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【考えさせられる話】願うことも許されない…が行き過ぎて願いを忘れる

みなさんが頑丈な壁に囲まれた部屋に入り、なぜかドアの調子が悪くて出られなくなったとします。連絡手段もない。となれば、もちろん「どうすればドアが開くか」で悩みますよね。分厚い頑丈な壁をどうこうしようとは思わないはずです。なぜなら、もう壁がどうにもならないのははっきりと分かっていて、悩むに値しないからです。そんなとき、壁のことは意識から抜け落ちます。これはおかしなことではありません。

この壁の話をほったらかしにして話が変わりますが、過去の相談でこのような話がありました。ある女性は、半ば結婚を約束したような安定的な彼氏がいるにもかかわらず、職場の男性と浮気を繰り返していました。浮気相手の男性にも安定的に付き合っている同棲中の彼女がいるので、その男性に誘い込まれたとき、「何も期待しないし期待されないし気楽な関係だな」と思って話に乗ったのです。そんな関係が1年続いたころ、自分が彼氏からプロポーズされ、既定路線に反することなく結婚が決まりました。それを浮気相手の男性に報告したところ、「おめでとう」と普通に言われて、「じゃもう不倫になるから会えないね。代わりを見つけなきゃ笑。まぁおれもそろそろ結婚かな」とも言われたのです。それを聞いて彼女は、仕事が手につかないほどに落ち込みました。

まぁここであれこれ恋愛話を読んでいるみなさんから見れば、べつに難しい話ではないでしょう。要するに浮気しているうちに浮気相手の男性のことが好きになって、自分も最初は「気楽な、割り切った関係」のはずだったがそうではなくなった、なのに相手のほうはあっさりしていてしんどい…というだけのことです。

でも本人はモヤモヤするだけで、なんで自分が落ち込んでいるのか分かりませんでした。本人にとっては自分の気持ちの理解がなかなか難しいのです。自分も割り切ってこの関係に臨んでいるはずで、安定的な彼氏がいて、先に結婚の話が進んでいるのは自分だし、彼氏に対して罪悪感もあるし、この関係はいずれ終わらせなければいけないものだと分かっている。だから浮気相手の男性が言っていること(もう関係は終わりだね、という話)に対して何の利害の対立もないし問題がない。そのはずなのに、確かに気持ちはモヤモヤしているから、このモヤモヤは何なんだ・・・という混乱をしているわけです。

なぜ自分の気持ちが分からないかというと、一つは「自分も割り切って関係に臨んでいるはず」のように、「はず」という間違った(今は当てはまらない)認識がいくつも覆いかぶさっていて心と合っていないからです。

そしてもう一つが、今日のテーマです。最初に出てきた、閉じ込められた部屋の「壁」の話です。自分にも相手にも安定的なパートナーがいて結婚も視野に入っている状況なわけで、「この浮気相手の男性と付き合いたい」などという願望は抱いてはいけない、そう願っても無駄、と思い込んでいるからです。この浮気相手の男性はこの関係に対して明らかに割り切っていて、交際中の彼女を第一に考えているのもはっきり見えていて、相談者の女性が付き合いたいと願えば悲しい結果になるのは分かり切っていました。だからこそ、自分も「割り切っている」「自分の彼氏と結婚するから浮気相手はまぁ二の次」のように思いたがって、浮気相手と付き合うことは願わないようにしていたのです。どうにもできない壁を突破しようという考えそのものが浮かばないように、もう「浮気相手の男性と付き合いたい(愛されたい)」という発想は浮かんでこなかったのです。浮かばないよう、望まないよう、無意識が配慮してくれたのでしょう。それが防衛機制として、傷つくことを自動でガードしてくれた結果なのです。

でも、素の欲求としては「浮気相手が好き。愛されたい」が強烈に動き出してしまっているわけですから、そんな心の動きが何なのかよく分からない、なんで落ち込んでいるのか分からない、と混乱していたわけです。本人は「好きとか愛されたいとか、そんな願望はない」とすら思っていません。その願望があるとかないとか、それ自体が遠いものなのです。

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我々は何らかの願望があっても、それがもう「絶対」というほど叶わないものであれば(そう感じているものであれば)、「願ってはいけない」と思うレベルを通り越して、願望があるとかないとかも意識しなくなります。それはもう「ないという前提」になってしまうのです。そして、欲求が疼いたときに、まだ「願ってはいけない」と思うレベルで留まっていれば「願ってはいけないことなのに、求めてしまって苦しい」と認識することができますが、もうそのレベルを通り越していると「この気持ちが何だか分からない」というモヤモヤ状態になるのです。

絶対に表に出てきてはいけない気持ちや、もうとっくに諦めきってしまったような願望などについて、何らかのきっかけでその気持ちが動き出したり願ったりしたときには、モヤモヤするだけで解釈できなくなります。もしみなさんに「よく分からない自分の気持ち」があるのなら、それは「~のはず」という思い込みが間違っているか、自分にとんでもない蓋があって(抑圧が強烈すぎて)、セキュリティ上、その気持ちへのアクセスが禁止されているのかもしれません。
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