書写山圓教寺奥の院開山堂の力士像
紅葉の見ごろが過ぎようとしている。西国二十七番札所の圓教寺も紅葉の名所である。小学校の林間学校で行ってから、折に触れて訪れているお気に入りの場所である。
版画を始めた頃、圓教寺の写生会がありそれを版画にする授業があった。摩尼殿、常行堂、食堂、大講堂等の複雑な木組みを見てテーマにする意欲が削がれた。どん突きの奥の院の中核である開山堂まで行きつき、ふと見上げると木像と目があった。四隅の軒下で屋根を支えながら睨みを利かせている。一目で傑作であると感じた。後に左甚五郎作の力士像といわれていることを知った。一隅が欠け3体で、1体は重みに耐えかねて逃げ出したとされている。
3体の中の1体が気に入って作品にすることにした。この時、柱の木の質感を版画でどう表現するかに注力した。試行錯誤を繰り返して仕上げた。
一版の白黒版画でどのような可能性、勝負の仕方があるのか考えるきっかけになった。私にとっては記念すべき作品である。