【掌編】コーヒーを飲める頃に
引越し祝いは傘だった。
初めてのひとり暮らしで、すべてに浮かれていた。「引越し祝いを持っていくよ」という言葉にも、必要以上に浮かれてしまったかもしれない。わざわざ家の住所を聞いて、予定を合わせて、届けてくれるというのだから。
渡された包みは想像よりも小さかったけれど、充分に大きいと思えた。そして「なんだろう」と思えたのは一瞬で、すぐに傘だとわかった。
「傘?」
「そ、折りたたみ。持ってないでしょ?」
「持ってないけど……」
「いま、引越し祝いとしてはどーなの?って思っ