雑な書き方講座:お前たちも1000字でサクッと小説を書け

 いきなりだけど、今までそこそこ頑張ってきたので、Twitterのフォロワーさんとか親しい友人なんかはみんな俺が小説を書いてるのを認知してくれてるわけだけど、大抵の人は「小説書けるなんてすごいですね」と決まりきったことを言う。これを言わないやつはそもそも興味がないか、もしくは小説を書くのなんて実は大した話じゃないと理解している人間。
 そうなのよ。じつは小説書くなんて大したことないわけ。
 いや勿論出来はまた別よ。なんて言えばいいのか、Xゲームとかに出られるほど熟達してなくても、自転車乗るのはみんなできるじゃん。コツさえ掴めばこんなのほんとに朝飯前で、自転車に乗る能力も乗りたい気持ちも行きたい場所だってあるのに、自分には乗れねえって嘆いてる人が多すぎる。コツ掴んだ人間が「小説難しい」って言うのは要は両手離しができねえとか曲乗りするとふらつくから無理とか行きたい場所がわかんなくなったとかそういう「難しい」なんすよ。
 とりあえず、手っ取り早く1000字で小説書く練習しよか。大丈夫、途中まではサドル掴みます。

①書きたい場面を膨らませる
 さっきから散々言ってる「行きたい場所」ってのは、つまり「書きたい場面」ってことです。いきなり何書きたいとか訊かれても、って思うかもしれないけど、書くって言葉を使うから難しく思えるだけで、「誰が何してるところを見たい」「こういう事が起きてるシーンが見たい」で良し。たとえば平○レミがいつもの調子でお料理番組やってて、冷蔵庫開けたら中に腐りかけの小指が一本だけころんと転がってるシーンが見たいとか、それでいいんすよ。みんな自分の見たいもん書いてんだからなんも問題無し。
 で、そういう案が出たら、膨らませていくわけです。さっきの例だったら、その前後の番組の流れはどんなんで、ゲストはどんなのがいて、小指が見つかった時のスタジオの反応はどうか、とか。
 この時気をつけてほしいんですけど、この時点で思い浮かんでないからといって無理やりオチを考えようとしないで下さい。これは絶対約束。なんでかと言うと、オチに気を取られて体力が吸われるから。慣れてないうちにそれやると、どんどん書く気も失せていきます。それなら自分の書きたい山場について色々逞しく想像して、どんどん肉付けしたほうがいい。どうせオチなんて書いてれば変わるし。

②とりあえず手を動かせ
 自分で出した自転車の喩えがめっちゃ気に入ったんでまた引っ張り出しますけど、初めて自転車の乗り方覚える時って、カッコよく乗ろうとするとコケるじゃないですか。時間かかるし、転んだら痛い。だったらとりあえず手と脚動かして、スピードが出たほうが安定するぞってのを理解したほうがいいと思うんです。
 言い換えると、「とにかくまず書け」ってこと。書かないうちは自分にどこまでできるのかもわからないし、気持ちものってこないし。この時点ではどうせ人に見られることもないので、思いついたぶんだけ、思いつくままに書き殴っていきましょう。後からいくらでも直しは利きます。
 気にしなきゃいけない要素は2つだけ。どこから始めるか、どこで終わらせるか。「どこ」ってのは、状況説明であったり、場面であったり、登場人物のアクションであったり。任意のタイミングで始まる/終わる以上、そこでは必ず何らかの動きや現象が起こる必要があるんですね。あんまりうまい喩えじゃないかもしれないけど、動画を見ていて、適当にシークバーのどの地点かをクリック(タップ)した時、ある場面が静止画表示されますよね。そこが話の開始/終了地点だと思ってください。それをどこに設定するか。そんだけ。
 で、そうなると気になってくるのがオチなんだけども。「オチ」っていう言葉の持つイメージのために勘違いされがちなんですが、テーマ性とか伏線とか言葉遊びとか、そういうのを無理して回収しなくていいです。「うまいこと言おうとしなくていいよ」ということ。あれは慣れてきたらやることだし、自然とできるようになります。多分。
 とにかく書いた文章の中で、シーンをどこで切るか考えてください。余裕があったら、歯切れ良く終わるのか、徐々にフェードアウトするのか、とかも意識するといいかも。

③読み直してムズムズするところを探せ
 文章って人それぞれ癖があるし、語彙も個人毎に偏りがあるんで、勢いで書けば書くほどどうしてもそれは露わになってきます。でもいいんです。味になるから。
 ただ最低限直さなきゃいけないのは、話がつらつらと流れていく、その前後の繋がり(因果関係)が狂ってないかと、近い位置に表現の重複が無いか。この2点さえクリアしていればまあ読めます。
 繋がりってのはたとえば、冷蔵庫の中の小指を見つけた平野○ミが悲鳴を上げたせいで少年野球チームの監督の体罰が問題になり解雇されたとか、そんな事ないでしょ。いやそれはそれで面白いけど、話には関係ないじゃないですか。だからこれだけだと狂ってる例。
 でも、平野レ○の悲鳴に驚いた床掃除中のお母さんが野球の練習から帰ってきた息子にぶつかっちゃって、その拍子に体罰の痕跡が見えて、それが問題になって監督が解雇された、だと、一応筋は通る。これは内容が狂ってるけど、前後の繋がりは失われてない例。要するに「自分の書き方のせいで読み手を混乱させるな、内容で混乱させていけ」と。あと別に読み手を混乱させる必要は全くないです。
 まあ、小学校5、6年生になった気分で、自分の書いたものを読み返してみてください。人生の中で、一番しっかり作文の決まりごとを守ってた時期だと思うんで。それでムズムズする箇所があるようならば、容赦なく直しましょう。説明が足りないと思ったら足しましょう。直しが多かったり、読んでて下手だなあと思っても落ち込んではいけない。それを書いたのは過去の貴方であり、今読み返して修正している貴方は「進歩している貴方」です。やるやん。

 はい、以上。多分この3段階をひいこらこなした時点で、1000字くらいはいってるはずです。下手したら2000字とか到達してるかもね。ここまで来たなら、黙ってサドルから手を離しても、一人でスイスイ走れてる状態ですね。すごいじゃん。1000字いってなくても全然いいです。要するに、書きたい場面が過不足なく表現できていれば、長さなんて何の問題にもならないわけ。
 ということで、いかがでしたでしょうか。わかったろ。1000字の小説なら誰でも書けるの。これで君も文字書きだ。好きなものを好きなだけ書いて、インターネットでいっぱい見せびらかしちゃえ。

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