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エロパソから始まった僕の青春|オードリーANN東京ドーム感想

 2024年2月18日、オードリーのオールナイトニッポンin東京ドームが行われた。僕は残念ながらチケットが手に入らず、ラインキューブ渋谷でのライブビューイングに参戦した。


 中学生のころ、ラジオっ子だった僕はいつも東京FMの番組を24時まで聞いてから寝ていたのだが、その日はなんだか眠れなくて遅くまでラジオをつけていた。

ニチレイプレンゼンツ
オードリーのオールナイトニッポン

 25時を回り、タイトルコールに続いて有名なあの曲が流れてきて、僕は初めてオールナイトニッポンを聞いてみることにした。とてもワクワクした。

春日さん最近はどこでエロパソ見てるんすか?
そうね〜。最近はもうテレビ局に持ってきて見てるよね。

 あの日のトークをよく覚えている。春日の趣味であるエロパソ(エロビデオをパソコンで見ること)の件だった。
 結婚したばかりの春日は家でエロパソをすることができなくて困っており、テレビ局の楽屋やトイレで見ているという話だった。

 笑いが止まらなかった。若林の止まらないしゃべりと時々挟まれる春日の冷静なコメント。二人の温度感のアンバランスさや、テレビバラエティでの二人とは真逆のキャラ・関係性が衝撃的だった。しかもこんなにもくだらない内容。

 まだ番組の構成も知らないので、何時間やるのか、どんなコーナーがあるのかもわからず聞いていた。初めのトークで40分くらいが経過していたのでもう本編だと思っていたら、まだオープニングトークだった。そのあと2回CMを挟んでもまだトーク。お便りを読む気配もない。
 何時までこのトークが聞けるんだろう、永遠にこの二人のトークを聞いていたい! そう思いながら聞いていた。

 3回目のCMがあけると、静かな音楽が流れ出した。あのコーナーである。

おい!アンガールズ田中!AVを見ているとき自分のチンコで画面が見えなくなること、死んでもやめんじゃねーぞ!

 こんな下ネタも放送していいんだって驚いた。もっととんでもない投稿もあったし覚えているけれど、ここには載せない。

 あっという間の2時間だった。エンディングがひどく寂しかった。そのあともずっと興奮して寝付けなかった。

 こんなに面白いラジオがあるんだ。毎週土曜の夜が楽しみになった。

 暗い部屋でラジオの前にひとり。深夜だから笑いをこらえなればならないけれど、だからこそ笑いが止まらない。
 テスト前の詰め込みの夜も、模試前日の夜も、なぜか目が冴えて眠れない夜も、土曜の夜は楽しい夜になる。

 眠れない夜を眠らない夜に。星野源のこの言葉が本当に好きだ。

 オードリーのオールナイトニッポンは、僕の中学・高校の青春を形作る大切な要素です。


 ドームライブ当日、渋谷の会場には2000人のリトルトゥースが集まっていた。
 スクリーンに東京ドームの映像が映る。5万人のリトルトゥース。僕の出身地・牧之原市の人口は4万5千人だぞ。
 ラジオの前で眠れない夜、眠らない夜を過ごしてきた一人ひとりが、今夜はこんなに集まっている。そのことがとてもうれしかった。

 オープニング映像の時点で泣いてしまった。エロパソから始まった僕の青春がドームまで来た感慨に涙が堪えられなかった。隣のおじさんも泣いていた。

 ライブが始まると、まずはいつも通りのトーク。いつも通りがいいんです。ラジオブースから、ひとりぼっちの夜の部屋からドームへと繋がっているんだ。

 転換時のモノマネ、春日の新車駐車チャレンジ、味玉トッピング権争奪プロレス対決……
 たくさんの人が何日も何日も準備して何回も練習して、全員が体を張って本気で僕たちを笑わせようとしている。そのすさまじい熱量が伝わってきてめちゃめちゃ興奮した。

 星野源と若林のコラボステージでまたしても涙が出てしまった。あの歌詞はずるい。

 そして演奏が終わり、流れ出す静かなるBGM。あのコーナーだ……!!

死んでもやめんじゃねーぞ!

 来たあぁぁぁぁ!! やっぱりやるんだ!!
 深夜のド下ネタコーナー! 番組史上最も長い歴史を持つあのコーナーを、東京ドームで聞ける! あのくだらない、しょーもないコーナーをドームで、みんなで!
 投稿者のラジオネームも聞き馴染みのある人たちで、ラジオネームを読むだけで笑いが起きる。どのネタも大爆笑だった。
 いつものあのラジオを、いつものみんなで聞いてるんだ! その実感が今はっきりと得られ、僕は本当にうれしかった。

 最後の演目は30分に及ぶ漫才。
 絶対に今思いついたであろう若林のえげつない無茶振りと、事前に考えていたのかと疑いたくなる春日の対応力。ネタの流れからの激しい逸脱と、洗練されたズレ漫才という形式への回帰。フィクションとドキュメンタリー、シリアスとジョークが境界線を失って入り混じるオードリーの漫才は、観客全員をその世界に飲み込んでいった。

 3時間半以上のライブはあっという間に終わってしまった。

 とてつもない満足感と余韻に浸りながら会場を出て、友人たちと合流した。実は高校の同級生の女子2人も同じ会場でライブビューイングに参加していたのだ。

 「いや〜よかったねぇほんとに」と感想を語り合いながら渋谷駅へ歩いていく途中、僕はふと気になったことを訊ねてみた。

「死んやめのコーナーって、女の子たちどう思って聞いてるの?」

 僕はこのことが実はけっこう前から気になっていたのだ。

「えー、あのコーナー聞きたくないからいつも飛ばしてるんだよね」

おい!死んでもやめんじゃねーぞ!のコーナー!
ラジコで聞いている女子に飛ばされていること、死んでもやめんじゃねーぞ!


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はねるくじら
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