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美術系高校のメリットデメリットと思い出話

まずみなさん美術系高校の生徒と聞いてどんな印象を持ちますか?天才の集まり?変わり者集団?美術の勉強だけをしてる? 
間違ってはいないのですが、中身はそんなに普通の高校生と変わらなかったりします。世間的に美大の存在はよく知られていますが、あまり知名度がなく、数もない美術系高校。その上募集人数がかなり少ないのでどんな生活をしているのか知られていないかと思います。
実際、私も美術系の高校出たなんて人、社会に出てから会ったことありませんし、聞いたこともありません。増してや地方ともなれば1校あるかないか程度の数なのでかなりレアな存在と言えます。
ここではあまり知られていない美術系高校について詳しく書いていこうかと思います。


入試

美術系高校の入試は私が知っている範囲だと、学力試験+美術の実技試験という形でした。学力試験と実技試験の比率が知らされることは無かったのですが、おそらく"学力枠"と"実技枠"があるよね、というのが通説でした。(なんとなく分かってしまうぐらいには落差がありました)

入試の再現デッサン(高1)
私たちの代の課題はペットボトル、箱、タオルで
1時間半でのデッサンでした。
高3になってから再度入試の再現デッサンを行ったものです
3年間でこのぐらいの画力の変化があります


入試の準備として2つのルートが存在します。

1、美術予備校に入り、授業を受けて入試対策
2、美術の先生に教えてもらい、入試対策
3、完全独学での入試対策

まず、1、美術予備校に入り、授業を受けて入試対策  から説明していきます。

普通の予備校のように美術にも予備校があります。絵画教室よりも専門的かつ受験に向けての対策を行うのが美術の予備校になります。授業では、課題の提出や模擬試験を通じて、実技試験に必要なスキルを身につけるだけでなく、試験でよく出題されるテーマや形式についても把握できます。また、美術予備校の講師は、受験の傾向に精通しており、個別に指導をしてくれる場合が多いため、自分の弱点をしっかりと克服すること可能なのが美術塾になります。
美術塾に通うメリットは、2つあります。
1つは集中的な指導を受けられる点です。試験内容についてほぼなにも知識がなくとも、なんとかしてもらえます。かつ専門的なカリキュラムに沿って学べるため、効率的に準備を進めることができます。
2つ目は仲間と切磋琢磨しながらモチベーションを維持することもできます。また、同じ目標を持つ仲間と一緒に学ぶことで、互いに刺激を受けることができ、技術の向上にもつながります。
デメリットは主に3つ。
まず1つは費用面です。授業料他、画材費などもかかるため、一般的な予備校と同程度またはそれ以上の金額がかかることです。普通の予備校にも通う場合だと2倍の金額の負担となるため、大きな負担になります。
2つ目は時間面です。美術予備校は都市部に集中していることが多く、学校から時間をかけて通っている学生も多いです。遠方への通学に慣れていない生徒には負担になることもあります。
3つ目は予備校によっての落差が激しいことです。美術はまず明確な基準がある訳では無いため、その予備校や教員によって言うことが違う指導の方向性が違うなどはありがちな問題です。方向性を見誤らないためにも複数校ある場合はそれぞれで体験授業を受けてみるのがおすすめです。

2、美術の先生に教えてもらい入試対策

メリットはお金がかからないこと、かつ時間に縛られずらい所でしょうか。ただ美術の先生=美術系高校に詳しい先生ではないのでどうしても先生のレベルに左右されがちである程度実力のある人でないと厳しいかもしれません。(私は美術の先生に進められて美術予備校に行きました)
私のクラスは美術予備校の夏期講習と冬期講習のみ+美術の先生に教えてもらっていた、というパターンが半数以上でした。

3、完全独学での入試対策

正直クラスに1、2人いるかいないかなんですが、たまにいます。この天才みたいなタイプ。
知り合いにも1人いるんですが、とんでもなく絵が上手いけど美術の先生と馬が合わず、お金もかけられないので、1人で試験内容調べて何回か書いたら受かった、という人なのでほんとうにどうなってるか分かりません……。
予備知識も何も無いままのスタートになるので、よほど勉強熱心じゃない限りはおすすめしないです。

授業について

学校によって差はあるかと思いますが、美術系高校とは言えど、普通の授業もありますし、勉強もそれなりにします。
ただ、1年2年3年と学年が上がるにつれてどんどん美術の比率が上がっていく場合が多いです。
私の場合は普通科の中の美術コースということもあり、3年生の授業の3分の1が美術でしたが、美術科だと半分ほどは美術になると考えても問題ないです。
(金曜日が1、2時間目しか普通科目が無くて、4567時間目全部美術だったから楽しかったなぁ……。)

美術の先生が5人いてそれぞれ担当分野が違ったのでかなりいろいろな分野を学ばせて頂きました。
私は建築・ファッションの専攻だったんですが、絵画もメディアも彫刻も全部学んだので何でも屋的な動きが出来たりします。
授業は専攻授業・素描・総合美術の3科目に分かれていて、

