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カーテンのすきまから

 朝、起きられなくなった。

 もともと寝起きがいいほうとか、そういうわけではないのだけれど
 飲んでいる睡眠薬が効き始めたからかもしれないけれど
 朝、あまり目覚めなくなった。
 本来は朝日の届く、この部屋で、わたしは夜に囚われている。

 試しに、カーテンをすこうし開けてみた。
 最近は夜も寒いし、ビシッと閉めていたのだけれど、ほんとうに少しだけ。
 外の景色を見るのが好きなので、レースカーテンはもともと薄め。
 もっと防御力が高いものもたくさんあるのに、いちばん安価なものを使っている。

 今朝は、ぼんやりと朝日に照らされた。
 まだまだ眠かったけれど、朝がきたような感じがして、それは引きずり出されるような感覚だった。
 そりゃあ、ずっと眠っていられたら幸せだけれど、その幸せは儚くて、きっとわたしは誰かに会いたくなって、弱虫な自分を否定したくなるから、最後には起きなくちゃいけない。
 だから、何かに引きずり出してもらうことは、大変に有り難いことのような気がした。

 朝スッキリ起きて、毎日を無駄にせず過ごせたら、どれほどいいだろう。どれほど傷つかずにいられるだろう。
 けれどもわたしは真逆の夜の海に暮らしていて、ままならない日々を泳いでいる。
 人は一気に変われない、反対側へはゆけない。
 だからどうか、カーテンを少しだけ
 そういうふうに、ゆるやかに、優しいほうに進んでゆけたらいい。
 たったそれだけのことに、救われていたい。



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松永ねる
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