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やさしさについて

最近、「ドラゴンボール超(スーパー)」を見ている。

いま、「力の大会編」に突入した。
ざっくり言うと「負けたら地球が消滅する」という戦いが、いま、始まる。
という、始まる直前のところ。

「力の大会」には10人の参加者が必要で、
悟空と、息子の御飯がメンバーを集めていくんだけど
御飯が「地球が消滅すると言ったら、みんなが混乱する。そのことは伏せて、メンバー集めをしましょう」と、悟空に提案する。

悟空は、代替案として「賞金として、1000万ゼニーが手に入る」と嘘をつく。
※ゼニーは、ドラゴンボールの世界の通貨

のだけれど、
メンバーの大枠が決まったところで、この嘘がバレてしまう。

ドラゴンボールという物語は、悟空が本当に子供の頃から始まり、
その悟空は、現在ふたりの子供の父。
長男の御飯には娘もいるので、もうお祖父ちゃんだ。
今回の「力の大会」に参加する旧友たちとは、数十年来の付き合いとなる。

嘘がバレて、悟空は、めちゃくちゃ怒られる。
「なんでそんなに大事なことを言ってくれなかったのか」と。

ここで、代表して悟空を叱りつけるのがクリリンだ。
悟空が、ほんの子供頃に一緒に修行をしていた相手。
幼馴染、兄弟弟子、
こんな言葉じゃ足りないくらい、悟空とずっと一緒にいた相手だ。

あまり悪びれもせず、「とにかく金は払う」という悟空に
「金で釣るなんて最低だ!」と言う。

「みんなが混乱するから黙っていた、という御飯の気持ちもわかる」と前置きした上で、
「でも俺が一番怒っているのは、こんなに大事なことを、地球がなくなるってことを、言ってくれなかったってことだ」
「俺達は、ずっと一緒に戦ってきた仲間じゃないか」

そして、悟空はもう一度クリリンに頭を下げる。
今回の戦いでは、クリリンのような機転の利いた戦い方が必要なのだ、と。

「だったら最初からそう言え」と、そう言いながらも、クリリンは出場を了承するのだ。

やさしさって、なんだろう。
わたしは、そんな風に思う。

「みんなが混乱するから、地球が消滅することは黙っておきましょう」と
最初に言った、御飯のことをわたしは責められない。

嘘は悪だと言いたくないけれど、
嘘をつく前に、「言う言わない」は自由だと、わたしは思っている。

そのうえで、「1000万ゼニーの賞金」と嘘をついた悟空が悪かと言えば、そうとも言えない。
悟空は、御飯との約束を守るうえで、「10人の仲間を集める」という使命を背負ったのだから、
必要な嘘だった。というような気がする。
おとなになった戦士たちには、家族や仕事もあるのだ。
「大会? おもしろそーじゃん、行く行く!」とはならない。

やさしくしようとしたのだ。
大事だったんだ。
悟空も、御飯も、「ずっと一緒に戦ってきた仲間」だから。

「だから最初から言えばよかったじゃん」というのも安易過ぎるので、
この疑問に、答えがないことはわかっている。


わたしだったらどうしただろう。
「世界がなくなる」規模のことは、日常生活に起きないので、「この場合どうしたか」と考えるのは難しいけど、
やっぱり、大切な人ほど、嘘はつきたくないし、
わたしが「大切な人」と思っているひとたちは、
ちょっとやそっとの出来事には、揺らがないでいてくれる気がする。
揺らいでも、「わかった」と、
言ってくれるような気がしている。
少なくとも、わたしはそういう奴でありたいし、
大切な人が、意味不明な提案をしてきたら、ちゃんと問いただしたい。
大切な人が、その人自身の信念に背くような生き方をしていたら、ちゃんと叱ってやる。
怒るのなんて、苦手だけど。


それでもクリリンが怒ったのは、悟空が大事だからだよね。
もう、この話で何が言えるか、
たったひとつの回答があるとしたら、クリリンは良い奴。これに尽きる。


そうしてわたしは今日も、やさしさについて考えながら眠る。
やさしさとは、各々の正義のことなのかな、と思う。
そして正義というのは、人によって違ってゆくから
やっぱり難しいし、答えがないから
大切な人とは、出来る限りこの価値観を、理解し合っていきたい。
そんな風に、思っている。




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松永ねる
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