専攻授業·····絵画・メディア・建築ファッション・彫刻に分かれそれぞれ授業
絵画は油絵や水彩、メディアはポスター制作や映像制作、建築ファッションは建築模型やシルバーリングの鋳造、彫刻は粘土彫刻や木工といった感じでした

素描·····木炭デッサンやクロッキー、自画像などを制作(私絵画じゃないのにどうして素描必修なんだ的な文句を言った記憶はありますが、今となっては大事な時間だったなと思ったりもしています)

総合美術·····普通科で行う美術のような課題を出されて自由に制作。卒業制作の時期などになってくるとここでやっていいよ的な許可が出たりします。

ここは学校によってカリキュラムが違うかと思うので、要チェックです。一部ですが、アナログ主義的な学校もあり、そうなるとデジタルイラストや動画系の方向に進みたい場合かなり困ります。なのでその辺は説明会で確かめるか卒業制作展に行ってみるとわかりやすいかもしれません。1点もデジタル作品がなく、全てアナログ作品の場合、アナログ主義的な学校の可能性が高いです。(アナログを極めたい人にはおすすめです)

日常風景

1番違うのがここです。まず、「絵を描けること」が当たり前として日常が進みます。授業中、休み時間、放課後、日々のあらゆる時間常に誰かが絵を描いていて、常に誰かが絵の話をしている生活が当たり前になります。
高校3年間この生活をしたせいで進学した際に誰も絵を描く人がいない……!!とカルチャーショックを受ける人も多いです。
昼休みぼーっとしていると誰かのクロッキーのモデルにされていたり、授業中顔を上げてみると絵を描いている人か寝ている人しかいないなんてこともありがちでした。移動教室があれば授業道具+クロッキー帳、スマホには必ずアイ○ス、普通科から「支給されてるの?」と聞かれるぐらい所有率の高かったiPad、授業中は隙あらば作品のアイディア出し。どこに行っても必ず絵が着いてきます。なので美術系高校では、勉強のモチベが無くなるよりも絵のモチベがなくなる方が圧倒的にしんどい思いをします。なので3年間絵を描き続けたいと思う狂人だけが入った方がいいです。

絵を描いて勉強して締切に追われて遊んで絵を描いて描いて描いて。高校3年間を考えると圧倒的に勉強していた時間よりも絵を描いていた時間の方が長かったと思います。

そして、美術系高校には発達障害だったり不登校だったり、親に問題があったりと何かしら理由を抱えている生徒が多いです。多動の気がある人が圧倒的に多いですし、机から荷物がはみ出している人、いつも遅刻してくる人、締切の守り方すらわからない人、持病がある人、小・中学時代に不登校で学校に通ったことがあまりない人、親に問題があり兄弟の面倒を見なければいけない人。例を上げるとキリがありませんが、美術系高校はそういう人たちにとっても生きやすい場所だったりします。
各学校で「変わった人」扱いされていた人達だって集まればそれが普通になりますし、皆の頭の中は美術の事ばかりで、まわりへの興味があまり無い人がほとんどです。
私も美術系の高校に進学するまで、友人もいるし避けられている訳では無いけどずっと「個性的」「変わってる子」として扱われていたので、どんな個性も当たり前で普通として扱われることに随分と安心した記憶があります。

日々の生活

日々のスケジュールはこんな感じでした。
6:00 起床
6:30〜8:00 通学
8:30 HR
9:00〜12:30 授業
12:30〜13:30 昼休み
13:30〜16:00 授業
16:00 HR
16:10〜19:00 部活
19:30〜21:00 下校
21:00 夕飯
21:30 課題が終わり次第絵を描く
24:00 就寝

普通の課題+美術の課題になるため、あまり自由な制作時間はありませんでしたが、それでも皆合間をぬって自分の好きな物を描いていました。というか課題以外の制作をしないと心が死んでしまうので絵の息抜きに絵を描くというのが日常でした。

大会や卒業制作ともなれば、部活が長引くことも多くありましたし、デザイン画を持ち帰る日はアルタートケースが風に煽られて大変でした。帰り際にコンビニに寄ってホットスナックを食べながら帰るのがとても好きだったことも覚えています。こういう思い出は普通の高校生とあまり変わりません。

部活動

基本的には美術部以外の部活は不可能に近いです。
運動部に入っている子もいましたが、体力おばけまたは筆がかなり早い子でした。それでも、他の子よりも制作時間を取るのが難しいから、とキャンバスを持ち帰ってるのも見たことがあります……。
大半は美術部だけの場合が多いです。
私は
1年生·····美術部+漫画イラスト部+ESS部(顧問が嫌すぎて退部)
2年生·····美術部+漫画イラスト部+華道部(師範が嫌で退部)
3年生·····美術部+漫画イラスト部

というパターンでした。3つ兼部できるという学校の制度をフル活用した結果がこれだったので今考えると美術部と漫画イラスト部だけで良かったのでは???という気がしないでもないです。

楽しいこと

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