「付け足す」のではなく、「取り除く」ことで成果が出る
例年通りを続けていると、ふとした瞬間に「あれっ、これって何でやっているんだっけ?」と気付くことがあるでしょう。
学校行事で言えば、運動会。
数年前、「例年通り」の運動会プログラムが実施できなくなり、先生間でも意見が分かれたものの、「今年は1日ではなくお弁当なしの半日開催にしましょう」と短縮運動会にしたのです。
思い切った変革にどのような感想が聞かれるのかどきどきものだったのですが、ぼくたちが思っていた以上の高評価。
やはり、現場の「続けていくことこそ正義」精神も、「変えてみることで本質が見えてきた」なんてこともあるのです。
さらに、こんな気づきもありました。
我が校の恒例行事として、保護者と学校がコラボした「お祭り」があったのです。
土曜日に子どもたちがお小遣いを持ち寄り、保護者の方々が準備してくださったお店で買い物をする。
もちろん、その日は授業日設定なので、先生たちもフル出勤。
そんな「例年通り」が見直され、いったん終了したのです。
しかし、数年後。
保護者の方々から、「あのお祭りをもう一度」という声があがり、有志が集まって実行委員会を結成。
主催が実行委員となり学校は場所を提供するという立ち位置に。
もちろん、学校は通常通りの休みのため子どもたちの参加は自由。
そんな取り組みに可能性を見出したのは、各学級で、「クラスで発表をしたい!」とか「クラスで展示をしたい!」というような「学びを発表する場」としての価値でした。
やはり、「絶対参加!」となると苦しい面もあるのですが、「参加してもいいよ!」くらいのハードルだと、モチベーション高く、そして利用価値を明確にして関われるなあというのが「失くしてみて分かった」こと。
このように、成果や価値を求めようとすると、何かと「新しい取り組み」を増やしがち。
しかし、本当に必要なのは「残すべきものを考えてその他を思い切って止めること」なのではないかと思うのです。
そんな内容を書いていきますね。
▼「取り除く」ことで価値が明確になる
突然ですが、「ジャム理論」なんていう話を聞いたことがあるでしょうか。
パンとか紅茶とかに入れる「ジャム」のこと。
ある実験で「お店に並べるジャムの数と売り上げ」について調べると、
「店頭に並んだジャムの数が多いと売り上げが下がる」
なんてことが分かったのです。
ぼくなんかは人込みや商品がごった返したお店が超絶苦手なのですが、やはり「商品数が多いと華やかには見えるのですが選びきれない」ということなのです。
さらに、おもしろい事例として、ソニーのウォークマンがあげられます。
ソニーの創業者の一人である盛田昭夫さんは、エンジニアにウォークマンを開発するよう指示しました。
当時、「頭の中で音楽を鳴らしながら歩き回りたい人なんているはずかない」という反発はあったそうですが、結果的に大ヒットとなり、人々の生活習慣を変えたのですからすごいですよね。
実は、ここにちょっとしたおもしろい話がありまして、エンジニアが試作品を開発したとき、「音楽を再生できる」という機能だけでなく、「録音機能」もついていたのです。
エンジニアとしては、「やってやったぜ!」という感じだったのでしょうが、なんと盛田さんは、「そんな余分な機能は取り外せ!」と命じたとか。
「録音機能がついてもコストはそれほど変わらないというメリット」も説明されたのですが、最終的に再生のみというシンプルな作りで発売されました。
この判断は、先ほどのジャムにも通じるところがあります。
とうのも、多機能というのは一見ありがたく思えるのですが、その機能を使いこなせるかどうかといったら一部の人に限られる場合がある。
ましてや「音楽を聞きながら歩く」という生活が未知であった当時、ウォークマンに二つの機能がついていたら、その使い方にブレが生じる可能性がありますよね。
だからこそ、昨日の幅を狭くしても、「これは音楽を聞く機械だ!」とアピールできた方が、すんなり伝わりやすいのです。
きっと、人間の生活も似たような部分があるでしょう。
様々なものを抱えて中途半端になるよりも、本当に大切なものを取捨選択して残していき、全力投球できるものをしぼったほうが結果的に質が高まるなんてことありますよね。
少し前から、「Noということが大事!」なんて言われるようになりました。
多くを抱えて忙しそうにしている人は、「仕事ができる人」と見られがちですが、もしかすると「手持無沙汰で暇そうにしている人」ほど、自分の能力を上手く生かしているのかもしれません。
▼まとめ
本記事では、「付け足して増やしていくよりも、時に取り除くことも大事だよ!」という内容をまとめました。
人間には「余白が大事」と言われます。
もちろん「忙しい」という状態は、ムダに悩まないなんていうメリットもあるのですが。
大切なのは、自分が目指す方向と目的地でしょうか。
「時間」という貴重な資源を充実できるよう、「思い切ってやめる」という選択肢をもっておきたいところです。
📘引用文献
#欲望の錬金術