バラの歴史からみたマリア様がみてる「パラソルをさして」と「バラの病気」
ごきげんよう、はねおかです。
秋バラの季節も終わりましたね。今年は暑さが長引いたので、バラの開花もズレました。
さて、今回は「パラソルをさして」です。
前作「レイニーブルー」で悲劇的な決別をした祐巳と祥子さまがその関係を修復するお話です。
祐巳は聖さまと加東さんのケアで立ち直りましたが、持ち前のプライドの高さが悪い方向に働いてしまった祥子さまは立ち直ることが出来ませんでした。
さて、人が風邪をひくことがあるように、植物というのも病気に罹ります。
バラもまた、病気に罹ります。
バラが罹る有名な病気に「黒点病」があります。
「黒星病」とも呼びますね。
バラの黒星病はDiplocarpon rosaeという菌が引き起こす病気で、土の中にいる菌が、雨が降ってその水が跳ね返り葉に付着することで感染します。
そしてもう一つ、バラが罹りやすい病気があります。
うどんこ病です。
うどんこ病はバラだけでなく農作物にも被害を与える病気で、家庭菜園をしている方なら、キュウリやトマトなどがうどんこ病に罹ったという経験をしたという人もいるでしょう。非常にポピュラーな病気です。
バラのうどんこ病はPodosphaera pannosaという菌が空気感染することで引き起こされます。
バラがうどんこ病に罹ると、葉の光合成が阻害され、バラの生育を妨げます。
ヒトと植物は紀元前からの付き合いがあります。
ヒトが狩猟をやめ、集団生活をし、農耕を始めると、作物の病害に悩まされるようになります。
当時は「植物が病気に罹る」という概念がなく、神が与えた天罰であると考えていたそうです。
当たり前ですが、病気を引き起こすのはキッカケというものが存在していて、それが何なのか?どう対処すればいいのか?という事を考えなければなりません。
19世紀になりますと、植物の病気には微生物が原因であることが次々と発表されます。
1861年には、菌類がアイルランドの大飢饉を引き起こしたジャガイモ疫病の原因だと証明されました。
1878年には、細菌がナシ火傷病の原因だと報告されました。
1935年には、ウイルスが初めて人類の前にその姿を現しました。タバコに感染するウイルスです。
1967年には、植物の形を変える病原細菌ファイトプラズマが初めて発見されました。
1971年には、ウイルスより小さい病原体、ウイロイドが初めて発見されました。
発見の報告が挙がる一方で、対策もまた研究されました。
1851年、フランスのグリソンにより石灰硫黄合剤が製造されたと言われています。これは明治の初期に日本に紹介され、1907年に果樹のカイガラムシ(バラにも付着しますよ!)防除試験が行われました。
また、フランスのボルドー大学教授であるピエール・ミヤルデは1885年に硫酸銅と石灰と水の混合物(ボルドー液)がブドウのべと病に効果があることを偶然発見しました。
こうして、ヒトは植物への病害への理解を深めていき、対策するための化学農薬の歴史が始まります。
ちなみに、よく聞かれるのは「無農薬栽培でバラを育てたいのだけど木酢液って効くの?」というものがあります。
木酢液というのは、ヒトが炭を作る過程で、燃焼した木の煙を冷却することで得られる液体です。
過去、木酢液は農薬として登録されていました。1973年2月28日のことでした。しかし、現在では農薬としては失効しており、1979年2月28日に失効しています。
ですので、木酢液による無農薬栽培というのは、かつて農薬だったが現在は農薬とされていない木酢液を使って栽培している、ということなので「木酢液=自然のもの=健康にいい」なんて単純なものではありません。
木酢液には人体に有害な物質でもあるホルムアルデヒドが含まれています。
さて、化学農薬というのは、使っていい作物、希釈倍率、使っていい上限の量や回数が定められています。
まぁ、鉢植えのバラ1株くらいでしたら、病害虫用に予め希釈されたスプレーボトルの農薬がホームセンターで売っています。
もっといっぱい育てている人は、原液の化学農薬を購入し、自分で希釈して散布する必要があります。
農薬のボトルには、びっしりと「使っていい植物」「希釈倍率」「量や回数」が書かれています。
農薬としての効果が失効している木酢液は「農薬」を名乗れませんので、その効能を宣伝してはいけません。
なので、科学的効能を国が認めた化学農薬よりも、効能を認めてない上に使用制限もない木酢液による無農薬栽培のほうが、ある意味危険なのかも知れません。
ですので、これはあくまで「木酢液(竹酢液)を使って育てた経験があるはねおかの個人的感想」として書いておくと、200倍程度に希釈した木酢液は、うどんこ病にある程度効果がありました。
https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/15191/20160527211030702133/014_2_129_133.pdf
これは植物ではありませんが、ヒトの白癬菌に木酢液を用いた論文です。
一応、殺菌効果がないわけではない、ということが分かります。
うどんこ病を対策するには、まず「葉に付着した菌を水で洗い落とす」という作業をします。
その後、薬剤散布を行います。
さて、このうどんこ病、厄介なのが「新芽に発生した場合」です。
とりわけ現代バラ「モダン・ローズ」はロサ・キネンシスから四季咲き性を引き継いでいるため、ハイブリッド・ティー・ローズ(あるいはフロリバンダ・ローズ)の新芽は赤いのが特徴です。
この新芽はまるでワックスを塗ったようなツルツルな状態です。
新芽がうどんこ病に罹ってしまうと、薬剤散布をしても葉のツルツルがコーティングとなり薬剤を弾いてしまい、薬剤は効果を発揮できません。
ではどうするのかというと、薬剤を葉に付着させる効果を持つ「展着剤」を使います。
展着剤によって、うどんこ病に効果のある薬剤をコーティングされている葉に付着させ、菌を殺菌します。
話をマリみてに戻します。
パラソルをさしてでは、自身のプライドの高さから他人の干渉を拒んだ祥子さま。水野蓉子さまとギンナン王子の計らいで祐巳は祥子さまと対面します。
祥子さまは、自らの悪いコーティングであるプライドを投げ捨てて、祐巳に語りかけました。
さて、このうどんこ病ですが、海外では「太陽光を当てることでうどんこ病の被害を抑制できる」という研究結果があります。
https://apsjournals.apsnet.org/doi/abs/10.1094/PDIS-94-3-0339
蓉子さまは、祥子さまが立ち直るには祐巳しかいないと確信していました。
そして見事、祐巳は祥子さまを立ち直らせることに成功します。
祐巳という光を浴びてー
正しいと思ったのなら、正しい対策をする。
バラも、人間関係も、同じなのかもしれませんね。