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マリみてSS「Carte blanche」

お題:「大きな扉  小さな鍵」より「キーホルダー」(2022/03/23)

―白いカードは自分の心だった。隠して置かなくてはならない。けれど、きっと心のどこかで見つけて欲しい。わかって欲しい。
―そう、願っていた。

新聞部が持ち込んだ第二弾となるバレンタイン企画の話し合いは終わり、各自解散となった。
由乃さんは「スクープ!品行方正な志摩子さんがイベント不参加!?」などと茶化していたが。
お生憎様。私は別に品行方正ではないわよ、と言うと嫌味にでも聞こえそうだが、今日の私はおかしかったかもしれない。
(ただ、乃梨子の隠したカードを探したかっただけで)
この発言自体に嘘はない。ないのだが…
もう少し、言い方というのがあったかもしれない、と志摩子は反省した。
しかし、それ以外の言葉が思い浮かばない。
私の心の本音。
私の心の本心。
去年の今、あの時隠した白いカードは確かに私の心そのものだった。
隠して置かなければいけなくて。
それでいて、誰かに見つけて欲しいと思っていて。
志摩子は思った。
自分の心をさらけ出すのは、とても勇気が要る。
そして、恥ずかしい、と。

「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
校門の前で別れた六人。
偶然なのかは分からないが、それぞれの薔薇の色ごとになっていた。

「それにしても、志摩子さんがわがままを言うなんてね」
隣を歩く乃梨子が、いたずらっぽく私の顔を覗き込んできた。
「…いけないかしら」
妙な気恥ずかしさが残っていた私は顔を背けて言った。
「いいと思うよ」
「えっ?」
思いがけない返事。いつの間にか乃梨子は私の前に立っていて、私達はしばし見つめ合った。
「言ってもいいと思うよ。わがまま」
屈託のない微笑み。
私が欲しかったのは、白いカードじゃなくて、この笑顔なんじゃないか。
「そうね。来年は乃梨子の隠したカードを探してみせるわ」
そう言われると隠しづらいなあ、と頬を掻く乃梨子と隣り合ってまた歩き始める。
大丈夫。
もうもらったから。
あなたの白いカード。

あの時の白いカードは自分の心だった。隠して置かなくてはならない。
けれど、今心にある白いカードは志摩子のものだ。
乃梨子と一緒に、色々なことを書き込んでいこう。
自由に。
そんな、真っ白なカードが。

あとがき
カルトブランシュ。フランス語で「白紙委任状」という意味だそうで。直訳すると「白いカード」です。意訳で「完全な自由」とも。
本編で「乃梨子のカードを探したかった」と、珍しくワガママを言った志摩子さんは衝撃でしたね。
それは、乃梨子と出会ったことによる、いい意味で自由になったんじゃないかと思ったんですよ。
その辺を表現してみました。

カルトブランシュ
分類:フロリバンダローズ
作出:メイランド(仏)

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