。ジャズ研五年六年生はコミュニティから受け取るインセンティブから考えると、アンフェアな存在であるわけです。
また、多くの地方ジャズコミュニティで人の出入りや流動性がないところも澱みがちです。大体発酵していて香ばしいことになっている。

コミュニティの良し悪し

コミュニティがいい村か悪い村かは、以下のポイントで大体わかります。

1:閉鎖的かどうか

  • コミュニティ以外の活動を認めない(囲い込む)

  • コミュニティの外部を悪く言い内部の人間をやたら称賛する

  • コミュニティからでていった人間をよく言わない

  • コミュニティの主催者・上位者がコミュニティよりもレベルの高い場所に決して近づかない

フェアであるかどうか:

  • コミュニティのルールが不明確(ダブルスタンダード。コミュニティ内の年功序列。在籍が長い人が威張っているとか)

  • 主催者の好悪で評価が歪められる(コミュニティ内の相対評価と絶対評価が著しく異なる)

  • 金銭的・作業負担などが、著しく不公平

一定頻度で権力欲や独占欲の強い人はいて、そういう人が長くコミュニティを運営していると、閉鎖的でアンフェアな新興宗教じみた感じになることがあります。

また、よくないのが閉鎖的なコミュニティの上の方でいい顔している人(コミュニティ内の相対評価は上位)が、コミュニティ外の絶対評価ではそんなにうまくないギャップゆえに、コミュニティを「閉じる」パターンね。
自分がコミュニティから出ない、はまだいい。
けど、コミュニティの枠を超えて伸びようとするメンバーを抑え込もうとしたり、向上心のある人の翼を折るパターン。クソですね。

ただまあ、よこしまな意図で作り上げられたコミュニティ=ゴミではなく、アンフェアなコミュニティから素晴らしいプレイヤーが生まれることもありうるのが、人の世の面白いところだと思います。

まとめ

  • しかしコミュニティ内相対評価によるモチベーションでは、コミュニティのレベルを大幅に超えて上達することはできない

  • コミュニティの良し悪しはオープンかどうか、フェアかどうかで見極めよう。

つらつら考えましたが、しかしジャズ勢なんて、犬型社会よりは完全なネコ型社会で、吹奏楽やオーケストラの組織のあり方に比べたら、まあ全然ゆるゆるな気もしてきた。

ちなみに、こんなしたり顔で書いてますけど、私医学部で一留しているもんだから、ジャズ研七年まで在籍してたんですよね。
なぜ自分がそういう行動をとっていたか、書いていてよくわかりました。
冷や汗出てきたわ。

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半熟ドクター
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