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日本語読解の基礎#5 「非文」の問題点

私たちが日常的に使う言語は、文法の規則に従うことで、他者に正確に意図を伝える手段となります。しかし、これらの規則を破る「非文(非文法的な文)」が生じると、意思疎通に深刻な問題が発生する可能性があります。この記事では、非文の定義、具体例、および非文が引き起こす意思疎通の問題について解説します。



「非文」とは

「非文」とは、文法的に正しくないために、通常の意味解釈が困難または不可能な文のことを指します。非文は、文法規則の一部が欠落していたり、構造的に誤っていたりする場合に発生します。これにより、文が不自然に感じられるだけでなく、聞き手や読み手に誤解を与えたり、全く意味が通じなかったりします。

非文は次のようなケースで発生します:

  1. 主語と述語が適切に対応していない。

  2. 修飾語が誤って配置されている。

  3. 接続詞や助詞が不適切に使用されている。


非文の具体例と解説

1. 主語と述語の不一致

非文:
「私の友達がピアノを弾くのが上手で、絵も。

→ この文では「絵も」の部分が述語と対応しておらず、文法的に破綻しています。

この文は、「絵も」以下の文節が省略されています。通例、「省略」は、以下の場合に用いられます:

  1. 既に明示されている語句を単純に反復することを防ぐ場合 (冗長性の回避)

  2. 読み手にとって文脈的に推測が容易だと想定される場合

この文は、1.に従って述部を補足すると「絵も弾くのが上手だった」となり、文意が通らなくなります。2.に従えば、読者の解釈力に頼り、絵も描くのが上手だ」と述語を補完させ、文意を推測させることができます。しかし、書き手としては不親切であると言わざるを得ません。

修正例:
「私の友達はピアノを弾くのが上手で、絵を描くのも得意です。


2. 接続詞や助詞の誤用

非文:
「寒かったけど、行かなかったので。」

→ 文末の「ので」が接続されるべき述語を欠いており、不完全な文です。

「ので」は因果関係を表す接続助詞ですが、その後に続く文がないため、受け手は結論を勝手に補わなければなりません。

修正例:
「寒かったので、行かなかった。」

→ 理由と結果が明確になり、文が完結します。


非文が引き起こす意思疎通の問題

非文が使われると、受け手は次のような問題に直面します:

1. 誤解の発生

話し手や書き手が意図していない意味に解釈される可能性があります。

2. 負担の増大

非文は受け手に「正しい意味を推測する」という余計な負担をかけます。この負担は、特に日常的な会話やビジネス文書では大きな障害となります。

3. 信頼性の低下

文法的な誤りは、話し手や書き手の能力や信頼性に対する疑念を引き起こします。特に公式な場では、非文の使用が信頼関係を損ねる要因になり得ます。


非文を防ぐためのポイント

  1. 主語と述語を明確にする
    文の基本構造を確認し、主語と述語が適切に対応しているかを見直しましょう。

  2. 修飾語の位置に注意する
    修飾語がどの要素にかかるかを意識し、不明瞭な配置を避けます。

  3. 因果関係を完結させる
    接続詞や助詞を使う際は、文が論理的に完結しているか確認しましょう。

  4. 他者に確認する
    作成した文を他者に確認してもらうことで、自分では気付けない非文を発見できます。


終わりに

非文は、文法的な正確さを欠くことで、意思疎通にさまざまな問題を引き起こします。しかし、基本的な文法規則を守り、文構造を意識することで、非文を防ぐことが可能です。正確で分かりやすい日本語を使うことは、情報伝達の質を高めるだけでなく、円滑な人間関係の構築にも寄与します。

もちろん、非文を効果的に使うことで、印象的な表現を創出できる可能性はあります。しかし、非文であると理解して使いこなすことと、非文の知識を持たずに破綻した文を作り出すことの間には、大きな隔たりがあります。

ぜひ、この記事を参考に、自身の文法意識を見直し、効果的なコミュニケーションを目指してください。


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